国税局に情報公開請求をし、表題の判決書を入手してみました。
事案の概要
税務署長が、本件各年分の所得税等について、原告は、■に所在し、原告がその資本金の全額を拠出している本件財団を通じて、■に所在する法人である本件外国法人の発行済株式の全部を間接保有しており、本件外国法人は租税特別措置法(平成29年法律第4号による改正前のもの。)40条の4第1項の「特定外国子会社等」に該当するなどとして本件各年分の所得税等に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、原告が、本件財団には保有の対象となるべき「株式等」(株式又は出資をいう。)は存在しないから、原告がその全部を保有することはあり得ず、そのため本件外国法人の発行済株式の全部を間接保有していることもなく、本件外国法人は原告に係る「外国関係会社」(同条2項1号)に該当しないから、同条1項は適用されない旨主張して、本件各更正処分のうち申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案。
基本情報
・税目:所得税
・処分行政庁:新見税務署長
・課税年度:平成29~30年分
・提訴裁判所:東京地方裁判所
・提訴年月日:令和6年4月22日
・判決日:令和7年9月12日
・結果:棄却
争点
・原告が本件財団の発行済株式等の全部を有しているか否か
判決書PDFデータ
控訴審の判決書は裁判所のウェブサイトに掲載されています。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-96019.pdf
判決書テキスト
※以下は生成AIでテキスト化したものです。
主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 新見税務署長が■付けで原告に対してした平成29年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の更正処分(以下「平成29年更正処分」という。)のうち、総所得金額■円及び納付すべき税額■円をそれぞれ超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分(以下「平成29年賦課決定処分」という。)をいずれも取り消す。
2 新見税務署長が■付けで原告に対してした平成30年分の所得税等の更正処分(ただし、■付け裁決(以下「本件裁決」という。)によって一部取り消された後のもの。以下「平成30年更正処分」といいい、平成29年更正処分と併せて「本件各更正処分」という。)のうち、総所得金額■円及び納付すべき税額■円をそれぞれ超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、本件裁決によって一部取り消された後のもの。以下「平成30年賦課決定処分」といい、平成29年賦課決定処分と併せて「本件各賦課決定処分」という。)をいずれも取り消す。また、本件各更正処分と本件各賦課決定処分を併せて以下「本件各処分」という。)をいずれも取り消す。
第2 事案の概要等
1 事案の概要
本件は、新見税務署長が、原告の平成29年分及び平成30年分(以下「本件各年分」という。)の所得税等について、原告は、■(以下「■」という。)に所在し、原告がその資本金の全額を拠出している■(以下「本件財団」という。)を通じて、■(以下「■」という。)に所在する法人である■(以下「本件外国法人」という。)の発行済株式の全部を間接保有しており、本件外国法人は租税特別措置法(平成29年法律第4号による改正前のもの。以下「措置法」という。)40条の4第1項の「特定外国子会社等」に該当するなどとして本件各年分の所得税等に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、原告が、本件財団には保有の対象となるべき「株式等」(株式又は出資をいう。以下同じ。)は存在しないから、原告がその全部を保有することはあり得ず、そのため本件外国法人の発行済株式の全部を間接保有していることもなく、本件外国法人は原告に係る「外国関係会社」(同条2項1号)に該当しないから、同条1項は適用されない旨主張して、本件各更正処分のうち申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。
2 主な関係法令の定め
主な関係法令の定めは、別紙1のとおりである(なお、別紙において定義した略語については、以下においても用いることとする。また、措置法40条の4等に規定する特定外国子会社等に係る所得の課税の特例を以下「外国子会社合算税制」ということがある。)。
3 前提事実
次の事実は、当事者間に争いのない事実又は裁判所に顕著な事実のほか、掲記の証拠(以下、特記しない限り、枝番号のある書証は枝番号を全て含む。)又は弁論の全趣旨によって認めることができる事実である。
(1) 原告
原告は、本件各年分において日本国内に住所を有する「居住者」(所得税法2条1項3号)である。
(2) 本件財団等
ア 本件財団は、2005年(平成17年)5月19日、■の■(人及び会社に関する法律。以下、同法(2008年改正後のもの)を「■」といい、本件財団設立時の同法(2008年改正前のもの)を指すときは、「旧■」という。)に基づき設立された、法人格を有する財団である。
原告は、■(以下「■社」という。)に対し、2005年(平成17年)4月25日付けの個人財団申請書(乙A5。以下「本件個人財団申請書」という。)により、■社を信託設立者として本件財団を設立するよう指示し、本件財団は、当該指示によって設立された。
また、本件財団の定款(乙A4、10の1。以下「本件財団定款」という。)によれば、本件財団の「Stiftungskapital」は3万スイスフランである。
原告は、本件財団の設立に当たり、3万スイスフランを払い込んだ。(ただし、「Stiftungskapital」が財団の資本金に当たるものか否か、また、上記払込みにつき、本件財団に対する対価性のない寄附又は寄贈であるのか、「資本金」を出資(拠出)したものであるのかについては、当事者間に争いがある。)
本件財団の主たる事務所は、設立以降、■の■にある。(乙A3〜5、弁論の全趣旨)
イ 本件外国法人は、2005年(平成17年)5月10日、■の■(■会社法。以下「■会社法」という。)に基づき設立された法人である。
本件外国法人の主たる事務所は、■の■にある。(乙A6、弁論の全趣旨)
ウ 本件財団は、本件外国法人の発行済株式等(発行済株式又は出資(その有する自己の株式等を除く。)をいう。以下同じ。)の全部を有している(本件財団の本件外国法人に係る持株割合は100分の100である。)。
エ ■会社法187条1項は、同法に基づいて設立された又は継続する会社又はその社員又は株主に対して、事業認可料金、所得税、法人税、キャピタルゲイン税、その他会社に又は会社から生じる、又は会社又は株主が当事者となる取引による収入又は配当に対して課される税金が課されることはない旨規定している。(乙C1)
(3) 本件訴えの提起に至る経緯等
ア 原告は、本件各年分の所得税等について、別紙2の各表の「確定申告」欄のとおり確定申告書に記載し、いずれも法定申告期限までに申告した。
イ 新見税務署長は、広島国税局の調査担当者(以下「本件調査担当職員」という。)による税務調査の結果に基づいて、原告に対し、■付けで、別紙2の各表の「更正処分等」欄のとおり本件各処分をした。(甲A1、2)
ウ 原告は、■、国税不服審判所長に対し、本件各処分につき審査請求をした。これに対し、国税不服審判所長は、■付けで、別紙2のとおり、平成30年分の所得税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分の一部をそれぞれ取り消し(これによる取消後の処分が平成30年更正処分及び平成30年賦課決定処分である。)、その他の審査請求を棄却する旨の本件裁決をした。(甲A3)
エ 原告は、令和6年4月23日、本件訴えを提起した。
(4) 本件各処分の根拠及び適法性に係る被告の主張
本件各処分の根拠及び適法性に係る被告の主張は、別紙3「本件各処分の根拠及び適法性(被告の主張)」のとおりである。
4 争点
本件における争点は、原告が本件財団の発行済株式等の全部を有しているか否かである。
なお、前提事実(2)ウのとおり、本件財団が本件外国法人の発行済株式等の全部を有していること(本件財団の本件外国法人に係る持株割合が100分の100であること)は争いがない。また、仮に、原告が本件財団の発行済株式等の全部を有しており、本件各年分につき措置法40条の4第1項の規定が適用される場合に、原告が納付すべき所得税等及び過少申告加算税の額が別紙3記載のとおりとなることについても争いがない。
5 争点に関する当事者の主張
(被告の主張)
(1) 判断枠組み等
ア 措置法40条の4は、内国における税負担の公平を図るため、軽課税国にペーパーカンパニー等を設立して、その事業を実質的に支配するなど、いわゆるタックスヘイブンを利用した租税回避に対する規制として導入されたものである。そして、同条1項は、外国関係会社に対する支配関係を判定するための要件について、発行済株式等を基準とすべきことを定めている。
上記のような同条の立法趣旨から考えると、その支配関係の有無は、形式上、名目上のものではなく、子会社の収益や資産を実質的に支配し得る地位の有無という観点から判定されなければならない。加えて、同条が発行済株式に限らず、出資金額も判定の基準に加えていることに鑑みると、「発行済株式等」とは、外国関係会社を支配し得る単位化された物的持分としての法的地位を指すものと解すべきである。こうした法的地位を取得しているかどうかは、外国関係会社の設立準拠法のほか、定款や会社規則等の具体的事情を個別的に考慮して判定すべきである。
そして、措置法施行令25条の21第5項1号が規定する間接保有の場合の発行済株式等についても、措置法40条の4第1項1号の発行済株式等と同義であるものとして、外国関係会社を支配し得る単位化された物的持分としての法的地位を指すものと解するのが相当である。
イ 次に、持分とは、一般に、社員が社員たる資格において会社に対して有する法律上の地位(いわゆる社員権)を意味するものであり(最高裁昭和42年(オ)第1466号同45年7月15日大法廷判決・民集24巻7号804頁。以下「最高裁昭和45年判決」という。)、措置法40条の4第1項及び措置法施行令25条の21第5項の「発行済株式等」が意味する外国関係会社を支配し得る単位化された物的持分としての法的地位とは、具体的には、外国関係会社に対して資金を拠出したことによって得られた、自益権及び共益権と同視できる権利ないし地位をいうものと解すべきである。
(2) 本件について
ア 資本金の拠出
原告は、本件個人財団申請書(乙A5)に基づき本件財団を設立するよう指示し、財団設立後、名目資本3万スイスフランを本件財団宛てに送金することを約したものであるところ、本件財団の設立証書(乙A10の1、A11。以下「本件設立証書」という。)によれば、■社は、本件財団に対し、「Kapital」(資本金)として3万スイスフランを払い込んだと認められること、■の司法省商業登記所が作成した2020年(令和2年)12月10日付けの公的証明書(乙A3、10の1。以下「本件公的証明書」という。)には、財団資本金として3万スイスフランと登録されていること、本件財団定款(乙A4)においても、本件財団の資本金が3万スイスフランである旨記載されていることからすれば、原告は、本件財団の設立者として、■社を通じて、本件財団に資本金として3万スイスフラン全額を拠出したものと認められる。
イ 原告が自益権と同視できる権利ないし地位を有していること
原告が■社に対して制定を指示した本件財団定款及び本件財団の規則(乙A10の1、A13。以下「本件財団規則」という。)によれば、本件財団に対し3万スイスフランを拠出した原告のみが、その生存中、本件財団の収益を有する権限を有したものと認められる。
したがって、原告は、本件財団に対し、自益権と同視できる権利ないし地位を有しているということができる。
ウ 原告が共益権と同視できる権利ないし地位を有していること
本件個人財団申請書、本件財団定款及び本件財団の付属定款(乙A10の1、A12。以下「本件財団付属定款」という。)によれば、原告は、自らが承認した草案に基づき定款等を制定すること等を■社に指示するとともに、本件財団の資産管理を行う特別組織の唯一の構成員とされ、当該特別組織は本件財団の資産の管理について単独で責任を負い、制約を受けることなく自らの義務に従う裁量で行動するなどとされている。
したがって、原告は、本件財団に対して3万スイスフランを送金したことにより、本件財団の運営に関与する権利を有していたものと認められ、本件財団に対し、共益権と同視できる権利ないし地位を有しているということができる。
エ 小括
したがって、原告は、本件財団に対し、自益権及び共益権と同視できる権利ないし地位を有しており、その物的持分は、本件財団の発行済株式等の全部であると認められる。
(原告の主張)
(1) 「株式等」が存在すると認められるための要件
原告が本件財団の発行済株式等の全部を保有するといえるためには、本件財団が株式等を発行するものであり本件財団に保有の対象となるべき発行済株式又は出資が存在すると認められる必要がある。
この点、租税法上定義されていない「株式等」(株式又は出資)の意義については、会社法等の用語の意味を参照すべきであり、これは、法人に対する出資の対価として付与された法人の社員としての地位であり、かかる地位に基づいて出資の価額に応じて法人から経済的利益を受ける権利であって、会社を支配し得る単位化された持分としての法的地位、すなわち社員権(自益権及び共益権)に相当する権利ないし地位を意味するものと解される。より具体的には、法人に出資する者がその対価として株式等を付与されて法人の構成員となり、出資者たる法人の構成員としての地位(物権や債権と区別されるところの社員権)に基づいて自益権(法人に対して剰余金配当や残余財産分配など出資に応じた直接の経済的利益を請求する権利であり、単に債権者としての地位に基づいて債権に応じた内容の給付を請求する権利とは区別される。)及び共益権(自益権の保障のために法人の経営に参加する権利)を有することを意味するものと解される。
そして、租税法については、法的安定性の観点から厳格な文理解釈が要求されることからすれば、かかる株式等の意義は外国法に基づいて設立された法人にも同様に妥当し、実質的な観点からみだりに拡張解釈することは許されないというべきである。
そうすると、ある外国法人に株式等が存在するというためには、法人に対する出資の対価として法人から付与される社員権、すなわち、出資に応じた経済的利益を受ける権利及び経営に参加する権利が存在する必要があると解される。かかる出資者によって保有される社員権が「株式等」に相当し、出資の対価として社員権が付与されることが株式等の「発行」に相当するものである。
(2) 本件財団について
ア ■において、株式会社では、出資者たる株主は保有する株式に応じて、株主総会における議決権や利益配当・残余財産分配といった財産的利益を法人から直接受ける権利を有する。これに対し、財団では、出資者で構成される、自らの経済的利益のために財団の経営に関与するような機関は存在せず、財団の設立者は、設立のための財産を拠出(寄贈)することが定められているものの、それによって社員権、すなわち、出資に応じた利益配当・残余財産分配請求権といった経済的利益を有することや経営に参加する権利を有することが定められているものでもない。
イ 本件財団は、経済的に困窮する者の養育・教育等の支援を目的としており、受益者が何らかの経済的利益を受けるものではない。実際、本件財団の設立以降、当該目的にのみ財産の給付がされており、将来においても、原告は、本件財団から一切の経済的利益を受けることができない旨が財団評議会による追加条件として定められている。
また、本件財団における「特別組織」は、単に財産の管理をするものであって経営に参加するものではないから、その権利内容は、自らの経済的利益のために法人の経営に関与する権利である共益権とは明らかに性質が異なる。
ウ また、原告が行った、本件財団に対する3万スイスフランの払込みは、対価性のない寄附又は寄贈であり、その出資(払込み)の対価として自益権及び共益権に相当する権利ないし地位が付与されるものではない。本件財団の「受益者」や「特別組織の構成員」としての原告の地位は、飽くまでも定款等によって出資とは関係なく定められるものであり、その権利内容は何ら出資に応じたものではなく、出資との対価関係を欠くのであるから、出資によって法人から付与される社員権とは本質的に異なるものである。
しかも、自益権及び共益権は密接不可分のものとして一つの地位に包含されるものであること(最高裁昭和45年判決)からすれば、「受益者」や「特別組織の構成員」といった、複数の異なる地位に基づく権利がたまたま同一の者によって保有されているとしても、これによって各権利が自益権や共益権に転化するというものではない。
それにもかかわらず、これらの権利を自益権や共益権と同視することによって、本件財団に株式等が存在すると認めるというのは、著しい拡張解釈であって、到底許されるものではない。
エ したがって、本件財団は前記(1)の要件を満たすものではなく、本件財団に株式等が存在するとは認められない。
(3) 被告の主張について
ア 株式等の保有は、飽くまでも形式的な資本関係に基づいて判定されるものであり、実質的な観点から判定されるものではない。このため、平成29年度の税制改正(以下「平成29年度税制改正」という。)によって、発行済株式等の保有がなくても会社を実質的に支配する地位を有する者(「実質支配関係」がある場合)にまで外国子会社合算税制の適用対象が拡張されたものである。
したがって、実質的な観点からみて原告の本件財団に対する地位があるとしても、これをもって原告が本件財団の発行済株式等を保有しているということはできない。
イ ドイツ語の「Kapital」は財産の集合を意味し、直訳すると「資本」ではあるものの、出資者が持分を有する会社財産に相当する概念を含有するものではない。すなわち、■の財団は最低3万スイスフランで設立されるが、出資者の有する持分のような概念はなく、財団の財産(Kapital)は出資者から切り離され、財産の維持が求められることはなく、財団の目的のために使用される(甲C2)。したがって、「Kapital」に「資本金」の訳語を用いるのはミスリーディングである。
(4) 結論
以上のとおり、本件財団に株式等は存在しないのであるから、原告がその発行済株式等の全部を保有することはあり得ない。
第3 当裁判所の判断
1 「株式又は出資」(株式等)の意義について
(1) 措置法40条の4は、居住者及び内国法人等により、その発行済株式の総数又は出資の総額の50パーセント超を直接及び間接に保有されている外国法人(外国関係会社)で、その所得に対して課される税の負担が我が国と比べて著しく低いものとして政令(措置法施行規則)で定めるもの(特定外国子会社等)の所得のうち、その特定外国子会社等の10パーセント以上の株式又は出資を直接及び間接に保有する居住者の当該保有する持分に対応する部分の金額(課税対象金額)を、その居住者の雑所得に係る総収入金額とみなして課税するという規定である。
これは、居住者等が、法人の所得等に対する租税の負担がないか又は極端に低い国又は地域に法人を設立して経済活動を行い、当該法人に所得を留保することによって、我が国における租税の負担を回避しようとする事例が生ずるようになったことから、課税要件を明確化して課税執行における安定性を確保しつつ、このような事例に対処して税負担の実質的な公平を図ることを目的として規定されたものである。そして、同条が、居住者等が軽課税国に所在する外国法人に対する資本関係を通じた経済実質的な支配力を利用して租税負担を不当に軽減することへの対処を目的としていることを受け、外国法人の発行済株式等のうちに占める居住者等が直接及び間接保有する株式又は出資(株式等)の割合が過半であることを上記の資本関係を通じた経済実質的な支配力を判定するための基準としており、間接保有の場合においては、当該外国法人の株主である他の外国法人(本件各処分においては、本件財団がこれに当たるとされている。)に係る個人の有する株式等の数又は金額についてもその具体的基準の一つとなっている(措置法施行令25条の21第5項)。
(2) 上記のような趣旨、目的からすれば、その支配力の有無は、形式上、名目上のものではなく、外国法人の収益や資産を実質的に支配し得る地位の有無という観点から判定されなければならない。また、措置法40条の4の規定は、外国法人の「株式又は出資」を判定基準の一つとするものであるところ、諸外国の法制度が我が国の法制度と異なり得るものであることは明らかであるから、その判定基準を構成する「株式等」(株式又は出資)について、我が国における「株式」又は「出資」と完全に同じものを指すと解することはできず、外国法人を支配し得る単位化された物的持分としての法的地位を指すものと解するのが相当であって、居住者等がこのような法的地位を取得しているか否かについては、当該外国法人の設立準拠法だけでなく、当該外国法人の定款や会社規則等の具体的事情を総合的に考慮して判定すべきである。
そして、一般に、持分とは、社員たる資格において法人に対して有する法律上の地位(いわゆる社員権)を意味するから(最高裁昭和45年判決)、外国法人を支配し得る単位化された物的持分としての法的地位は、当該外国法人に対して資金を拠出したことによって得られた、自益権及び共益権又はこれらと同視できる権利ないし地位をいうものと解すべきである。
(3) 以上を踏まえ、原告が、本件財団に資金を拠出したことによって、本件財団の自益権及び共益権又はこれらと同視できる権利ないし地位を全部保有しているか否か(本件財団の発行済株式等の全部を有しているか否か)について、以下、検討する。
2 認定事実
争いがない事実及び前提事実に加え、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1) 旧■及び■の本件財団に係る規定
ア 旧■の規定(乙C2)
(ア) 552条は、財団が自然人や法人等により設立されるためには、資産が特定の目的のために寄附されなければならないことなどを規定している。
(イ) 555条は、財団の設立は、設立者の署名が証明された証書の形式等により成立することや、設立証書や定款には、財団の名称や目的等に関する規定を定めなければならないことを規定している。
(ウ) 558条は、財団が成立した場合は、設立者又は第三者が、設立証書に記載された資産を財団に譲渡しなければならないことなどを規定している。
イ ■の規定(乙C3)
(ア) 552条1項は、財団とは、設立者の一方的な意思表示により団体人格(法人)として設立される、法的及び経済的に独立した目的財産であること、設立者は、特定の指定された財団の財産を寄贈し、直接的に外部を対象とする特定の指定された財団の目的及び受益者を決定することなどを規定している。
(イ) 552条3項は、財団の参加者とされるのは、設立者、受益権者、相続権者、裁量受益者、最終受益者、監督機関(同条11項)、財団評議会(Stiftungsrat。同条24項。同項で、財団の事業を管理し、これを代表し、財団の目的を果たす責任を担うなどとされている。)、法定監査人(同条27項)及びその他の機関(同条28項)並びにこれらの機関の構成員である旨規定している。
(ウ) 552条4項は、設立者とすることができるのは、1名又は複数名の自然人又は法人であること、財団が間接代理人によって設立された場合には、本人(権限付与者)が設立者とみなされることなどを規定している。
(エ) 552条5項は、受益者とみなされるのは、財団の権利状態が存在する期間における任意の時点で、有償若しくは無償で実在し、無条件、特定の条件若しくは義務の下にあり、有期若しくは無期、制限付き若しくは無制限で、取消可能若しくは取消不可能である、又はその終了時に財団(受益者)からの経済的利益の享受が得られる若しくは得られ得る自然人又は法人であり、その趣旨における受益者は受益権者等をいう旨規定している。
(オ) 552条6項は、受益権者とは、財団定款、財団定款附則又は規則に基づいて、財団の財産又は財団収益から決定される又は決定可能な利益に応じた金額に対する法的請求権を有する者をいうことなどを規定している。
(カ) 552条13項は、財団の最低資本金(Mindestkapital)の金額は3万フラン(判決注:スイスフラン)とすることなどを規定している。
(2) 本件個人財団申請書の記載等(前提事実(2)ア、乙A5、10の1、弁論の全趣旨)
ア 原告は、■社に対し、本件個人財団申請書により、■社を信託設立者として本件財団を設立するよう指示した。
イ 本件個人財団申請書には、原告が本件財団の設立に当たって■社に対して指示した、以下の事項等が記載されていた。
(ア) 子会社を取得すること。また、本件個人財団申請書での財団の資産(assets)に対する言及は、全て子会社の資産を含むものとする。
(イ) 原告が署名し承認した草案に基づき、定款、規則及び付属定款を制定すること。
(ウ) 原告を財団の資産管理を行う特別組織に指名すること(原告は、特別組織が存続し続ける限りにおいて、特別組織が財団の資産管理にのみ責任を負うことを了承する。)。
(エ) 財団は、■銀行に対して、依頼に応じて年間総額10万スイスフランまでを、規則記載のとおりに資格を有する受益者に支払う権限を付与すること。
(オ) 財団の理事会(the board of foundation。判決注:財団評議会を指すものと認められる。以下同じ。)は、その義務の履行において、原告による指導を受けるものとすること。
(カ) 原告は、原告又は受益者の本拠地若しくは居住地の司法管轄区域、あるいはその他の司法管轄区域に本件財団及び子会社を設立したことにより生じた税務上又は司法上の結果について、■社がいかなる責任も負わないことを了承する。
ウ また、本件個人財団申請書には、原告は、本件財団が設立された後に名目資本(nominal capital)3万スイスフランを本件財団宛てに送金することを約する旨が記載されている。
(3) 本件設立証書の記載等(乙A10の1、A11)
ア 本件設立証書は、本件財団の設立を宣言した書類である。本件設立証書は、2005年(平成17年)5月19日付けで■社が作成したものであり、本件財団の設立者として■社の署名がある。
イ 本件設立証書には、設立者が本件財団に対し、3万スイスフランの資本金(Kapital)を払い込んだ旨の記載がある。
(4) 本件財団定款の記載等(乙A4、10の1、A11)
ア 本件財団定款は、本件財団の定款であり、本件設立証書に不可分の構成要素として添付されている。本件財団定款は、2005年(平成17年)5月19日付けで■社が作成したものである。
イ 本件財団定款には、以下の内容等が記載されている。
(ア) 2条(資産(Vermögen)) 本件財団の資本金(Stiftungskapital)は3万スイスフランである。設立者(判決注:■社)及び(又は)第三者は、いつでも本件財団に更なる資産を寄附することができる。本件財団の資産は、資産管理の目的で、また受益者のために、その受益の範囲内で担保に供したり売却したりすることが認められる。
(イ) 3条(目的) 本件財団の目的は、本件財団の資産の管理、養育費等を必要とするものに対する寄附又は他の経済的利益の供与を行うための、資産及び(又は)その収益の使用である。
(ウ) 4条(当財団の組織) 本件財団の組織は、本条2項の条件に従い、財団評議会(Stiftungsrat)及び代表者とする。設立者は、財団の資産を管理するための特別組織等を設けることができる。
(エ) 5条(財団評議会) 財団評議会は、法律、定款、場合に応じて策定される附則、交付された規則の枠組みにおいて、定款又は附則により特定の任務が他の組織に委ねられていない限りにおいて、本件財団の目的を達成するため、本件財団の管理運営を行う。財団評議会は、1名以上の構成員で構成され、構成員は、本件財団設立の際に設立者が指名するものとする。
財団評議会構成員の任期は無制限であるが、財団評議会の他の構成員の過半数をもって解任することができる。
財団評議会は、外部に対し、法的拘束力をもって本件財団を代表する。
(オ) 7条(その他の組織) 場合に応じて設置されるその他の組織の任務、責任、能力及び機能並びに職員の配置方法は、定款に記載がない限り、設置時に設立者によって決定される。
(カ) 8条(附則/規則) 附則は、本定款の組織に関する規定を補完する役割を果たすものである。規則は、受益者集団並びに受益の範囲及び種類を定め、又は定款及び附則の枠組みにおいて財団の管理に必要な規則を含むものである。特に受益だけでなく本件財団のその他の管理事項を管理する最初の規則は、設立者によって発行される。
(キ) 9条(財団の資産の管理) 本件財団の資産に関して設立者が独自に設けた組織が存在する場合、本件財団の資産の管理については、この組織が単独で責任を負う。かかる特別組織が存在しない場合は、財団評議会が本件財団の資産の管理について権限を有する。本件財団の資産の管理及び投資に関して、その権限を有する特別組織又は財団評議会は、他の法令の規定を明示的に除外して、制約を受けることなく、自らの義務に従う裁量で行動するものとする。
(ク) 12条(会計年度) 財団の会計年度は12月31日に終了する。
(ケ) 14条(定款改正及び解散) 財団評議会は、本件財団定款を改正する権限及び財団を解散する権限を有する。解散の場合、財団評議会は、定款、附則及び規則の枠組みにおいて、本件財団の資産の使用について決定を下す。
(5) 本件財団付属定款の記載等(乙A10の1、A12)
ア 本件財団付属定款は、本件財団の付属定款であり、2005年(平成17年)5月19日付けで■社が作成したものである。
イ 本件財団付属定款には、以下の内容等が記載されている。
(ア) 前文 創立者(判決注:■社)は、本件財団定款の4条2項及び7条に基づき、以下の付属定款を定める。
(イ) 1条 本件財団定款の9条の枠内の財団資産の管理について、ここに特別組織を設立する。
(ウ) 2条 1条の特別組織は、1名の構成員、すなわち、原告から成る。
(エ) 4条 財団の理事会(財団評議会)は、特別組織の指示に従い、財団の口座管理に必要な権限を委譲するものとする。
(6) 本件財団規則の記載等(乙A10の1、A13)
ア 本件財団規則は、本件財団の規則であり、本件財団定款に基づき、2005年(平成17年)5月19日付けで■社が作成したものである。
イ 本件財団規則には、以下の内容等が記載されている。
(ア) 「A. 当初受益権」 1条 原告(以下、本件財団規則において「第一受益者」ともいう。)は、同人の生涯にわたり、他のいかなる受益者をも排除し、本件財団の資産及びその収入を享受する権利を単独で有するものとする。
2条 財団の理事会が第一受益者の死亡に関する信頼できる情報を得た瞬間直ちに、本件財団のその時点において残存する資産及び収入から得られる利益の享受に関して、B(後続受益権)の規定が適用される。
(イ) 「B. 後続受益権」 3条 第一に、その時点で残存する本件財団の資産及び収入から得られる利益の享受権は、第一受益者の友人(判決注:詳細はマスキングされており不明である。)に与えられる。
5条 後続受益者の期待を考慮することなく、いかなる時点においても、権利を有する受益者に対して総受益権の分配を行うことができる。
(ウ) 「C. 一般条件」 7条 受益者が、いかなる理由であれ(例 法的無能、意思疎通不能)、生活費、医療費等のために本件財団からの財政手続を得る必要があるにもかかわらず、本人が直接財団の理事会からの利益を請求できる状態にないとの信頼できる得た場合、財団の理事会は現在の状況下において適切かつ可能な限りにおいて、受益者が受益者の取り分を受領できるように取り計らう。
10条 第一受益者の生存中に、本件財団定款5条4項の規定に従い財団の理事会の構成員を排除するには、第一受益者の同意があった場合にのみに許可される。
(エ) 「D. 規則の修正/廃止」 11条 財団の理事会は、第一受益者の承認があった場合、いかなる時点においても本件財団規則を修正し、あるいは全規則を廃止し、新規則を作成することができる。第一受益者の死亡後、財団の理事会は規則を修正する権利を有するが、財団の理事会がその裁量において受益者が最も有利な形で持分を受領できるようにするために不可欠であるとみなす場合に限られる。
(7) 本件公的証明書の記載等(乙A3、10の1)
ア 本件公的証明書は、2020年(令和2年)12月10日付けで■の司法省商業登記所が作成したものであり、同所に提出された本件財団の設立に関する届出書の内容について記載された文書である。
イ 本件公的証明書には、以下の内容等が記載されている。
(ア) 設立日は2005年(平成17年)5月19日である。
(イ) 財団資本金(Stiftungskapital)は、3万スイスフランである。
(ウ) 本件財団の目的は、本件財団の資産の管理、養育費等を必要とする者への寄附又は他の経済的利益の供与を行うための資産及び(又は)収益の使用などである。
3 本件について
(1) 本件財団の設立及び原告による資本金の拠出(出資)
ア 原告は、■社に対し、本件個人財団申請書により、■社を信託設立者として本件財団を設立するよう指示し、その指示により本件財団が設立されたものであり(前提事実(2)ア、認定事実(2)ア)、本件財団の設立は、原告の意思に基づくものである。そして、原告は、■社に対して本件財団の設立を指示するに当たり、原告が署名・承認した草案に基づく定款、規則及び付属定款の制定を指示するとともに(前提事実(2)ア、認定事実(2)ア、イ(イ))、本件財団設立後に名目資本3万スイスフランを本件財団宛てに送金することを約し(認定事実(2)ウ)、本件財団定款、本件財団付属定款及び本件財団規則の草案を承認したほか(弁論の全趣旨)、本件財団の資本金(Stiftungskapital)と同額である3万スイスフランを実際に払い込んだ(前提事実(2)ア、認定事実(2)イ(ア)、(7)イ(イ))。
本件設立証書においては、■社が本件財団の「設立者」とされ、本件財団に対して3万スイスフランの資本金を払い込んだとされているが(認定事実(3)イ)、以上のような事実経過に照らすと、■社は、本件財団の信託設立者にすぎず(前提事実(2)ア、認定事実(2)ア参照)、本件財団の実質的な設立者は原告であって、原告が、本件財団の実質的な設立者として、その資本金の全額である3万スイスフランを単独で拠出したものと認められる。
イ なお、原告は、ドイツ語の「Kapital」は財産の集合を意味し、直訳すると「資本」ではあるものの、出資者が持分を有する会社財産に相当する概念を含有するものではない、■の財団は最低3万スイスフランで設立されるが、出資者の有する持分のような概念はなく、財団の財産(Kapital)は出資者から切り離され、財産の維持が求められることはなく、財団の目的のために使用されるとして、財団の財産(Kapital)に「資本金」の訳語を用いるのはミスリーディングであるなどと主張する。
しかしながら、■において、財団の設立には資産が寄附又は寄贈される必要があること(旧■552条、■552条1項)、現在、財団の「Kapital」の下限(Mindestkapital)が法定されていること(■552条13項)、本件財団の「Stiftungskapital」はその定款(本件財団定款)に記載されていること(認定事実(4)イ(ア))、「Stiftungskapital」は■の司法省商業登記所が作成する公的証明書の記載事項であること(認定事実(7)イ(イ))などからすると、「Stiftungskapital」は、財団資本金を指すものと認められるのであり、原告が上記のとおり指摘する事情は、かかる認定を左右するものではない。
(2) 自益権と同視できる権利ないし地位の有無について
ア ■において、財団における「受益者」とは、財団の参加者の一人であり、財団から経済的利益を享受できる又は享受し得る者であるところ(認定事実(1)イ(イ)、(エ)、(オ))、原告が承認した草案に基づいて制定された本件財団定款では、本件財団の資産は、受益者のために、その受益の範囲内で担保に供したり売却したりすることができるとされ(認定事実(4)イ(ア))、同様に、原告が承認した草案に基づいて制定された本件財団規則では、原告が、本件財団の「第一受益者」として、その生涯にわたり、他のいかなる受益者をも排除し、本件財団の資産及び収入を享受する権利を単独で有するものとされているのみならず、本件財団規則を修正等するには、第一受益者である原告の承認が必要であるとされている(認定事実(6)イ(ア)、(エ))。
イ このように、原告は、その生存中、本件財団の「第一受益者」として、本件財団の資産及びその収入を享受する権利を独占的に有しており、しかも、原告のこの地位は、本件財団の実質的な設立者として、その設立を指示し、資本金の全額を拠出した原告が承認した草案に基づいて制定された本件財団定款及び本件財団規則によって得られたものである。
ウ したがって、原告は、本件財団の資本金の全額を拠出するなどして本件財団を実質的に設立したことにより、本件財団の自益権と同視できる権利ないし地位を全部保有していたものと認められる。
(3) 共益権と同視できる権利ないし地位の有無について
ア 原告は、■社に対して本件財団の設立を指示するに当たり、本件財団の資産管理を行う特別組織に原告を指名するよう■社に対して指示し、また、特別組織が存続し続ける限りにおいて、特別組織として、財団の資産管理にのみ責任を負うことを了承した(認定事実(2)イ(ウ))。この特別組織は、本件財団の資産管理について単独で責任を負い、制約を受けることなく自らの裁量で行動するものであり(認定事実(4)イ(キ))、その構成員は原告のみとされ(認定事実(5)イ(ウ))、本件財団の管理運営を行う財団評議会は、特別組織である原告の指示に従い、本件財団の口座管理に必要な権限を特別組織に委譲するものとされた(認定事実(4)イ(エ)、(キ)、(5)イ(エ))。
イ また、本件財団の財団評議会は、本件財団の目的を達成するため、本件財団の管理運営を行い、外部に対し、法的拘束力をもって本件財団を代表するものであるが(認定事実(4)イ(エ)。認定事実(1)イ(イ)も参照)、その義務の履行において、原告の指導を受けるものとされている(認定事実(2)イ(オ))。さらに、財団評議会の構成員は、他の構成員の過半数をもって解任することができるが(認定事実(4)イ(エ))、第一受益者の生存中に財団評議会の構成員を排除するには、第一受益者の同意が必要とされ(認定事実(6)イ(ウ))、第一受益者である原告は、財団評議会の構成員の解任につき、拒否権を有している。
ウ このように、原告は、本件財団の特別組織の唯一の構成員として、本件財団の資産の管理について、単独で責任を負い、制約を受けることなく裁量で行うことができる地位を有しており(前記ア)、また、本件財団の管理運営を行う財団評議会を指導する地位を有しているほか、財団評議会の構成員の解任につき、拒否権を有している(前記イ)。
しかも、原告のこれらの地位や権利は、本件財団の実質的な設立者として、その設立を指示し、資本金の全額を拠出した原告が承認した草案に基づいて制定された本件財団定款及び本件財団付属定款によって、あるいは、本件財団の設立の際に原告自身が行った指示によって得られたものである。
エ したがって、原告は、本件財団の資本金の全額を拠出するなどして本件財団を実質的に設立したことにより、本件財団の共益権と同視できる権利ないし地位を全部保有していたものと認められる。
(4) 原告の主張について
ア これに対し、原告は、①■において、財団では、出資者で構成される、自らの経済的利益のために財団の経営に関与するような機関は存在せず、財団の設立者は、設立のための財産を拠出することが定められているものの、それによって出資に応じた利益配当請求権等の経済的利益を有することや経営に参加する権利を有することが定められているものではない、また、②本件財団において、受益者が何らかの経済的利益を受けるものではないし、本件財団における「特別組織」は、単に財産の管理をするものであって経営に参加するものではないから、その権利内容は、共益権とは明らかに性質が異なるなどと主張する。
しかしながら、①前記1で説示したとおり、居住者等が外国法人に対して資本関係を通じた経済実質的な支配力を有しているか否かについては、外国法人の収益や資産を実質的に支配し得る地位の有無という観点から判定されなければならず、居住者等が外国法人を支配し得る単位化された物的持分としての法的地位を取得しているか否かについては、当該外国法人の設立準拠法だけでなく、当該外国法人の定款や会社規則等の具体的事情を総合的に考慮して判定すべきであるから、原告の上記①の主張は、それだけでは、原告の主張を基礎付けるものとして十分とはいえない。
また、②原告は、本件財団の「第一受益者」として、本件財団の資産及びその収入を享受する権利を独占的に有しているのみならず(前記(2))、本件財団の特別組織の唯一の構成員として、本件財団の資産の管理について、単独で責任を負い、制約を受けることなく裁量で行うことができる地位を有しており、さらに、本件財団の管理運営を行う財団評議会を指導する地位を有しているほか、財団評議会の構成員の解任につき、拒否権を有している(前記(3))。そして、本件財団の目的(認定事実(4)イ(イ)、(7)イ(ウ))に照らすと、本件財団の資産の管理は、その業務執行と密接に関連するものということができる。以上に加えて、措置法40条の4の規定は、外国法人の「株式又は出資」を判定基準の一つとするものであり、諸外国の法制度が我が国の法制度と異なり得るものであることは明らかであるから、「株式又は出資」の権利内容が我が国における自益権や共益権と完全に同じものでなければならないなどと解することはできないこと(前記1(2)参照)に照らすと、原告の上記②の主張も、にわかに採用することができない。
(なお、原告は、本件財団の設立以降、経済的に困窮する者の養育・教育等の支援という本件財団の目的にのみ財産の給付がされており、将来においても、原告は、本件財団から一切の経済的利益を受けることができない旨が財団評議会による追加条件として定められているなどと主張するが、原告が本件財団定款及び本件財団規則に基づき資産及びその収入を享受する権利を独占的に有しているのは前記(2)のとおりであり、実際に財産の給付を受けたか否かによって左右されるものではない。また、原告が指摘する追加条件(乙A10の1・159頁、209頁)は、原告が2018年(平成30年)12月31日付けで署名したものであるが、財団評議会がこれを受領したのは2019年(令和元年)10月21日であるから、平成29年及び平成30年当時の原告の権利・地位を変動させるものとは認められない。)
イ また、原告は、本件財団に対する3万スイスフランの払込みの対価として自益権及び共益権に相当する権利ないし地位が付与されるものではなく、本件財団の「受益者」や「特別組織の構成員」としての原告の地位は、飽くまでも定款等によって出資とは関係なく定められるものであり、その権利内容は何ら出資に応じたものではなく、出資との対価関係を欠くのであるから、出資によって法人から付与される社員権とは本質的に異なるものである、自益権及び共益権は密接不可分のものとして一つの地位に包含されるものであり、「受益者」や「特別組織の構成員」といった、複数の異なる地位に基づく権利がたまたま同一の者によって保有されているとしても、これによって各権利が自益権や共益権に転化するものではないなどと主張する。
しかしながら、原告は、本件財団の実質的な設立者として、本件財団の設立を指示するとともに、本件財団の資本金の全額を単独で拠出したものであり(前記(1)ア)、しかも、原告が有する前記(2)及び(3)の地位や権利は、原告が承認した草案に基づいて制定された本件財団定款、本件財団付属定款及び本件財団規則によるもの、あるいは、本件財団の設立の際に原告自身が行った指示に基づくものである(認定事実(2)〜(6))。
したがって、原告のこのような地位や権利は、本件財団の実質的な設立者として、本件財団の設立を指示し、資本金の全額を単独で拠出したことなどによって得られたものと認められる(前記(2)、(3))。これは、本件財団の設立に当たり原告が意図した内容そのものであり、これらがたまたま同一の者(原告)によって保有されているなどと評価することはできない。原告の上記主張は、採用することができない。
ウ さらに、原告は、平成29年度税制改正に言及した上で、株式等の保有は、飽くまでも形式的な資本関係に基づいて判定されるものであり、実質的な観点から判定されるものではないから、実質的な観点からみて原告の本件財団に対する地位があるとしても、これをもって原告が本件財団の発行済株式等を保有しているということはできない旨主張する。
この点、平成29年度税制改正前においては、外国関係会社であるか否かは居住者等との資本関係に基づいて判定していたため、外国法人との資本関係を意図的に断絶しつつ、契約関係等によりその外国法人に対する支配を実質的に維持することで外国子会社合算税制の適用を免れることが可能になっていたのに対し、平成29年度税制改正では、かかる資本関係がなくても、居住者等がその外国法人の残余財産のおおむね全部について分配を請求することができるなどの場合(実質支配関係)には、その外国法人を外国関係会社とすることとされたものである(乙B3・660頁参照)。
しかるに、前記(1)から(3)までにおいて認定、説示したとおり、原告が本件財団に対して有する地位は、本件財団の実質的な設立者として、本件財団の設立を指示し、資本金の全額を単独で拠出したことなどによって得られたものと認められるのであり、資本関係を離れた実質的な支配関係をもって外国子会社合算税制の要件該当性を判定しているものではないから、原告の上記主張は、正鵠を射たものとはいえない。
(5) 小括
以上によれば、原告は、本件財団の実質的な設立者として、本件財団の資本金を全額拠出したことなどにより、本件財団の自益権及び共益権と同視できる権利ないし地位を全部保有していたものと認められる。
したがって、原告は、本件財団の発行済株式等の全部を有していたものと認められる。
4 本件各処分の適法性
(1) 本件各更正処分について
ア 前記3のとおり、原告は、本件財団の発行済株式等の全部を有しており、本件財団に係るその持株割合は100分の100となるところ、本件財団は、本件外国法人の発行済株式等の全部を有しており(争いがない。)、原告が有する本件外国法人に係る「間接保有の株式等の数の合計数又は合計額の占める割合」(措置法40条の4第2項1号)は、100分の100となる。これは、100分の50を超えるものであるから、本件外国法人は、原告に係る外国関係会社(同条1項柱書き)に該当し、また、原告は、同条1項1号所定の「居住者」に該当する。
イ また、本件外国法人は、■会社法に基づき設立された、主たる事務所を■に有する法人であるところ(前提事実(2)イ)、■は、■会社法に基づき設立された法人等の所得に対して課される税が存在しない国であるから(前提事実(2)エ)、本件外国法人は、「本店又は主たる事務所の所在する国又は地域におけるその所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低いものとして政令で定める外国関係会社に該当するもの」(措置法40条の4第1項柱書き、措置法施行令25条の19第1項1号)であり、「特定外国子会社等」に当たると認められる。
ウ 以上に加え、弁論の全趣旨によれば、原告の本件各年分の雑所得の金額の計算に当たり、措置法40条の4第1項の規定が適用されると認められるところ、この場合に、本件各年分における原告の総所得金額及び納付すべき税額が別紙3の2記載のとおりとなることについては争いがない。
そうすると、平成29年分の総所得金額及び納付すべき税額の各金額は、平成29年更正処分の金額を上回り、また、平成30年分の総所得金額及び納付すべき税額の各金額は、平成30年更正処分と同額であるから、本件各更正処分は、いずれも適法である。
(2) 本件各賦課決定処分について
前記(1)のとおり、本件各更正処分はいずれも適法であるところ、本件各更正処分により原告が新たに納付すべき税額の計算の基礎となった事実につき、本件各更正処分前における税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法65条4項に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
以上を前提として、本件各更正処分に伴って原告に課されるべき過少申告加算税の額を計算すると、別紙3の4記載のとおりとなり、これらの金額は、平成29年賦課決定処分における原告が納付すべき過少申告加算税の額を上回り、また、平成30年賦課決定処分における原告が納付すべき過少申告加算税の額と同額であるから、本件各賦課決定処分は、いずれも適法である。
(3) したがって、本件各処分は、いずれも適法である。
第4 結論
よって、原告の請求は、いずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官 篠田 賢治
裁判官 下 和弘
裁判官 鈴木 真耶
(別表1~4の10)省略
