非公開裁決はどのように入手するのか?

開示請求

税務雑誌を読むと、非公開裁決の評釈を目にすることがありますが、公開されていない裁決はどのようにして入手するのか疑問に思ったことありませんか?国税不服審判所の勤務経験のある税理士が解説します。

行政文書の開示請求で入手可能

国税不服審判所では、毎年2,000件を超える裁決をし、このうち先例となるような裁決や取消裁決(原則全件)については、公表裁決事例としてHP上で全文を公開しています。令和2年1~12月分については26件が公開されました。

では、それ以外の裁決書を確認したい場合はどうすればよいのかというと、「行政文書の開示請求」という手続きを使えば、審判所が保管している裁決書の写しを入手することが可能です(手数料と時間がかかります)。手順は以下とおりです。

  • Step1
    裁決書の特定
    「裁決要旨検索システム」で確認したい裁決書を特定し、支部と裁決番号をメモする。

  • Step2
    開示請求書の提出
    「行政文書開示請求書」に、名前、住所、電話番号、裁決番号を記入し、収入印紙を貼付の上裁決書を保管している審判所へ提出。

  • Step3
    開示決定
    請求のあった日から原則30日以内に、審判所から「行政文書開示決定通知書」が郵送される。

  • Step4
    開示実施方法申出書の提出
    審判所へ「行政文書の開示の実施方法等申出書の提出」を提出。

  • Step5
    写しの交付
    審判所から写しが交付される。
  • STEP1 裁決書の特定

    裁決要旨検索システム

    国税不服審判所のHPでは、平成8年7月以降の裁決全件についての裁決要旨を検索・閲覧することができる「裁決要旨検索システム」というものを提供しています。まずは、こちらのシステムで、争点又はキーワードで検索して裁決要旨を確認します。裁決要旨を確認して全文を確認したい裁決があれば、「支部」と「裁決番号」をメモします。

    裁決要旨

    STEP2 開示請求書の提出

    裁決書を保管している審判所支部に「行政文書開示請求書」を提出します。手続きは審判所支部へ行って手続きする方法と郵送で行う方法があります。郵送の場合は、国税庁HPにアップされている用紙を印刷して、必要事項を記載し、300円分の収入印紙を貼付した上で審判所支部へ郵送します。例えば名古屋国税不服審判所が保管している裁決書(名裁(法・諸)令2-3)を請求する場合は、以下のように記載して、同審判所へ郵送します。

    行政文書開示請求書(裁決書)

    審判所支部に行って手続きする場合は、「行政文書開示請求書」は用意されていますので、管理課に行って手続きします。手数料は現金で納めることも可能です。

    STEP3 開示決定

    「行政文書開示請求書」を提出してから、請求のあった日から原則30日以内に「行政文書開示決定通知書」という文書が郵送されます。なお、行政文書の開示・不開示の審査に相当の時間を要するといった理由がある場合は、「開示決定等の期限の延長について」という通知が送付され、30日を超えない範囲で期限が延長されることがあります。

    STEP4 開示実施方法申出書の提出

    郵送された「行政文書開示請求書」には、「行政文書の開示の実施方法等申出書 」が同封されています。これに、以下のように記載して(追加で手数料の納付が必要であれば収入印紙を貼付して)、「切手」とともに郵送すれば、あとは写しが送られてくるのを待つだけになります。

    行政文書の開示の実施方法等申出書

    STEP5 写しの交付

    審判所から裁決書の写しが郵送されます。ただし、特定の個人や法人が特定されるような情報については、マスキングがされた状態で開示がされます。