銀行から融資を受ける際や保育園への申し込みの際に、収受印が押されている申告書の控えの提出を求められることがあります。もともと申告書の控えに収受印を押してもらっていない場合や申告書の控えを無くしてしまった場合はどうすればよいのか、税務署で文書収受を担当したことのある元国税調査官である税理士が解説します。
保有個人情報開示請求で入手可能
申告書控えへの収受印の押印は、申告書の提出時に控えも提示された場合に押印することになっており、後日控えだけを税務署に持参しても、日付をさかのぼって押印することはできないことになっています。
では、収受印の押された申告書の控えを入手するためにはどうするべきなのかというと、「保有個人情報開示請求」という手続きをすることにより、税務署に保管されている申告書の写しを手に入れることになります。ただし有料(1年分300円+郵送代)で、実際に控えを入手するまで2週間~1か月程度かかります。
開示請求の流れ
STEP1 開示請求書の提出
税務署に「保有個人情報開示請求書」を提出します。手続きは税務署へ行って手続きする方法と郵送で行う方法があります。郵送の場合は、国税庁HPにアップされている用紙を印刷して、以下のように記載し、300円分の収入印紙を貼付した上で、「身分証明書の写し」、「住民票の写し」(コピーはダメ)とともに税務署へ郵送します。
なお、申告書以外にも提出した書類の写しが欲しい場合は、「1 開示を請求する保有個人情報(具体的に特定してください。)」の欄に以下のように記載します(以下にない書類はこちらの申告書等リストで文書名を確認)。
・青色申告決算書(一般用) ⇒ 「令和〇年分所得税青色申告決算書(一般用)」
・青色申告決算書(不動産所得用) ⇒ 「令和〇年分所得税青色申告決算書(不動産所得用)」
・収支内訳書(一般用) ⇒ 「令和〇年分収支内訳書(一般用)」
・収支内訳書(不動産所得用) ⇒ 「令和〇年分収支内訳書(不動産所得用)」
税務署に行って手続きする場合は、「保有個人情報開示請求書」は用意されていますので、「身分証明書」持って総務課で手続きします。なお、手数料は税務署で納めることも可能ですが、閉庁時間間際だと納付ができないこともありますので、そういう場合は収入印紙も持参したほうが無難です。
STEP2 開示決定
「保有個人情報開示請求書」を提出してから、約2週間~1か月以内に、自宅に「保有個人情報の開示をする旨の決定について(通知)」という文書が郵送されます。これが届くと実際に写しを受け取れる状態になります。
STEP3 開示実施方法申出書の提出
税務署から郵送される「保有個人情報の開示をする旨の決定について(通知)」には、「保有個人情報の開示の実施方法等申出書 」が同封されています。これに、以下のように記載して、「切手」とともに郵送すれば、あとは写しが送られてくるのを待つだけになります。
STEP4 写しの交付
税務署から写しが郵送されます。なお、写しにマイナンバーの情報が含まれている場合、原則簡易書留で郵送されることになっています。
マイナンバーカードがあれば直近3年分の申告書の写しをe-Taxで取得可能
マイナンバーカードを保有している場合は、上記の開示請求手続きによらずとも、e-Taxソフト(WEB版・SP版)にログインすることで、申告書の写し(PDFファイル)を取得できます(書面で提出しているものも可能)。「申告書等情報取得サービス」と呼ばれるサービスで、手数料はかかりませんが、申請からPDFファイルの取得までには数日かかります。
申告書等情報取得サービスで取得できるのは、次の申告書等のうち、直近3年分(令和2年分以降)です。
① 所得税及び復興特別所得税確定(修正)申告書
② 青色申告決算書
③ 収支内訳書
電子申告した場合はe-Taxサイトで印刷することも可能
電子申告した場合は、e-Taxサイトにアクセスし、自分のメッセージボックスに格納されている申告データを印刷することで控えを入手することも可能です。マイナンバーカードとICカードリーダライタが必要ですが、開示請求に比べれば、こちらの方が圧倒的に早く入手することが可能です(手数料はかかりません)。
e-Taxサイトから控えを入手する方法については、以下が参考になります。
申告のデータが残っている場合は、そのデータから申告書等を表示・印刷・閲覧することができます。
なお、電子申告の場合、データが原本となることから、収受印はどこにも押印されることがないのですが、「受信通知」が収受印に相当しますので、これも合わせて印刷することをおすすめします。
申告書を見るだけであれば当日でも可能
どこかに提出するわけではなく、来年以降の自分の申告の参考にするために確認できればよいということであれば、税務署に行って当日閲覧することも可能です(手数料はかかりません)。
閲覧は、本人が行くのであれば「身分証明書」を持参します。閲覧時は、申告書を見て書き写すだけでなく、写真撮影もOKとなっています。