【法人税】東京高裁令和8年1月29日判決

判決イメージ 判決書(法人税)

国税局に情報公開請求をし、表題の判決書を入手してみました。

事案の概要

内国法人である原告は、本件事業年度に係る法人税等の申告をしたところ、税務署長から、租税特別措置法(平成29年法律第4号による改正前のもの。)66条の6第1項の規定により、スイスに所在する原告の子会社である■(以下「■」という。)並びに中国香港に所在する■の子会社である■及び■の課税対象金額に相当する金額が、原告の本件事業年度の所得金額の計算上、益金の額に算入されるなどとして、法人税等の各増額更正処分(本件法人税増額更正処分及び本件地方法人税増額更正処分)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(本件法人税加算税賦課決定処分及び本件令和3年地方法人税加算税賦課決定処分)を受けた。その後、原告は、本件事業年度の法人税について更正の請求をしたことに伴い、税務署長から、法人税については減額再更正処分及び本件法人税加算税賦課決定処分の減額変更決定処分を受けるとともに、地方法人税については本件地方法人税増額再更正処分及び本件令和6年地方法人税加算税賦課決定処分を受けた。

本件は、原告が、被告を相手に、①本件法人税増額更正処分及び本件法人税加算税賦課決定処分の各一部の取消し、並びに②本件地方法人税増額再更正処分(予備的に本件地方法人税増額更正処分)及び本件令和3年地方法人税加算税賦課決定処分の各一部並びに本件令和6年地方法人税加算税賦課決定処分の取消しを求める事案である。

基本情報

・税目:法人税
・処分行政庁:渋谷税務署長
・課税年度:平成30年12月期
・提訴裁判所:東京高等裁判所
・提訴年月日:令和7年5月29日
・判決日:令和8年1月29日
・結果:棄却

争点

・本件規定が本件委任規定の委任の範囲を逸脱するか否か
・本件規定を本件の事実関係の下で適用することが本件委任規定の委任の範囲を逸脱するか否か
・本件確定申告書に控除明細書の添付がなかったことについて「やむを得ない事情」があるか否か

判決書データ

東京高裁令和8年1月29日判決

原審はこちら⇓

【法人税】東京地裁令和7年5月16日判決
国税局に情報公開請求をし、表題の判決書を入手してみました。事案の概要内国法人である原告は、本件事業年度に係る法人税等の申告をしたところ、税務署長から、租税特別措置法(平成29年法律第4号による改正前のもの。)66条の6第1項の規定により、ス...

判決書テキスト

※以下は生成AIでテキスト化したものです。

主   文

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

(本判決で用いる略称については、原判決の例による。)

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。

2 渋谷税務署長が令和3年7月7日付けで控訴人に対してした平成30年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税の更正処分(本件法人税増額更正処分)のうち所得金額4999万6894円、納付すべき法人税額1169万9000円を超える部分及び法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(本件法人税加算税賦課決定処分)のうち加算税の額167万9000円を超える部分を取り消す。

3 (主位的請求)

渋谷税務署長が令和6年6月28日付けで控訴人に対してした平成30年1月1日から同年12月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分(本件地方法人税増額再更正処分)のうち課税標準法人税額1169万9000円、納付すべき地方法人税額51万4700円を超える部分を取り消す。

(予備的請求)

渋谷税務署長が令和3年7月7日付けで控訴人に対してした平成30年1月1日から同年12月31日までの課税事業年度の地方法人税の更正処分(本件地方法人税増額更正処分)のうち課税標準法人税額1169万9000円、納付すべき地方法人税額51万4700円を超える部分を取り消す。

4 渋谷税務署長が令和3年7月7日付けで控訴人に対してした平成30年1月1日から同年12月31日までの課税事業年度の地方法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(本件令和3年地方法人税加算税賦課決定処分)のうち加算税の額4万9000円を超える部分を取り消す。

5 渋谷税務署長が令和6年6月28日付けで控訴人に対してした平成30年1月1日から同年12月31日までの課税事業年度の地方法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(本件令和6年地方法人税加算税賦課決定処分)を取り消す。

第2 事案の概要

1 控訴人が、本件事業年度(平成30年)に係る法人税・地方法人税の申告をしたのに対し、渋谷税務署長は、平成29年改正前の租税特別措置法66条の6第1項に規定する外国子会社合算税制(軽課税国・地域に所在する特定外国子会社等が受けた剰余金の配当等を内国法人の所得に合算して課税するもの)の適用により、特定外国子会社等に当たる■■■■等が本件■■■■事業年度等(平成29年)において有する適用対象金額のうち課税対象金額に相当する金額は、控訴人の本件事業年度における所得の金額の計算上、益金の額に算入することになるところ、本件確定申告書には平成29年改正前の租税特別措置法施行令39条の15第8項(本件規定)が控除の要件とする控除明細書の添付がなく、これにつき「やむを得ない事情」(同項ただし書)があるとは認められないから、■■■■等が本件■■■■事業年度等において子会社から受けた配当等の額(本件各配当の額)を適用対象金額の基礎となる基準所得金額の計算上控除することはできないなどとして、法人税等の各増額更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をなし、その後、法人税については控訴人が更正の請求をしたことに伴い減額再更正処分等をし、地方法人税については増額再更正処分等をした。

本件は、控訴人が、被控訴人を相手方として、①本件法人税増額更正処分及び本件法人税加算税賦課決定処分の各一部の取消し、並びに②本件地方法人税増額再更正処分(予備的に本件地方法人税増額更正処分)及び本件令和3年地方法人税加算税賦課決定処分の各一部並びに本件令和6年地方法人税加算税賦課決定処分の取消しを求める事案である。

控訴人は、上記各請求の根拠として、①本件規定が法律による委任の範囲を逸脱する、②本件規定を本件の事実関係の下で適用することが法律による委任の範囲を逸脱する、③本件確定申告書に控除明細書の添付がなかったことにつき「やむを得ない事情」がある、と主張している。

原審は、控訴人の上記①ないし③の主張をいずれも排斥し、上記各請求のうち減額再更正処分・減額変更決定処分により一部取消しがされた部分又は増額再更正処分により訴えの利益が失われた部分の当初処分の取消しを求める部分に係る訴えは不適法であるとして却下したほか、その余の請求をいずれも棄却したところ、控訴人が控訴した。

2 関係法令の定め、前提事実、争点及びこれに関する当事者の主張は、原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」2から6までに記載のとおりであるから、これを引用する。

第3 当裁判所の判断

1 当裁判所も、控訴人の各請求中、原判決別紙2(訴え却下部分目録)記載の部分に係る訴えは不適法であるから却下すべきものであり、その余の請求はいずれも理由がないから棄却すべきものであると判断する。その理由は、後記2を加えるほかは、原判決「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」1から6までに記載のとおりであるから、これを引用する。

2 控訴理由を踏まえた補足説明

控訴人は、当審においても、措置法66条の6第2項2号(本件委任規定)は、特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき「法人税法及びこの法律による各事業年度の所得の金額の計算に準ずるもの」として政令で定める基準により、基準所得金額の計算をすべき旨規定するところ、措置令39条の15第8項(本件規定)は、外国子会社配当益金不入制度における当初申告要件(平成23年12月税制改正前の法人税法23条の2第3項)に準ずるものとして、外国子会社合算税制においても当初申告要件を規定したものであったから、平成23年12月税制改正により外国子会社配当益金不入制度につき当初申告要件が撤廃された以上、外国子会社合算税制について当初申告要件を存置する基礎は失われており、本件規定は本件委任規定による委任の範囲を逸脱するものであるなどと主張する。

しかし、法人税法23条の2第1項は、内国法人が同項所定の外国子会社から受ける剰余金の配当等の額につき、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない旨を規定しており、措置令39条の15第1項4号が、措置法66条の6第2項2号の規定(本件委任規定)による特定外国子会社等の各事業年度の基準所得金額の計算に関し、特定外国子会社等が当該各事業年度において子会社から受ける剰余金の配当等の額を控除する旨規定するのは、我が国の法人税法の規律に準ずるものであって、本件委任規定の定めに沿うものといえる。法人税法23条の2第5項は、確定申告書に限らず、修正申告書や更正請求書に益金の額に算入されない剰余金の配当等の額及びその計算に関する明細書の添付がある場合にも、同条1項の適用があるものとするのに対し、措置令39条の15第8項(本件規定)は、確定申告書に同条1項4号の規定により控除されることとなる剰余金の配当等の額の計算に関する明細書(控除明細書)の添付がある場合に限り、当該金額を基準所得金額の計算上控除するものとしているが、措置法66条の6第1項に規定する外国子会社合算税制は、租税回避の防止を目的とした制度であって、特定外国子会社等の存在やその所得につき課税庁に申告しないというインセンティブが働きやすい点や、特定外国子会社等がその子会社から受ける配当等の額は納税者である内国法人の損益計算書に記載される情報ではない点などにおいて、外国子会社配当益金不入制度とは異なる考慮を要する面があり、納税者からの資料提出により特定外国子会社等の所得に関する情報を早期の段階で確実に収集する必要性はより高いことに照らすと、外国子会社配当益金不入制度については当初申告要件が撤廃された後も外国子会社合算税制についてはこれを維持するものとすることは、その制度目的に照らして合理性があるということができ、本件委任規定を受けて措置令において特定外国子会社等の基準所得金額の計算を具体的にどのようにして行うかについての細目的事項を定めるに当たり、内閣が有する専門技術的な裁量の範囲内にあるというべきである。したがって、本件規定が本件委任規定による委任の範囲を逸脱するとまではいえない。

そして、本件規定を含む法令の規定において、内国法人に係る特定外国子会社等が各事業年度において子会社から受ける剰余金の配当等の所得はその内国法人の所得に合算して課税対象とされるが、内国法人の確定申告書に控除明細書の添付がある場合に限り、特定外国子会社等が当該各事業年度において子会社から受ける剰余金の配当等の額が当該各事業年度における基準所得金額の計算上控除されることが明確に定められており、控訴人においては、平成31年3月に本件確定申告書を提出する前に、■■■■等の本件■■■■事業年度等の各財務諸表の記載により■■■■等が本件■■■■事業年度等に子会社から受けた本件各配当の額を把握することができたと考えられることに鑑みると、平成29年3月から同年6月までに本件各配当が実施された後である同年8月に控訴人が■■■■の株式を取得して■■■■等が控訴人に係る特定外国子会社等となったことをもって、本件規定を本件の事実関係の下で適用することが本件委任規定による委任の範囲を逸脱するとはいえないし、本件確定申告書に控除明細書の添付がなかったことにつき「やむを得ない事情」があるともいえない。

3 以上によれば、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第2民事部
裁判長裁判官 谷口 園恵
裁判官 中久保 朱美
裁判官 小西 慶一