国税不服審判所に情報公開請求をし、表題の裁決書を入手してみました。
事案の概要
本件は、原処分庁が、請求人は所得税法上の居住者に該当し、外国子会社合算税制が適用されるなどとして所得税等の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分を行ったことに対し、請求人が、所得税法上の非居住者に該当することなどを理由に、原処分の全部の取消しを求めた事案。
基本情報
・裁決番号:大裁(所)令6第46号
・税目:所得税
・管轄:大阪国税不服審判所
・裁決日:令和7年3月24日
・結果:棄却
争点
(1) 請求人は、所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当するか(争点1)。
(2) 請求人の平成30年分の所得税等の額の計算上、本件適用除外規定が適用されるか(争点2)。
(3) ■■■■■の適用対象金額の計算上、同社が■■■■■から受領した配当額を控除対象配当等の額として控除すべきか(争点3)。
裁決書データ
裁決書テキスト
※以下は生成AIでテキスト化したものです。
主 文
審査請求をいずれも棄却する。
理 由
1 事実
(1) 事案の概要
本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)は所得税法上の居住者に該当し、外国子会社合算税制が適用されるなどとして所得税等の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分を行ったことに対し、請求人が、所得税法上の非居住者に該当することなどを理由に、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2) 関係法令等
関係法令等は、別紙のとおりである。
なお、別紙で定義した略語については、以下、本文においても使用する。
(3) 基礎事実
当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
なお、以下では、所得税及び復興特別所得税を併せて「所得税等」という。
イ 請求人の職業等
請求人は、平成11年6月14日に■■■■■(以下「■■■■■」という。)の、同月15日に■■■■■の、平成22年6月8日に■■■■■の、平成28年11月25日に■■■■■の代表取締役にそれぞれ就任し、平成30年を通じて、これらの各法人(以下、これら4社を併せて「本件各国内法人」という。)の代表取締役を務めていた。
本件各国内法人は、いずれも平成30年を通じて、■■■■■■■■■■■■■■■に本店所在地を置く国内法人である。
なお、■■■■■は、金属プレス加工、板金加工等を目的とする法人である。
また、請求人は、平成30年を通じて、平成6年に中華人民共和国■■■■■(以下「■■■」という。)において設立された■■■■■■■■■■(以下「■■■■■」という。)、平成17年に同所において設立された■■■■■■■■■■(以下「■■■■■」という。)、同年にベトナム社会主義共和国(以下「ベトナム」という。)において設立された■■■■■■■■■■(以下「■■■■■」という。)及び平成24年に中華人民共和国(以下「中国」という。)において設立された■■■■■■■■■■(以下「■■■■■」という。)の役員を務めており、これらの各法人(以下、これら4社を併せて「本件各外国法人」という。)の各発行済株式総数の99.99パーセントを直接又は間接保有していた。
ロ 請求人の日本国内滞在日数及び日本国内滞在先の状況
請求人の平成30年中における日本国内での滞在日数は、228日である。
請求人は、日本国内での滞在中、主に■■■■■■■■■■■■■■■■の■■■■■の建物(■■■■■。以下「本件国内滞在先」という。)に滞在しており、本件国内滞在先については、平成25年11月28日付で、同年12月1日から平成28年11月30日までの間、請求人が、所有者である■■■■■から賃借する契約をし、その後、平成30年中においても本件国内滞在先を賃借していた。
なお、本件国内滞在先は、平成24年8月5日に新築された5階建ての建物であり、同月24日、種類を事務所、居宅及び車庫とし、所有者を■■■■■とする旨の所有権保存登記がされ、本件国内滞在先が所在する土地(■■■■■■■■■■及び■■■■■の土地)は、平成20年2月28日、売買を原因として■■■■■に所有権移転登記がされ、平成25年9月30日、売買を原因として同社から請求人に所有権移転登記がされた。
ハ 請求人の日本国外滞在日数及び日本国外滞在先の状況
請求人の平成30年中における日本国外での滞在日数は137日であり、日本国外での滞在先は、主に■■■であった。
請求人は、■■■での滞在中、■■■■■が1年ごとの契約で賃借したサービスアパートメントである■■■■■■■■■■(以下「本件■■■滞在先」という。)に滞在していた。
ニ 本件各外国法人の平成29年12月31日における株式の状況
(イ) ■■■■■の発行済株式総数が10,000株であるところ、請求人が9,999株、請求人の弟である■■■■■(以下「本件弟」という。)が1株を保有していた。
(ロ) ■■■■■は、■■■■■及び■■■■■の発行済株式の全部を保有していた。
(ハ) ■■■■■は、■■■■■の発行済株式の全部を保有していた。
(4) 審査請求に至る経緯
イ 請求人は、自身が所得税法第2条第1項第5号に規定する非居住者に該当すると判断して、平成30年分の所得税等について、その法定申告期限内に確定申告書を提出しなかった。
ロ ■■■■■の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は、令和5年7月27日、①実地調査を行う旨、②調査の対象となる税目及び③調査の対象となる期間について請求人に通知し、請求人に対する実地の調査(以下「本件調査」という。)を開始した。
ハ 原処分庁は、本件調査に基づき、請求人が所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当するとして、請求人に対し、令和6年3月13日付で、別表1の「決定処分等」欄のとおり、平成30年分の所得税等の決定処分(以下「本件決定処分」という。)及び無申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件決定処分と併せて「本件決定処分等」という。)をした。
なお、原処分庁は、本件決定処分において、■■■■■が請求人に係る措置法第40条の4第1項及び措置法施行令第25条の19第1項第2号に規定する特定外国子会社等に該当し、措置法第40条の4第1項に規定する適用対象金額を有するとして計算した課税対象金額を、請求人の雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入した。
ニ 請求人は、令和6年6月3日、本件決定処分等に不服があるとして、審査請求をした。
2 争点
(1) 請求人は、所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当するか(争点1)。
(2) 請求人の平成30年分の所得税等の額の計算上、本件適用除外規定が適用されるか(争点2)。
(3) ■■■■■の適用対象金額の計算上、同社が■■■■■から受領した配当額を控除対象配当等の額として控除すべきか(争点3)。
3 争点についての主張
(1) 争点1(請求人は、所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当するか。)について
| 原処分庁 | 請求人 |
|---|---|
| 以下のとおり、平成30年において、請求人の住所、すなわち、生活の本拠は本件国内滞在先にあったと認められるから、請求人は、所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当する。
イ 滞在日数 請求人の平成30年中における日本国内での滞在日数は228日(日本国内滞在日数の割合は約62パーセント)であり、■■■を含む日本国外の滞在日数の約1.6倍に及んでおり、日本国内の滞在日数は、日本国外の滞在日数を相当程度上回っていた。 ロ 本件国内滞在先の状況等 請求人は、上記イのとおり、平成30年中において年間の5分の3を超える期間、日本国内に滞在していたところ、少なくとも平成30年3月27日時点において、日本国内滞在中は、本件国内滞在先に居住している旨を申述した。また、請求人が自ら負担している本件国内滞在先の水道及び電気使用料金(以下「本件水道光熱費等」という。)に係る月別の各使用量は、平成30年3月以前と平成30年4月以降とで同程度である。これらの事実からすれば、請求人は平成30年4月以降も日本国内滞在中を本件国内滞在先に居住していたと認められ、このことは本件国内滞在先が請求人の生活の本拠としての実体を備えていたことを強く基礎付けるものである。 ハ 生計を一にする親族 請求人は、■■■■平成30年中において生計を一にする配偶者その他の親族はいなかった。 ニ 職業及び業務の状況等 請求人は、上記1の(3)のイのとおり、日本国内外の多数の企業の代表取締役又は役員を兼務しており、職業のみでは生活の本拠を決定付けることはできないが、一般的に法人の役員は、必ずしも法人の所在地等の特定の場所に常時滞在しなければ自らの職務を遂行できないという立場ではなく、上記イのとおり、平成30年中における請求人の日本国内滞在日数が、年間の5分の3を超えていて、■■■を含む日本国外の滞在日数を相当程度上回っていたことや、請求人の日本に滞在する日数が増加した主な理由が、日本における本件各外国法人の取引先との折衝等であることも併せて考えると、平成30年中における請求人の本件各外国法人の役員等としての業務は、日本国内に相当程度滞在することが必要なものであったといえる。 ホ ■■■の在留資格等 請求人が「■■■■■■■■■■」の交付を受けて■■■の永住許可を保証されたことや■■■■■■■が証明する在留証明を受けていることは、実際の請求人の所在や活動拠点を直接示すものではない。 ヘ 資産の所在 請求人は、平成30年中において、日本国内に土地、建物、預貯金及び本件各国内法人の株式を保有しており、その評価額は平成30年12月31日において約4億2,000万円(そのうち本件各国内法人の株式の評価額は約2億4,000万円)であった。また、請求人は日本国外においては■■■■■■■■■■の株式を保有しており、当該株式の平成30年12月31日における評価額は約14億5,000万円であり、日本国内に所有する資産の価額を大きく上回るが、株式や預貯金等の金融資産は、特定の場所における生活との結び付きが不動産等の物的資産と比較して強くないため、日本国外資産の価額が、日本国内資産の価額を上回っていても、請求人の生活の本拠に係る判断を左右する事情とまではいえない。 ト 各種届出状況 請求人は、平成30年1月から同年12月までの間、日本の健康保険組合の被保険者の資格を有していたほか、本件国内滞在先を現住所としてクレジットカード契約を締結していた。
|
以下のとおり、平成30年において、請求人の住所、すなわち、生活の本拠は本件国内滞在先にあったとは認められず、請求人は、所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当しない。
イ 滞在日数生活の本拠の判断については、単なる物理的な滞在日数は関係ない。 なお、請求人の日本国内での滞在日数が増加した理由は、本件各外国法人の取引先である日本の大手企業の海外子会社との商取引に当たり、親会社の役員と直接面談して折衝する必要があったことや、平成25年3月14日に中国で習近平政権が発足してから、日本の大手企業との間で、中国の現地工場の撤退のための事務打合せ等を行っていたためである。 ロ 本件国内滞在先の状況等 本件国内滞在先は、■■■■■の社宅であって、■■■■■の社員であれば誰でも出入りできる建物構造となっていることに加え、夜間の自動点灯装置や植木用自動散水装置を備えた構造となっていることから、請求人が本件水道光熱費等を支払っていることをもって、請求人が本件国内滞在先に居住していることの証明にはならない。 なお、請求人は、本件水道光熱費等を超える光熱費等を、本件■■■滞在先の賃借料に含めて支払っている。 ハ 生計を一にする親族 請求人には、平成30年において■■■に■■■■■が存在しており、このことは原処分庁も把握しているが、原処分庁の主張は、当該■■■■■の存在を無視したものとなっている。 請求人は、本件各外国法人の発行済株式総数の50パーセント超を保有しており、かつ、事業規模が大きい本件各外国法人の海外事業の最高経営責任者として企業経営に従事していることで、本件各外国法人から年間約1,000万円の役員報酬を得ており、所得税基本通達3-3も踏まえれば、所得税法施行令第15条第1項第1号に規定する「国外において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する」者に該当することから非居住者と推定される。 また、本件各国内法人は、全て事業規模が小さい零細企業であり、請求人は、本件各国内法人の経営にほとんど関与していない。■■■■■については本件弟が、■■■■■については請求人の友人が経営に従事している。 なお、■■■■■は休業状態、■■■■■は休眠中である。 ホ ■■■の在留資格等 請求人は、平成8年9月及び平成18年2月4日に、■■■における永住許可証明書である「■■■■」の交付を受けており、そのために少なくとも7年以上継続して■■■に居住することが条件となっている。 また、請求人は、■■■に在住し、上記ニのとおり、本件各外国法人の海外事業の最高経営責任者としての職業を有しているため、■■■から日本における非居住者であると認定され、その旨の証明を公文書により受け取っており、■■■■■■■■■■が主催する皇室関係の行事等の各種イベントにも招待されているほか、■■■に長期滞在している職業人の義務として、■■■の高等裁判所から刑事裁判の陪審員にも選定されている。 ヘ 資産の所在 請求人は、日本国外においては、■■■■■■■■の株式を保有しており、当該株式の評価額は、原処分庁の主張を前提とすれば、約14億5,000万円であるが、一方で、日本国内においては、約2億4,000万円の株式及び約2億円の借入金しか有していない。 なお、原処分庁の主張では、借入金等のマイナスの資産について一切触れられていない。 ト 各種届出状況 請求人が日本の健康保険組合の被保険者の資格を有していたことや、本件国内滞在先を現住所としてクレジットカード契約を締結していた事実は、実際の居住状況を示すものではない。 |
(2) 争点2(請求人の平成30年分の所得税等の額の計算上、本件適用除外規定が適用されるか。)について
| 原処分庁 | 請求人 |
|---|---|
| 以下のとおり、請求人の平成30年分の所得税等の額の計算上、本件適用除外規定は適用されない。
イ ■■■■■が統括会社に該当しないこと
■■■■■は、■■■■■を通じて、請求人及び本件弟の2名によって間接保有されているのであるから、措置法第40条の4第3項及び措置法施行令第25条の22第4項に規定する「一の居住者」によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されているという統括会社の要件を満たしていない。 また、■■■■■は、■■■■■の株式の全部を保有しているのみであり、■■■■■の株式を保有していないから、措置法施行令第25条の22第4項第1号に規定する「複数の被統括会社…に対して統括業務を行っていること」という統括会社の要件を満たしていない。 したがって、■■■■■は、措置法第40条の4第3項及び措置法施行令第25条の22第4項に規定する統括会社に該当しない。 ロ 請求人が適用除外記載書面を添付した確定申告書を提出していないこと (イ)請求人は、そもそも平成30年分の所得税等の確定申告において、■■■■■に係る適用除外記載書面を添付した確定申告書を提出しておらず、措置法第40条の4第7項及び第9項の要件を満たしていない。 (ロ)本件調査担当職員は、令和6年3月8日、請求人に対する面接を実施し、調査終了時の調査結果の説明を行いたい旨を2回伝えたが、請求人が、時間がないこと及び自身が非居住者であることを理由に当該説明を受けることを拒否したため、本件調査担当職員は、請求人に対し、通則法第74条の11第2項に規定する調査結果の説明、及び同条第3項に規定する期限後申告の勧奨を行うことができなかった。 上記の面接の際、本件調査担当職員は、請求人に対し、①平成30年分の所得税等について決定を行うこと、②令和6年3月15日までに通知書を送付すること及び③本件調査に係る結果説明のうち、おおよその所得金額、本税額及び加算税額とともに、詳細な説明を受けたい場合には、同月11日に本件調査担当職員に連絡をするように伝え、請求人からの連絡を待ったが、同日に請求人からの連絡はなかったのであるから、請求人は、自らの責任で、調査結果の説明を受ける機会を放棄したといわざるを得ない。 なお、請求人は、本件調査担当職員に対し、自身は非居住者であるため、期限後申告の提出を行うつもりはない旨申し立てており、本件調査担当職員の調査結果の説明の有無にかかわらず、請求人には期限後申告を提出する意思はなかったと考えられる。
|
以下のとおり、請求人の平成30年分の所得税等の額の計算上、本件適用除外規定が適用される。
イ ■■■■■が統括会社に該当すること 同族株主グループにおける一の者の定義として、「一の居住者」と特殊の関係にある者には、居住者の親族が含まれるという解釈は、グループ法人税制や組織再編税制と同様であり、税法の基本的な考え方である(法人税法施行令第4条第1項第1号及び措置法施行令第25条の21第8項第1号)。本件各外国法人には、二親等の親族の関係にある請求人及び本件弟という「一の居住者」による完全支配がある。 そして、■■■■■、■■■■■及び■■■■■は、その所在地国において事業を行うに必要と認められる従事者を有しているため、それぞれ被統括会社に該当し、■■■■■、■■■■■及び■■■■■に対し、統括業務を行っており、かつ、その所在地国において、統括業務に係る事務所、固定設備及び統括業務に必要と認められる従事者を有しているため、それぞれ統括会社に該当する。 ロ 請求人が期限後申告書を提出したものとして取り扱われるべきであること 以下のとおり、本件においては請求人が確定申告書を提出しなかったことについて、やむを得ない事業が認められるから、請求人が期限後申告書を提出したものとして取り扱われるべきである。 (イ)本件調査担当職員は、本件調査終了時に、請求人が期限後申告書を提出すれば、本件適用除外規定の適用を受けることができたことを承知の上で、調査結果の説明及び期限後申告の勧奨を行わなかったのであり、意図的に、請求人が期限後申告書を提出できないような調査手法が採られている。 本件調査終了時に、本件調査担当職員から、期限後申告書を提出することにより、本件適用除外規定の適用を受けることができる旨の説明を受けていれば、請求人が期限後申告書を提出することは疑いのないものであるから、本件調査担当職員が請求人に対し、納得のいく説明をしていないことは明らかである。 (ロ)請求人は、平成23年における税務調査の際の認定に従い、非居住者として、源泉徴収によって適正な納税を行っているものと認識していたのであるから、平成30年分の所得税等の確定申告書の提出がないことで、本件適用除外規定の適用がないとされることは、理不尽である。 (ハ)平成27年度の税制改正で、資料等の提出がなかった場合においても、その添付又は保存がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、本件適用除外規定を適用することができる旨の本件ゆうじょ規定が制定されており、さらに、平成29年度の税制改正で、適用除外記載書面を添付した確定申告書の提出要件は廃止されている。 |
(3) 争点3(■■■■■の適用対象金額の計算上、同社が■■■■■から受領した配当額を控除対象配当等の額として控除すべきか。)について
| 原処分庁 | 請求人 |
|---|---|
| イ 租税負担割合
■■■■■の平成29年4月1日から同年12月31日までの事業年度(以下、「平成29年12月期」といい、他の事業年度も同様に表記する。)における租税負担割合は、以下のとおりである。 (イ)措置法施行令第25条の19第1項第2号には、分子について、「各事業年度の所得に対して課される租税の額」と規定され、同条第2項第1号には、分母について、非課税所得を本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金額に加算して所得調整する旨規定されていることからすると、分母を算出するための、同号に規定する「本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金額」は、外国法人税等の租税の額を算出するための課税標準である。 したがって、「本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金額」は、■■■■■(別表2の①「税引前会計利益」欄の金額)に、別表2の②「当期に実現された過年度の損益」欄から⑤「会計年度の変更に関する他の調整」欄までの金額を加減算した、■■■■■(別表2の⑥「当期課税所得見積額」欄の金額)となる。 そして、措置法施行令第25条の19第2項第1号イからヘまでの規定に該当する金額はないから、分母は、■■■■■(別表2の⑥「当期課税所得見積額」欄の金額)となる。 (ロ)分子は■■■■■(別表2の⑧「当期法人所得税費用」欄の金額)であるから、租税負担割合は20パーセントとなる。 ロ ■■■■■が特定外国子会社等に該当しないこと等 以上からすれば、■■■■■の平成29年12月期における租税負担割合が100分の20未満でないことから、■■■■■は、措置法第40条の4第1項及び措置法施行令第25条の19第1項第2号に規定する特定外国子会社等に該当しない。 よって、■■■■■が■■■■■から配当金を受領していたとしても、当該配当額は、措置法施行令第25条の20第3項第1号及び第2号に規定する「他の特定外国子会社等から受ける配当等の額」に当たらず、同項に規定する控除対象配当等の額に該当しないため、■■■■■の適用対象金額の計算上、控除すべきではない。 |
■■■■■は、その株式を100パーセント保有している■■■■■から配当金を受領している。
措置法施行令第25条の19の規定に基づき調整を行い、平成29年12月期における■■■■■の租税負担割合を計算すると、分母は■■■■■(別表2の①「税引前会計利益」欄の金額)、分子は■■■■■(別表2の⑧「当期法人所得税費用」欄の金額)であって、租税負担割合は約18.5パーセント(20パーセント未満)であるから、■■■■■は、特定外国子会社等に該当する。
したがって、■■■■■が■■■■■から受領した配当額は、措置法施行令第25条の20第3項第1号及び第2号に規定する「他の特定外国子会社等から受ける配当等の額」に当たり、■■■■■の適用対象金額の計算上、同項に規定する控除対象配当等の額として控除すべきである。
|
4 当審判所の判断
(1) 争点1(請求人は、所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当するか。)について
イ 法令解釈
所得税法第2条第1項第3号において、国内に住所を有する個人は居住者とされているところ、ここにいう「住所」とは、生活の本拠(民法第22条)、すなわち、その者の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心を指すものであり、一定の場所がある者の住所であるか否かは、客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものと解するのが相当である。
そして、客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かは、その者の国内外での①滞在日数、②生活場所及び同所での生活状況、③職業並びに業務の内容及び従事状況、④生計を一にする配偶者その他の親族の居住地、⑤資産の所在、⑥生活に関わる各種届出状況等の客観的諸事情を総合的に勘案して判断するのが相当である。
ロ 認定事実
請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人の本件国内滞在先の使用状況
A 賃借の状況
請求人は、平成30年中において、■■■■■に対し、同社から賃借した本件国内滞在先の賃料を支払っていた。
B 水道の使用状況
本件国内滞在先の水道使用量は、平成30年1月10日から平成31年1月9日までの間において毎月4㎥から7㎥までの間で推移し、請求人が本件国内滞在先の水道料金を請求人名義の口座から毎月支払っていた。
C 電気の使用状況
本件国内滞在先の電気使用量は、平成30年1月6日から平成31年1月7日までの間において毎月1,182kWhから3,301kWhまでの間で推移し、請求人が本件国内滞在先の電気料金を請求人名義の口座から毎月支払っていた。
(ロ) ■■■の在留資格等
請求人は、平成8年9月以降、「■■■■■■■■■■」を有して■■■に永住する許可を受けていた。
また、請求人は、令和5年5月9日付で、■■■■■■■■■■から、請求人が本件■■■滞在先に在留していることを証明する旨の在留証明書の交付を受けていた。
なお、当該在留証明書には、本件■■■滞在先の住所が現住所として記載され、当該場所に住所(又は居所)を定めた年月日が平成30年7月である旨が記載されている。
(ハ) 請求人の業務の内容及び従事状況
A 請求人の■■■滞在中における業務の内容及び従事状況
■■■滞在中の請求人の業務は、本件各外国法人の役員として、主に■■■■■■■■及び■■■■■■■■の管理運営を行うこと、具体的には、海外工場の視察、客先訪問、来客の対応、工場の経営管理及び資金繰りなどであった。
B 請求人の日本滞在中における業務の内容及び従事状況
本件各外国法人は、日本企業の海外子会社と取引を行っていたところ、請求人は、日本滞在時においては、主に■■■■■■■■及び■■■■■■■■の取引先で、上記海外子会社の親会社である日本企業の役員と直接会って打合せをするなどしていた。
また、平成25年以降は、中国における社会情勢不安から■■■■■の撤退を念頭に日本国内での打合せが増加していた。
(ニ) 請求人が保有していた資産について
A 国内財産について
請求人は、平成30年12月31日において、別表3のとおり、不動産(179,166,791円)、預貯金(4,380,122円)及び有価証券(237,554,574円)の国内財産(合計421,101,487円)を有していた。
B 国外財産について
平成30年12月31日における、請求人が保有していた■■■■■■■■■■の株式の評価額は、同社の平成30年12月期の純資産価額である105,727,257■■■に請求人の持分割合(10,000分の9,999)を乗じ、同年12月28日時点の■■■■■■■■■■の対顧客直物電信買相場(TTB)である1■■■当たり13.75円を乗じて邦貨換算すると、1,453,604,408円であった。
(ホ) 生活に関わる各種届出の状況
A 住民票上の住所
請求人は、日本国籍を有し、平成15年6月1日から、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■を住民票上の住所として届出をしており、以後、少なくとも令和元年12月25日までは転出の届出をしていなかった。
B 健康保険組合の加入状況
請求人は、平成30年を通じて、住民票上の住所を住所地として日本の健康保険組合に加入し、日本の健康保険組合の被保険者の資格を有していた。
C クレジットカードの加入状況
請求人は、平成30年8月15日付で、■■■■■■■■■■に対し、本件国内滞在先を住所地として、クレジットカードの発行を申し込んだ。
(ヘ) 平成29年中の状況
請求人は、平成29年中においても、本件各国内法人の代表取締役及び本件各外国法人の役員を務めており、日本国内の滞在日数は279日であったほか、上記(イ)から(ホ)までの平成30年中の各事情は、平成29年中においてもおおむね変わりがなかった。
ハ 検討
(イ) 滞在日数について
請求人は、上記1の(3)のロ及びハのとおり、平成30年中における日本国内での滞在日数は228日(年間の日本国内滞在割合は約62パーセント)であり、■■■を含む日本国外の滞在日数(137日)を相当程度上回っている。
(ロ) 生活場所及び同所での生活状況について
請求人は、上記1の(3)のロのとおり、平成30年を通じて、日本国内に滞在する際には、本件国内滞在先に滞在していた。そして、上記1の(3)のロ及び上記ロの(イ)のとおり、請求人は、本件国内滞在先をその所有者である■■■■■から自ら賃借して賃料を支払っていたこと及び本件国内滞在先における本件水道光熱費等を自ら負担していたことからすると、本件国内滞在先は、請求人の個人的な生活の拠点であったといえる。他方、本件■■■滞在先は、上記1の(3)のハのとおり、■■■■■が1年ごとの契約で賃借したサービスアパートメントであることからすると、請求人が■■■滞在中に、本件各外国法人の業務を行うために滞在する場所であったにすぎないといえる。
(ハ) 職業並びに業務の内容及び従事状況
請求人は、上記1の(3)のイのとおり、日本国内外の企業の代表取締役又は役員を兼務している。
そして、請求人の業務の内容及び従事状況についてみると、請求人は、上記(イ)及び上記ロの(ハ)のとおり、平成30年を通じて、日本と■■■とを往来しながら主に本件各外国法人の役員としての業務を行い、日本国内においては、■■■■■■■及び■■■■■■の取引先の親会社の役員との打合せ等を行っていたものと認められる。そして、上記(イ)のとおり、平成30年を通じた請求人の日本国内滞在日数が、年間の6割を超え、■■■を含む日本国外の滞在日数を相当程度上回っていたことも踏まえると、請求人の業務は、その多くの部分を日本国内において行うことが可能であり、かつ、実際に行われていたものと認められる。
(ニ) 生計を一にする配偶者その他の親族の居住地
請求人には、平成30年を通じて、生計を一にする親族がいるとは認められない。
なお、請求人は、本件■■■滞在先において、生計を一にするパートナーと生活していた旨主張するが、請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によっても、請求人の主張するパートナーが請求人と婚姻関係又はこれに準ずる関係にあったことや、当該パートナーと請求人が生計を一にしていたとは認められない。
(ホ) 資産の所在
請求人は、上記ロの(ニ)のAのとおり、平成30年12月31日において日本国内に本件国内滞在先の敷地である土地等の不動産を所有していたのに対し、請求人が、平成30年を通じて、■■■において不動産を所有していた事実はうかがわれない。
また、請求人は、上記ロの(ニ)のAのとおり、平成30年12月31日において、日本国内において、上記不動産のほか、複数の金融機関に預貯金を有するとともに、自らが代表取締役を務める複数の日本国内に所在する株式会社の株式を保有しており、これらの金融資産の価額の合計額は、約4億2,000万円であったと認められる。他方、請求人は、上記ロの(ニ)のBのとおり、■■■に所在する■■■■■の発行済株式を9,999株保有しており、その価額は、平成30年12月31日において、14億5,000万円以上であったと認められる。請求人の資産の状況については、上記ロの(ヘ)のとおり、平成29年中においてもおおむね変わりがなかったのであるから、請求人は、平成30年を通じて、■■■において多額の金融資産を有し、その合計額は日本国内に所在する金融資産の合計額よりも多かったといえる。
しかしながら、有価証券や預貯金等の金融資産は、不動産とは異なり、その所在場所により使用や管理が不能になる性質のものではないから、その所在場所や多寡のみを理由に、生活の本拠を判断することができるわけではない。
(ヘ) 生活に関わる各種届出状況等
上記ロの(ホ)のAのとおり、平成30年における請求人の住民票上の住所は日本国内であり、請求人は、同Bのとおり、日本国内の健康保険組合に住民票上の住所を住所地として加入し、日本の健康保険の被保険者たる資格を有していた上、同Cのとおり、本件国内滞在先を住所地として、クレジットカードの発行を申し込んでいた。このような各種届出状況は、請求人が日本国内に住所を有するとの認識を有していたことを示すものである。
(ト) 小括
以上の諸事情を総合勘案すると、上記ロの(ロ)のとおり、請求人が、平成30年中に、■■■の在留資格等を有していたことや、上記ロの(ロ)のとおり、本件■■■滞在先に一定の期間、滞在していたことを考慮しても、客観的にみて請求人の平成30年中の生活の本拠たる実体を具備していたのは、本件■■■滞在先ではなく、本件国内滞在先であったと認めるのが相当である。
したがって、平成30年において、請求人の住所は本件国内滞在先であるというべきであり、請求人は、日本国内に住所を有する個人であるから、所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当する。
ニ 請求人の主張について
(イ) 滞在日数について
請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のイのとおり、生活の本拠の判断については、単なる物理的な滞在日数は関係がなく、日本の大手企業との商取引に関する面談や、中国の現地工場の撤退のための事務打合せ等を行う必要があったことから、日本国内での滞在日数が増加した旨主張する。
しかしながら、ある国での滞在日数は、その地での全生活に関わる諸事情が日数として具現したものであり、物理的な滞在日数が生活の本拠の判断に関係がないとは到底いえず、上記イで述べたとおり、国内外における滞在日数は、客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かを判断する際の一つの事情となる。そして、上記ハの(ハ)のとおり、請求人が主張する業務の多くの部分が、実際に日本国内で行われていたという事実は、むしろ、日本国内に生活の本拠を有することを基礎付けるものである。
したがって、請求人の主張には理由がない。
(ロ) 生活場所及び同所での生活状況について
請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のロのとおり、本件国内滞在先は、■■■■■の社員であれば誰でも使用できる社宅であり、請求人が本件国内滞在先の本件水道光熱費等を支払っていたことをもって、請求人が本件国内滞在先に居住していたことが証明されるものではない旨主張する。
しかしながら、上記ロの(イ)のAのとおり、本件国内滞在先に係わる賃貸借契約の賃借人は請求人個人であり、その賃料も請求人自らが負担していたところ、この事実は、本件国内滞在先が■■■■■の社員が共同使用する社宅であるという請求人の主張と整合しない。
また、請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によっても、請求人以外の■■■■■の社員が同社の業務の関係で本件国内滞在先を使用していたとは認められず、請求人の主張には理由がない。
(ハ) 職業並びに業務の内容及び従事状況について
A 請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のニのとおり、自らが株式を保有し、事業規模が大きい本件各外国法人の企業経営に従事し、これによって、本件各外国法人から年間約1,000万円の役員報酬を得ており、所得税基本通達3-3も踏まえれば、所得税法施行令第15条第1項第1号に規定する「国外において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する」者に該当するので、非居住者と推定される旨主張する。
しかしながら、一般に、法人の役員は、勤務時間及び勤務場所に拘束される一般の従業員とは異なり、必ずしも法人の所在地等の特定の場所に常時滞在していなければ自らの職務を遂行できないというものではなく、現に、上記ハの(イ)及び(ハ)のとおり、請求人の業務は、平成30年中に年間の6割を超える期間、日本国内において遂行されていたものと認められ、請求人は、「国外において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する」者に該当するとはいえないから、所得税基本通達3-3の考え方を前提としたとしても、上記判断は左右されない。
したがって、請求人の主張には理由がない。
B また、請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のニのとおり、本件各国内法人は、全て事業規模が小さい零細企業であり、請求人は、本件各国内法人の経営にほとんど関与していない旨、■■■■■については本件弟が、■■■■■については請求人の友人が経営に従事しており、■■■■■は休業状態、■■■■■は休眠中である旨主張する。
しかしながら、ある者の生活の本拠がどの国にあるかは、その者がいずれの国の企業の業務を行っていたかによって直ちに判断されるものではなく、実際にいずれの国で業務を行っていたのかが重要である。そして、上記ハのとおり、請求人は、平成30年中において、6割を超える日数を日本国内に滞在して業務を行っていたのであるから、本件各国内法人の事業規模や、請求人の本件各国内法人の経営への関与が限定的であったことをもって、請求人の生活の本拠が日本国外にあったということはできず、上記ハの(ト)の判断を左右するものではない。
したがって、請求人の主張には理由がない。
(ニ) ■■■の在留資格等について
請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のホのとおり、平成8年9月及び平成18年2月4日に■■■における永住許可証明書である「■■■■■■■■■■」の交付を受け、■■■■■■■から日本における非居住者であると認定され、その旨を示す在留証明書を公文書により受け取っていることや、■■■■■の高等裁判所から刑事裁判の陪審員に選定されていることなどを理由に、日本における居住者に該当しない旨主張する。
しかしながら、上記ロの(ロ)のとおり、■■■に永住する許可を受けて■■■の在留資格を有していることは、請求人が本件■■■滞在先を生活の本拠とすることが可能であることを示すにとどまり、また、請求人が■■■■■■■から在留証明書の交付を受けていることは、請求人が本件■■■滞在先に在留していることを証明するものであるにすぎず、日本における非居住者であることを示すものではないから、上記の請求人の主張する事実は、上記ハの(ト)の判断を左右するものではない。
したがって、請求人の主張には理由がない。
(ホ) 資産の所在について
請求人は、上記3の(1)の「請求人」欄のヘのとおり、日本国外において、■■■■■■■■■■の株式を保有しており、日本国外で保有する資産額は日本国内における資産額を大きく上回っている旨主張する。
しかしながら、上記ハの(ホ)のとおり、金融資産の所在場所や多寡のみを理由に、生活の本拠を判断することができるわけではないから、上記ハの(ト)の判断を左右するものではない。
したがって、請求人の主張には理由がない。
(2) 争点2(請求人の平成30年分の所得税等の額の計算上、本件適用除外規定が適用されるか。)について
イ 認定事実
原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) ■■■■■の本店は、設立以降、■■■に所在している。
(ロ) ■■■■■の平成29年12月期の事業年度の主たる事業は、株式の保有であった。
(ハ) ■■■■■の平成29年12月期の事業年度の収入金額は、■■■■■■■■からの配当収入が1,000,000米ドル、銀行の預金利息が9米ドル、所得金額は■■■■■■■■であった。
ロ 検討
(イ) 本件適用除外規定の適用について
A ■■■■■が措置法第40条の4第3項に規定する「株式等の保有を主たる事業とする特定外国子会社等」に該当すること
(A) 請求人は、上記(1)のロの(ヘ)の事実からすれば、平成29年12月31日において、日本の居住者に該当すると認められるところ、上記1の(3)のニのとおり、■■■■■の発行済株式総数の99.99パーセント(10,000分の9,999)を請求人が、0.01パーセント(10,000分の1)を本件弟がそれぞれ保有しており、さらには、■■■■■が■■■■■の発行済株式の全部を保有しているのであるから、■■■■■の発行済株式のうち、居住者の保有割合は、措置法第40条の4第2項第1号に規定する100分の50を超えることとなり、■■■■■は、措置法第40条の4第1項の外国関係会社に該当する。
(B) ■■■■■は、別表4及び別表5のとおり、平成29年12月期の租税負担割合が■■■■■であり、措置法施行令第25条の19第1項第2号に規定する100分の20未満となることから、措置法第40条の4第1項に規定する特定外国子会社等に該当する。
(C) 上記イの(ロ)のとおり、■■■■■の平成29年12月期の事業年度の主たる事業は、株式の保有であったから、■■■■■は、措置法第40条の4第3項に規定する「株式等の保有を主たる事業とする特定外国子会社等」に該当する。
したがって、本件において本件適用除外規定が適用されるには、■■■■■が措置法施行令第25条の22第4項に規定する統括会社に該当する必要があるため、以下、検討する。
B ■■■■■の統括会社該当性
(A) 請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のイのとおり、法人税法施行令第4条第1項及び措置法施行令第25条の21第8項第1号を指摘して、■■■■■は、請求人及び請求人と特殊の関係にある個人である本件弟が株主となっているから、「一の居住者」によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている特定外国子会社等という統括会社の要件を満たす旨主張する。
しかしながら、統括会社に該当するには、措置法施行令第25条の22第4項の要件を満たすことが必要となるところ、■■■■■は、上記1の(3)のニの(イ)及び(ロ)のとおり、その発行済株式を請求人及び本件弟の2名によって■■■■■を通じて間接保有されている。
そうすると、■■■■■の発行済株式の全部が「一の居住者」によって保有されているとはいえないから、■■■■■は、統括会社に該当するための上記要件を満たさない。
請求人の上記主張は、措置法施行令第25条の22第4項に規定する「一の居住者」に関する解釈について、同項とは関係のない、同族会社の意義に関わる同族関係者の範囲に係る規定(法人税法施行令第4条第1項)及び同族株主グループの意義に係る規定(措置法施行令第25条の21第8項第1号)を根拠とする独自の見解に基づくものであり、採用することができない。
(B) 請求人は、上記3の(2)の「請求人」欄のイのとおり、■■■■■及び■■■■■は、その所在地国において事業を行うに必要と認められる従事者を有しているため、それぞれ被統括会社に該当し、■■■■■及び■■■■■は、■■■■■、■■■■■及び■■■■■に対し、統括業務を行っていることなどから、措置法施行令第25条の22第4項第1号に規定する「複数の被統括会社…に対して統括業務を行っていること」という統括会社の要件を満たす旨主張する。
しかしながら、本件適用除外規定が適用される統括会社に該当するためには、措置法施行令第25条の22第4項第1号のとおり、特定外国子会社等で「複数の被統括会社…に対して統括業務を行っている」ことが要件となり、被統括会社に該当するためには、同条第2項のとおり、当該法人の発行済株式等のうちに当該法人に対して統括業務を行う特定外国子会社等によって保有される株式等の数又は金額の占める割合が100分の25以上でなければならないものとされている。そして、上記1の(3)のニの(ハ)のとおり、■■■■■についてはその全株式を■■■■■が保有しているものの、同(ロ)のとおり、■■■■■については、その全株式を■■■■■が保有しており、■■■■■はその株式を保有していないから、■■■■■は、■■■■■の被統括会社に該当しない。
(C) 以上からすれば、■■■■■は、統括会社に該当しない。
(ロ) 小括
上記(イ)のBのとおり、■■■■■は統括会社に該当しないから、上記3の(2)の「原処分庁」欄のロ及び同「請求人」欄のロの適用除外記載書面を添付した確定申告書の提出の有無にかかわらず、請求人の平成30年分の所得税等の額の計算上、本件適用除外規定を適用することはできない。
(3) 争点3(■■■■■の適用対象金額の計算上、同社が■■■■■から受領した配当額を控除対象配当等の額として控除すべきか。)について
イ 法令解釈
(イ) 外国子会社合算税制は、いわゆる国際的な租税回避に対処し、租税負担の実質的な公平を図ることを目的とする制度であるところ、措置法第40条の4第1項は、同項各号に掲げる居住者に係る外国関係会社が同項所定の特定外国子会社等に該当する場合には、当該特定外国子会社等に係る課税対象金額について、各事業年度終了の日の翌日から2か月を経過する日の属する年分のその者の雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入する旨規定しており、措置法施行令第25条の19第1項第2号は、その各事業年度の所得に対する租税負担割合が、当該所得の金額の100分の20未満である外国関係会社は、特定外国子会社等に該当する旨規定している。
そして、措置法施行令第25条の19第2項第1号は、外国関係会社が特定外国子会社等に該当するか否かを判定する際に用いる同条第1項第2号の「所得の金額」(分母)は、「当該外国関係会社の当該各事業年度の決算に基づく所得の金額」につき、その本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金額に当該所得の金額に係る同条第2項第1号所定の各金額を加算又は控除して計算する旨規定している。
このように、措置法施行令第25条の19第1項第2号及び同条第2項第1号が「当該外国関係会社の当該各事業年度の決算に基づく所得の金額」について所定の計算をすることとしているのは、外国関係会社の本店所在地国と日本との間で、会計制度や法人所得税に係る税制に相違があり、日本と同様の要件を厳格に適用することが困難であるにしても、法人である以上は利害関係者に対して財政状態及び経営成績を明らかにするために決算が行われることから、その趣旨を踏まえつつ、納税者による恣意的な「所得の金額」の計算を抑制すべく、外国関係会社がその本店所在地国における会計制度に従って行った決算に基づく所得の金額を基礎とすることが原則であることを規定したものであると解される。
(ロ) 「決算」とは財務諸表を作成する手続をいうところ、財務諸表の作成は利害関係者に対して法人の財政状態及び経営成績を明らかにさせることを目的として定められた会計制度に従って行われるものであるから、外国関係会社がその本店所在地国における会計制度に従って決算を行っている場合には、当該決算が措置法施行令第25条の19第2項第1号柱書きに規定する「当該外国関係会社の当該各事業年度の決算」に当たると認めることができる。
ロ 認定事実
請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) ■■■■■は、平成29年12月期から、従前の3月決算から12月決算に変更している。
(ロ) ■■■■■の平成29年12月期のFinancial statements and Independent Auditors’Report(以下「平成29年12月期レポート」という。)には、平成29年12月期の法人所得税について、別表6のように記載されている。
平成29年12月期レポートは、■■■■■からの依頼を受けた会計事務所により作成されたものであり、その内容が正しいことを証明する旨の記載とともに、ベトナムの会計士による署名がある。
また、平成29年12月期レポートには、平成30年3月26日、■■■■■の取締役会からその内容が真正であることの承認を受けた旨記載されており、取締役を代表して■■■■■の代表取締役である■■■■■(■■■■■。以下「■■■■■」という。)の署名及び押印がある。
(ハ) ■■■■■の平成30年12月期のFinancial statements and Independent Auditors’Report(以下「平成30年12月期レポート」という。)には、平成29年12月期の法人所得税について、別表2のように記載されているが、「for comparison only(平成30年12月期との比較のためだけに作成)」及び「Unaudited(監査未済)」との記述があり、ベトナムの会計士による署名はない。
平成30年12月期レポートにも、平成31年3月26日において、■■■■■からその内容が真正であることの承認を受けた旨の記載はあるが、取締役会を代表する代表取締役の署名及び押印はない。
なお、上記3の(3)の「請求人」欄において請求人が主張する分母及び分子は、平成30年12月期レポートに記載された金額である。
ハ 検討
(イ) 分母について
A 請求人の平成30年分の所得税等の額の計算において問題になるのは、■■■■■が平成29年12月期において特定外国子会社等に該当するか否かであり、具体的には、平成29年12月期における租税負担割合が100分の20未満であるか否かである。
そこで検討するに、■■■■■は、上記ロの(ロ)のとおり、平成29年12月期レポートの作成を会計事務所に依頼し、ベトナムの会計士からその内容が正しい旨の証明を受けており、■■■■■からその内容が真正である旨の承認を受けている。これらの事情からすれば、平成29年12月期レポートについては、決算に係る資料として、その本店所在地国であるベトナムにおける会計制度に従って作成されたものであるといえ、これに反する事情は認められない。
したがって、平成29年12月期レポートは、措置法施行令第25条の19第2項第1号柱書きに規定する「当該外国関係会社の当該各事業年度の決算」に係る資料であり、「当該各事業年度の決算に基づく所得の金額」は、当該レポートの損益計算書に記載された税引前会計利益(Accounting profit before tax)の金額■■■■■(別表6の①「税引前会計利益」欄の金額)であると認められる。
B そうすると、措置法施行令第25条の19第2項第1号柱書きに規定する「本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金額」は、平成29年12月期レポートに記載された、当期課税所得見積額(Estimated current taxable income)■■■■■(別表6の⑥「当期課税所得見積額」欄の金額)となる。
なお、平成29年12月期レポートには、措置法施行令第25条の19第2項第1号イからヘまでに定める金額に係る項目はなく、その「本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金額」に加算又は控除する金額はない。
したがって、分母は、■■■■■となる。
(ロ) 分子について
■■■■■の「本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金額」は、上記(イ)のBのとおり、■■■■■であることから、これにベトナムにおける法人税率20パーセント(別表6の⑦「法人税率」欄の率)を乗じて計算した金額■■■■■(別表6の⑧「当期法人所得税費用」欄の金額)が、措置法施行令第25条の19第2項第2号イの「当該外国関係会社の当該各事業年度の決算に基づき所得の金額につき、その本店所在地国…において課される外国法人税の額」となる。
なお、■■■■■には、措置法施行令第25条の19第2項第2号イの「当該外国関係会社の当該各事業年度の決算に基づき所得の金額につき、その…本店所在地国以外の国若しくは地域において課される外国法人税の額」に該当するもの及び同号ロに規定する金額に該当するものはない。
したがって、分子は、■■■■■となる。
(ハ) 租税負担割合について
租税負担割合は、措置法施行令第25条の19第1項第2号により、上記(ロ)の分子■■■■■を、上記(イ)のBの分母■■■■■で除して計算した割合である20パーセントであるから、平成29年12月期において、「所得に対して課される租税の額が当該所得の金額の100分の20未満である」とはいえない。
(ニ) 小括
以上からすれば、■■■■■は、平成29年12月期において特定外国子会社等に該当しないため、■■■■■が■■■■■から受領した配当額は、措置法施行令第25条の20第3項第1号及び第2号に規定する「他の特定外国子会社等から受ける配当等の額」に当たらず、同項に規定する控除対象配当等の額に該当しない。
したがって、■■■■■の適用対象金額の計算上、平成29年12月期において、■■■■■が■■■■■から受領した配当額を、控除対象配当等の額として、基準所得金額から控除することはできない。
(ホ) 請求人の主張について
請求人は、上記3の(3)の「請求人」欄のとおり、■■■■■の平成29年12月期における租税負担割合の計算上、分母は■■■■■(別表2の①「税引前会計利益」欄の金額)、分子は■■■■■(別表2の⑧「当期法人所得税費用」欄の金額)、租税負担割合は約18.5パーセントとなり、「所得に対して課される租税の額が当該所得の金額の100分の20未満である」ことから、■■■■■は、措置法第40条の4第1項及び措置法施行令第25条の19第1項第2号に規定する特定外国子会社等に該当し、■■■■■の適用対象金額の計算上、同社が■■■■■から受領した配当額を、控除対象配当等の額として控除すべきである旨主張する。
しかしながら、上記イの(ロ)のとおり、外国関係会社がその本店所在地国における会計制度に従って決算を行っている場合には、当該決算が措置法施行令第25条の19第2項第1号柱書きに規定する「当該外国関係会社の当該各事業年度の決算」に当たると解される。
そして、請求人の主張する分母及び分子は、上記ロの(ハ)のとおり、平成30年12月期レポートに記載された金額であるところ、当該レポートには、平成29年12月期の各金額に関して、「for comparison only(平成30年12月期との比較のためだけに作成)」及び「Unaudited(監査未済)」と記載されており、ベトナムの会計士、■■■■■の署名及び押印はないのであるから、当該レポートは、ベトナムの会計制度に従った決算に係るものとは認められず、請求人が主張する分母及び分子を基礎として、租税負担割合を計算することは相当ではない。
したがって、請求人の主張には理由がない。
(4) 原処分の適法性について
イ 本件決定処分の適法性について
(イ) 請求人は、上記(1)のハの(ト)のとおり、平成30年中において日本の居住者に該当するとともに、上記(2)のロの(ロ)のとおり、請求人の平成30年分の所得税等の額の計算上、本件適用除外規定は適用されない。
(ロ) ■■■■■は、上記(3)のハの(ニ)のとおり、措置法第40条の4第1項及び措置法施行令第25条の19第1項第2号に規定する特定外国子会社等に該当せず、■■■■■の適用対象金額の計算上、■■■■■から受領した配当額は控除対象配当等の額として控除することはできない。
(ハ) 以上に基づき算出した請求人の平成30年分の所得税等の納付すべき税額は、別表1の「所得税等の納付すべき税額」欄の金額と同額であると認められ、本件決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
したがって、本件決定処分は適法である。
ロ 本件賦課決定処分の適法性について
(イ) 上記イのとおり、本件決定処分は適法であり、本件決定処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件決定処分前の税額の計算の基礎とされなかったことについて、通則法第66条第1項に規定する正当な理由があるとは認められない。
なお、請求人は、令和2年2月28日付で、平成26年分、平成27年分、平成28年分及び平成29年分の所得税等について、無申告加算税を課されており、本件決定処分があった日から起算して5年前の日までの間に、その決定に係る国税の属する税目について、無申告加算税が課されたことがあると認められる(当審判所の調査の結果)ことから、通則法第66条第5項の規定に基づき計算した金額を無申告加算税の額に加算することとなる。
(ロ) 請求人は、別表1のとおり、平成30年分の総所得金額が2,000万円を超えており、平成30年12月31日現在において、その価額の合計額が3億円以上の財産を有していたと認められることから、国税通則法第6条の2第1項本文に規定する財産債務調書の提出義務があったにもかかわらず、法定提出期限内に提出しなかったと認められる。
(ハ) 請求人は、上記(1)のロの(ニ)のBのとおり、平成30年12月31日現在においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有していたと認められるから、国税通則法第5条第1項本文に規定する国外財産調書の提出義務があったにもかかわらず、法定提出期限内に提出しなかったと認められる。
(ニ) 以上からすれば、本件決定処分に係る無申告加算税の金額につき、通則法第66条第1項、第2項及び第5項並びに国税通則法第6条第2項及び同法第6条の3第2項の規定に基づいて計算すると、別表1の「無申告加算税の額」欄の金額と同額であると認められ、本件賦課決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
したがって、本件賦課決定処分は適法である。
5 結論
よって、審査請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり裁決する。
別表1~7 (省略)
別紙 関係法令等(省略)
