税務調査の過程で、調査官から重加算税の賦課を検討すると言われたときにすべきことは何か?元国税調査官である税理士が考えてみました。
大事なのは専門家に相談すること
結論からいうと、専門家(税理士・弁護士)に相談することです。理由は2つあります。
誤った課税がされていることが少なくないこと
国税不服審判所のHPに、「裁決要旨検索システム」というものがあります。
このシステムでは、平成8年7月1日から令和3年9月30日の間に出された裁決に係る要旨が検索できるのですが、重加算税を争点とする事件を検索すると1,525件あり、そのうち処分の「全部取消し」と「一部取消し」になった件数は566件検索できました。ここから、重加算税の取消率は37.1%(566/1,525×100)と計算できるのですが、審査請求における平均的な取消率はおよそ10%程度と言われておりますので、他の争点の事件よりも約3.7倍も取り消されていることになります。
審査請求において重加算税が取り消されている割合が多いということは、裏返せば処分の段階で誤った課税がされているということが言えるかと思います。重加算税がかけられると、税額は、新たに納める税額×35%(過少申告加算税に代えて課される場合)、その期間は最大7年間も遡り、延滞税も約9%程度の利率と大きな経済的負担となりますが、それにも関わらず、課税の判断が適切にされていないこともあると考えるべきです。
隠ぺい・仮装の判断が難しいこと
重加算税は、事実を隠ぺい・仮装し、その隠ぺい・仮装に基づいて申告書を作成し税務署へ提出した場合に課されます(当初申告をしているケース)。重加算税の賦課が争点となる場合は「隠ぺい・仮装」に該当するか否かを検討することになりますが、そのためには法令はもとより判例や裁決例、課税庁が発遣している事務運営指針なども踏まえて、事実認定や法的評価が適切であるのか検討する必要があるため、一般の納税者にとってはかなりハードルが高いです。
課税される前に早めに相談すべき
重加算税が課されると、それを取り消すためには代理人への報酬といったコストが発生します。その他に、審査請求であれば1年程度、訴訟までいけば数年単位で解決するのに時間がかかります。課税の前段階であれば、調査官との交渉によって、課税しない方向にまとめることも不可能ではありません。重加算税がかされそうになったら、早めに専門家に相談するべきです。