国税局に情報公開請求をし、表題の判決書を入手してみました。
事案の概要
原告は、本件各事業年度に係る法人税等の確定申告において、■■■■■■■■■に合併した■■■■■■■■■■の欠損金額を平成27年12月事業年度の欠損金額に合算し、■■■■■■■■■に合併した■■■■■■■■■■の欠損金額を平成28年12月事業年度の欠損金額に合算して納付すべき税額等を申告したところ、税務署長は、組織再編成に係る行為又は計算の否認規定である法132条の2を適用し、上記各合併に係る欠損金額は生じなかったものとして所得金額を計算し、本件各事業年度の法人税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
本件は、原告が、上記の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分のうち、その後の減額再更正処分により一部取り消された部分を除く各処分の取消しを求める事案である。
基本情報
・税目:法人税
・処分行政庁:日本橋税務署長
・課税年度:平成27年12月期~平成28年12月期
・提訴裁判所:東京地方裁判所
・提訴年月日:令和5年5月19日
・判決日:令和8年6月18日
・結果:一部認容
争点
・本件各否認の適法性
・引き直し不検討等の適法性
・税負担減少の不発生を考慮しないことの適法性
判決書データ
判決書テキスト
※以下は生成AIでテキスト化したものです。
主 文
1 日本橋税務署長が令和元年9月30日付けで原告に対してした平成27年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税の更正処分(ただし、令和5年10月30日付けの減額再更正処分により一部取り消された後のもの)のうち、所得金額が18億8060万0255円、納付すべき税額8億3418万3000円を超える部分及び同法人税に係る過少申告加算税の賦課処分決定(ただし、令和5年10月30日付けの変更決定処分により一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。
2 日本橋税務署長が令和元年9月30日付けで原告に対してした平成27年1月1日から同年12月31日までの事業年度の地方法人税の更正処分(ただし、令和5年10月30日付けの減額再更正処分により一部取り消された後のもの)のうち、課税標準法人税額が9億4629万1000円、納付すべき税額4163万6800円を超える部分及び同地方法人税に係る過少申告加算税の賦課処分決定(ただし、同日付けの変更決定処分により一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。
3 日本橋税務署長が令和元年9月30日付けで原告に対してした平成28年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち、所得金額が97億4472万2956円、納付すべき税額27億8935万3400円を超える部分及び同法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分のうち税額238万2000円を超える部分をいずれも取り消す。
4 日本橋税務署長が令和元年9月30日付けで原告に対してした平成28年1月1日から同年12月31日までの事業年度の地方法人税の更正処分のうち、課税標準法人税額が29億4781万円、納付すべき税額1億2970万3500円を超える部分及び同地方法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分のうち税額10万4000円を超える部分をいずれも取り消す。
5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は、これを100分し、その3を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 主文第1項と同旨
2 主文第2項と同旨
3 日本橋税務署長が、令和元年9月30日付けで原告に対してした、原告の平成28年1月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち、所得金額が97億0540万9045円、納付すべき税額が27億6553万3200円を超える部分及び同法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。
4 日本橋税務署長が、令和元年9月30日付けで原告に対してした、原告の平成28年1月1日から同年12月31日までの事業年度の地方法人税の更正処分のうち、課税標準法人税額が29億2398万9000円、納付すべき税額が1億2865万5500円を超える部分及び同地方法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。
第2 事案の概要
原告は、平成27年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「平成27年12月事業年度」という。)及び平成28年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「平成28年12月事業年度」といい、平成27年12月事業年度及び平成28年12月事業年度を併せて「本件各事業年度」という。)に係る法人税及び地方法人税(以下、法人税を「法」といい、法人税及び地方法人税を併せて「法人税等」という。)の確定申告において、■■■■■■■■■に合併した■■■■■■■■■■(以下「■■■■」という。)の欠損金額を平成27年12月事業年度の欠損金額に合算し、■■■■■■■■■に合併した■■■■■■■■■■(以下「■■■■■■」といい、■■■■及び■■■■■■を併せて「被合併各社」という。)の欠損金額を平成28年12月事業年度の欠損金額に合算して納付すべき税額等を申告したところ、日本橋税務署長は、組織再編成に係る行為又は計算の否認規定である法132条の2を適用し、上記各合併に係る欠損金額は生じなかったものとして所得金額を計算し、本件各事業年度の法人税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
本件は、原告が、上記の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分のうち、その後の減額再更正処分により一部取り消された部分を除く各処分(以下「本件各更正処分等」という。)の取消しを求める事案である。
1 関係法令の定め
別紙1「関係法令の定め」に記載のとおりであり、その概要は、以下のとおりである(同別紙中で定義した略称等は、以下の本文においても同様に用いることがある。)。なお、平成27年12月事業年度の確定申告分については、平成27年法律第9号による改正前の法が適用され、平成28年12月事業年度の確定申告分については、平成29年法律第4号による改正前の法が適用される。
(1) 「適格合併」の定義等
ア 法2条12号の8は、同号イないしハのいずれかに該当する合併で被合併法人の株主等に合併法人又は合併親法人のうちいずれか一の法人の株式又は出資以外の資産が交付されないものを適格合併と定めており(以下、同号が定める適格合併を単に「適格合併」という。)、同号イは、被合併法人と合併法人との間にいずれか一方による完全支配関係(一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係又は一の者との間に上記同様の関係がある法人相互の関係をいう(法2条12号の7の6)。以下同じ。)その他の政令で定める関係がある場合の合併を、同号ロは、被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人による支配関係(一の者が法人の発行済株式若しくは出資の総数若しくは総額の100分の50を超える数若しくは金額の株式若しくは出資を直接又は間接に保有する関係として政令で定める関係又は一の者との間に上記同様の関係がある法人相互の関係をいう(法2条12号の7の5)。以下同じ。)その他の政令で定める関係がある場合の合併で、当該合併に係る被合併法人の当該合併の直前の従業者のうち、その総数のおおむね100分の80以上に相当する数の者が当該合併後に当該合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれること(同号ロ(1))、当該合併に係る被合併法人の当該合併前に行う主要な事業が当該合併後に当該合併に係る合併法人において引き続き営まれることが見込まれていること(同号ロ(2))のいずれの要件も満たすものを、同号ハは、その合併に係る被合併法人と合併法人とが共同で事業を行うための合併として政令で定めるものを掲げている。
イ 法人税法施行令(平成28年政令第146号による改正前のもの。以下「施行令」という。)4条の3第2項は、法2条12号の8イの政令で定める場合を1号又は2号に掲げるいずれかの関係とする旨規定し、施行令4条の3第2項2号は、合併前に当該合併に係る被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係(当該合併が被合併法人の株主等に合併法人の株式その他の資産が交付されない合併である場合にあっては、一の者が被合併法人及び合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係等がある場合における当該完全支配関係に限る。)があり、かつ、当該合併後に当該同一の者と当該合併に係る合併法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続すること(当該合併後に当該合併に係る合併法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該合併の時から当該適格合併の直前の時まで当該同一の者と当該合併法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続することとする。)が見込まれている場合における当該合併に係る被合併法人と合併法人との間の関係と規定している。
(2) 適格合併等における被合併法人の欠損金額の扱い
法57条2項は、内国法人を合併法人とする適格合併が行われた場合又は当該内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人で当該内国法人が発行済株式若しくは出資の全部若しくは一部を有するものの残余財産が確定した場合において、当該適格合併に係る被合併法人又は当該他の内国法人の当該適格合併の日前9年以内に開始し、又は当該残余財産の確定の日の翌日前9年以内に開始した各事業年度(前9年内事業年度)において生じた同項所定の未処理欠損金額があるときは、当該内国法人の当該適格合併の日の属する事業年度又は当該残余財産の確定の日の翌日の属する事業年度以降の各事業年度における法57条1項の適用については、当該前9年内事業年度において生じた未処理欠損金額は、それぞれ当該未処理欠損金額の生じた前9年内事業年度開始の日の属する当該内国法人の各事業年度(当該内国法人の合併等事業年度開始の日以後に開始した当該適格合併に係る被合併法人又は当該他の内国法人の当該前9年内事業年度において生じた未処理欠損金額にあっては、当該合併等事業年度の前事業年度)において生じた欠損金額とみなす旨を規定している。
(3) 組織再編成に係る行為又は計算の否認
法132条の2は、税務署長は、合併、分割、現物出資若しくは現物分配又は株式交換若しくは株式移転に係る同条1号ないし3号に掲げる法人の法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には、合併等により移転する資産及び負債の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加、法人税の額から控除する金額の増加、同条1号又は2号に掲げる法人の株式(出資を含む。同号について同じ。)の譲渡に係る利益の額の減少又は損失の額の増加、みなし配当金額の減少その他の事由により法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる旨規定し、同条1号は、合併等をした法人又は合併等により資産及び負債の移転を受けた法人を、同条2号は、合併等により交付された株式を発行した法人(同条1号に掲げる法人を除く。)を、同条3号は、同条1号及び2号に掲げる法人の株主等である法人(同条1号及び2号に掲げる法人を除く。)をそれぞれ掲げる。
2 前提事実(当事者間に争いがない事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実並びに当裁判所に顕著な事実)
(1) 原告及び関係会社
ア 原告(■■■■■■■■までの商号は「■■■■」)は、酒類、加工食品、農産食品、畜産食品、水産食品、冷蔵・冷凍食品、飲料、氷、製造たばこ、その他食料品の製造、販売及び輸出入業等を目的とする昭和22年設立の株式会社であり、法に基づく青色申告の承認を受けた法人である(甲5)。
原告は、その事業活動のため、複数の子会社と共に企業グループを形成していた。
イ ■■■■(■■■■■■■■までの商号は「■■■■■■■■」)は、農作物、水産物及び畜産物並びにその加工食品の販売業務等を目的とする昭和54年設立の株式会社である(甲6)。
■■■■は、遅くとも平成26年12月31日以降において、原告の100パーセント子会社(発行済み株式の全部を親会社によって保有される会社をいう。以下同じ。)であった(乙6、7・2枚目)。
ウ ■■■■■■は、酒類、加工食品、農産食品、畜産食品、水産食品、冷蔵・冷凍食品、飲料、氷、製造たばこ、その他食料品の製造、販売及び輸出入業を目的とする■■■■■■■■設立の株式会社である(甲7)。
■■■■■■は、その設立時から、原告の100パーセント子会社であった(乙8・2枚目、乙9)。
エ ■■■■■■■■(商号変更前の■■■■とは別の法人である。以下「■■」という。)は、酒類、加工食品、農産食品、畜産食品、水産食品、冷蔵・冷凍食品、飲料、氷、製造たばこ、その他食料品の製造、販売及び輸出入業等を目的とする■■■■■■■■設立の株式会社である(甲19)。
■■は、その設立時から、原告の100パーセント子会社であった(乙11・2枚目)。
(2) ■■■■の事業承継及び会社合併
ア ■■■■■■■■、原告の100パーセント子会社として■■が設立された。
イ ■■■■は、平成27年3月9日、■■■■を分割法人、■■を分割承継法人、効力発生日を■■■■■■とする吸収分割契約を締結し、■■■■■■、同契約に基づき、■■■■の唯一の事業である低温事業(冷蔵・冷凍食品の卸売事業をいう。以下同じ。)を■■に承継させた(以下、上記の吸収分割契約に基づき行われた吸収分割を「分割1」という。甲20)。
分割1においては、原告が■■■■及び■■の全株式を所有していることを理由に、対価の授受が行われなかった(甲20)。
ウ ■■■■は、■■■■■■■■、■■■■を吸収合併消滅会社、原告を吸収合併存続会社とする会社合併により原告に吸収合併され、解散した(以下、この合併を「合併1」という。)(甲25)。合併1は、法2条12号の8イが定める適格合併である。
■■■■は、同年11月30日の時点で、合計38億3078万6457円の未処理欠損金額(以下「未処理欠損金額1」という。)を有していた(乙7・3枚目)。
(3) ■■■■■■の事業承継及び会社合併
ア ■■■■は、平成28年9月20日、■■■■■■を分割法人、■■を分割承継法人、効力発生日を■■■■■■とする吸収分割契約を締結し、同日、同契約に基づき、■■■■■■の唯一の事業である低温事業を■■に承継させた(以下、上記の吸収分割契約に基づき行われた吸収分割を「分割2」といい、分割1及び分割2を併せて「本件各分割」という。甲32)。
分割2においては、原告が■■■■■■及び■■の全株式を所有していることを理由に、対価の授受が行われなかった(甲32)。
イ ■■■■は、■■■■■■、■■■■■■を吸収合併消滅会社、原告を吸収合併存続会社とする会社合併により原告に吸収合併され、解散した(以下、この合併を「合併2」といい、合併1と合併2を併せて「本件各合併」という。)(甲33)。合併2は、法2条12号の8イが定める適格合併である。
■■■■■■は、同年11月30日の時点で、合計11億7151万6723円の未処理欠損金額(以下「未処理欠損金額2」といい、未処理欠損金額1と未処理欠損金額2を併せて「本件各未処理欠損金額」という。)を有していた(乙8・3枚目)。
(4) 本件各更正処分等及び本件訴えの提起
ア 原告は、本件各事業年度の法人税等の確定申告において、本件各未処理欠損金額につき法57条2項が適用されるとの認識に基づき、法人税の課税標準となる所得金額を、平成27年12月事業年度分は未処理欠損金額1を原告の当期欠損金額としてその所得から控除した額、平成28年12月事業年度分は未処理欠損金額2を原告の当期欠損金額としてその所得から控除した額として申告し、地方法人税の課税標準法人税額を、上記所得金額によって計算される法人税額として申告した。
イ 日本橋税務署長は、令和元年9月30日、法132条の2に基づき、平成27年度12月事業年度分の確定申告については、欠損金の当期控除額のうち未処理欠損金額1及び■■■■■■■■■■の未処理欠損金額の一部が過大であるとして、これらの未処理欠損金額を所得金額に加える計算を前提とした法人税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をし、平成28年度12月事業年度分の確定申告については、欠損金の当期控除額のうち未処理欠損金額2が過大であるとして、これを所得金額に加える計算を前提とした法人税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした(以下、上記の各更正処分のうち、法人税に係る更正処分を「本件各法人税更正処分」、地方法人税に係る更正処分を「本件各地方法人税更正処分」、個々の更正処分を、事業年度及び税目に合わせて「平成27年12月期法人税更正処分」、「平成27年12月期地方法人税更正処分」などといい、上記の過少申告加算税の各賦課決定処分を「本件各賦課決定処分」、個々の過少申告加算税の賦課決定処分を、過少申告加算の対象となる事業年度及び税目に合わせて「平成27年12月期法人税賦課決定処分」などという。また、上記各処分における日本橋税務署長の判断のうち、未処理欠損金額1を欠損金の当期控除額に含めないこととした判断及び未処理欠損金額2を欠損金の当期控除額に含めないこととした判断を併せて「本件各否認」という。)(甲1~4)。
ウ 原告は、令和元年12月23日、上記イの各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分の審査請求をしたが、国税不服審判所長は、令和5年3月23日付けで、上記審査請求をいずれも棄却する裁決をした(甲36)。
エ 原告は、令和5年5月19日、本件訴えを提起し、上記イの各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分取消しを求めた。
オ 日本橋税務署長は、令和5年10月30日、上記イの各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分のうち、平成27年12月事業年度の確定申告に係る各処分について、■■■■■■■■■■の未処理欠損金額を欠損金の当期控除額に加え、これを所得金額から減ずる計算を前提とした法人税等及び過少申告加算税の減額更正処分をした(乙1~4)。
カ 原告は、本件訴えにおける請求のうち、平成27年度12月期の法人税、地方法人税及び過少申告加算税に係る各処分の取消しを求める部分の訴えを、上記第1・1、2のとおり変更した(原告は、同訴えの変更を請求の減縮として申し立てたが、同訴えの変更は、その内容上、請求の拡張であることが明らかである。)。
3 本件各更正処分等の根拠及び適法性に関する被告の主張
本件各更正処分等の根拠及び適法性に関する被告の主張は、後記5の該当部分のほか、別紙2のとおりである。原告は、争点に関する部分を除き、その計算の基礎となる金額及び計算方法を争っていない。
4 主な争点
原告は、本件各更正処分等のうち、本件各否認を前提とする部分が違法であることを主張するところ、その理由として、①日本橋税務署長が、本件各合併を、組織再編成に関する税制(以下「組織再編税制」という。)に係る各規定を租税回避の手段として濫用するものと認定して否認したのは違法であること、②税務署長は、本件各否認に基づく更正処分をするのであれば、本件各合併を正常な行為又は計算に引き直し、その結果に応じた所得金額等の更正をしなければならないところ、これをせず、かつ、引き直しの結果を理由に付記しなかったのは違法であること(以下、原告が違法と主張する税務署長の上記各不作為を「引き直し不検討等」という。)、③被合併各社が合併ではなく解散を選択していたとしても、100パーセント子会社の残余財産が確定した場合における法57条2項の適用により、本件各合併による不当な税負担の減少は生じないにもかかわらず、日本橋税務署長がこれを考慮しなかったのは違法であること(以下、原告が主張する上記の税負担の減少の不発生を「税負担減少の不発生」という。)を主張し、被告はこれらを争っている。
したがって、本件の主な争点は、次のとおりとなる。
(1) 本件各否認の適法性(争点1)
(2) 引き直し不検討等の適法性(争点2)
(3) 税負担減少の不発生を考慮しないことの適法性(争点3)
5 当事者の主張
(1) 争点1(本件各否認の適法性)について
(被告の主張)
ア 判断枠組みについて
法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、法人の行為又は計算が組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるものであることをいうと解すべきであり、その濫用の有無に当たっては、①当該法人の行為又は計算が、通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づいたり、実態とはかい離した形式を作出したりするなど、不自然なものであるかどうか、②税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか等の事情を考慮した上で、当該行為又は計算が、組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したものであって、組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるもの又は免れるものと認められるか否かという観点から判断するのが相当である(最高裁平成27年(行ヒ)第75号同28年2月29日第一小法廷判決・民集70巻2号242頁、最高裁平成27年(行ヒ)第177号同28年2月29日第二小法廷判決・民集70巻2号470頁各参照。以下、これらの判決を「平成28年最判」という。)。そして、同条の不当性要件については、上記考慮要素①及び②の判断も含め、組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的を踏まえて判断する必要があり、本件では法57条2項の趣旨及び目的等を考慮する必要がある。他方で、上記考慮要素①及び②を「私的経済取引の見地からの経済的合理性」の観点から考慮すべき事情に当たるか否かを判断するとした限定を行い、税法の趣旨及び目的、その実現のために組織再編税制に係る各規定が念頭に置いた標準的な形態を排除するものと解する根拠はないというべきである。
イ 法57条2項の趣旨及び目的等
法57条1項が定める欠損金の繰越控除の制度は、一の法人において、各事業年度の所得によって課税するという法人税の原則を貫くときに、複数の事業年度を通じてみると税負担が過重になる場合があることを勘案した制度であり、事業が複数の事業年度にわたって継続して行われることを前提としている。同条2項も、合併による事業の移転及び合併後の事業の継続(以下「従前事業継続」という。)を想定して、被合併法人が有する未処理欠損金額の合併法人への引継ぎを税法上の効果として例外的に認めるものであり、実態に合った課税の観点から、資産移転等に対する支配が継続している場合に、その譲渡損益の計上を繰り延べて従前の課税関係を維持することを意図した規定である。同条3項は、支配関係が生じる前に生じた被合併法人の欠損金額等を繰越控除の対象から除外する旨を定め、法57条の2は、休業中の法人を買収した場合における当該法人の欠損金額の繰越控除を一定の要件の下で否定しているが、これらの規定も、上記の基本的想定を前提としたものである。
以上の法57条2項を含む組織再編税制の趣旨及び目的は、法132条の2が制定された平成13年度税制改正の検討過程で確認され、施行令112条4項にも反映されており、法132条の2の解釈、適用においても考慮すべきである。
法2条12号の8イは、完全支配関係がある法人間の合併について、従前事業継続を適格合併の要件として定めていないが、これは、支配関係のある法人間の合併(同号ロ)及び共同事業を営むための合併(同号ハ)においては、合併する法人間に完全支配関係がある場合に比して、合併する法人間の経済的同一性・実質的一体性が希薄であり、従業者引継要件及び事業継続要件等を適格合併の要件として付加する必要があるのに対し、完全支配関係がある法人間の合併は、従前事業継続を当然の前提としており、事業継続要件を適格合併の要件として定める必要がないからである。法132条の2は、上記内容の適格合併への適用を前提としたものであり、形式的に適格合併の要件を満たす組織再編成を利用した租税回避行為を是正するための規定でもあるから、従前事業継続は、上記アにいう「組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的」として、同条の適用に当たり重視すべきであり、かつ、その限度で考慮するにとどまるから、法57条2項の書かれざる要件として新たに付加するものではない。なお、同項は、100パーセントグループ子会社の残余財産が確定した場合も同項の適用対象としているが、その定めは、未処理欠損金額と特定の資産との結びつきが希薄であることを理由とするものであり、適格合併に対する同項の適用とは前提を異にする。
ウ 本件各分割及び本件各合併が法57条2項の趣旨及び目的に反しており、被合併法人の経済実態を不自然に変更するものであること
本件各分割及び本件各合併から成る一連の組織再編成は、被合併各社の唯一の事業であった低温事業を■■に移管させ、未処理欠損金額を残すのみとなった被合併各社を原告が合併するというものであり、その実態は、被合併各社の事業を継続しない点で、法57条2項の趣旨及び目的(上記イ)に反するもの、未処理欠損金額を有する被合併各社を非事業体化させて原告に合併する点で、被合併各社の経済実態を不自然に変更するものであった。したがって、通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づくものであり、また、実態とはかい離した形式を作出するものといえるのであって、不自然なものであるといえる。
エ 税負担の減少以外に当該法人の行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在しないこと
原告は、グループ企業間における低温事業の事業再編及び組織再編を企図し、その検討を進めていたが、その検討過程では、■■■■■■の未処理欠損金額を利用した税負担の減少及びその手法が協議され、当初■■■■■■に低温事業を集約する方針とされていたものが、その後の検討で、■■■■■■の事業を新設会社である■■に吸収分割させ、清算を残すのみとなる■■■■■■を原告に吸収合併させるとの方針に転換された。また、組織再編成の方法や実施時期の検討においては、税目以外の理由が具体的に検討されておらず、本件各分割及び本件各合併の時期は、■■■■■■の繰越欠損金を余すところなく損金算入できる時期を意図して定められた。また、■■■■■■■■についても、同様に原告の組織再編成の検討においては、原告が■■■■■■の未処理欠損金額を活用することが繰り返し言及されていた一方で、組織再編の方法の選択や実施の時期の決定に当たり、税目的以外の理由が具体的に検討されていたことはうかがわれない。
欠損金だけを有する休眠会社を合併すること自体、租税回避以外の経済的合理性を欠くものであり、本件各合併は、専ら、被合併各社の未処理欠損金額を原告の税負担の減少に利用する目的で行われたものであった。
原告は、事業集約先の変更に組織再編上の理由があったことを主張する。しかし、大胆な投資判断をいう点は、そのような事情を考慮した形跡がなく、原告の資金で投資をする場合に、被合併各社の債務超過状態が支障となったとは考え難い。グループ外企業の事業買収の便宜をいう点も、そのような目的のために被合併各社の債務超過状態の解消が検討された形跡は証拠上見当たらず、取引上の信用をいう点も、原告の企業グループ自体が多大な信用力を有するため、事業集約先を変更する理由となるものではない。酒類販売免許取得の便宜をいう点も、事業集約後の■■が酒類販売免許の経営基礎要件(酒税法10条10号)を満たしていないことから、事業集約先変更の理由になっていたとはいえない。
オ 本件各否認が適法であること
上記アないしエにおいて述べたところによれば、本件各合併は、法57条2項の趣旨及び目的に反し、租税回避の意図をもって、同項の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けようとするものであり、法132条の2の「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たる。
原告は、法132条の2による否認の当否を、私的経済取引としての経済的合理性の見地から判断すべきである旨主張するが、平成28年最判の理解を誤ったものであり、正当でない。また、組織再編成において何らかの事業目的等を作出又は付加することは容易であり、法人の組織再編成の全てにおいて税負担の減少以外の事業目的等が全く存しない場合にのみ同条が適用されると解すると、同条が死文化することになるから、他の事業目的等の有無を全体的見地から考慮すべきとの主張は当たらない。
(原告の主張)
ア 合併の経緯
本件各合併は、概要以下の経緯で行われた。
(ア) 原告は、酒類・加工食品の卸売を主力事業とし、低温事業も以前から扱っていたが、同業他社と比較して遅れをとっていた。また、原告の低温事業の扱いが支社及び子会社を通じたものであったことから、その事業規模にはばらつきがあり、相互の連携も不十分であった。
そのため、原告は、平成17年に低温事業を強化対象の一つに位置付け、事業再編を行うこととした。
原告は、平成22年、社内に■■■■■■を設け、同年に定めた事業計画において、首都圏の低温事業を1社に集約する方針を定めた。平成24年1月には、首都圏の子会社の4社のうち3社と原告の■■■■の低温事業及び同業他社のフローズン事業が■■■■■■に集約され、同年10月には、残る子会社1社の低温事業も■■■■■■に集約された。
(イ) 原告の低温事業については、近畿、中国及び四国の西日本エリアでも、西中国エリアを除く地域の事業を1社に集約する方針となり、平成25年1月に、西中国エリアを除く西日本エリアの低温カテゴリー販社として■■■■■■■■が設立された。同年4月には、原告の■■■■の低温事業が■■■■■■に集約され、同年11月には、同業他社の市販用フローズン事業が■■■■■■に譲渡された。
(ウ) その後、全国展開する同業他社の事業買収が検討されたのを機に、低温事業の全国販社を立ち上げることが検討され、北海道及び九州を除く各エリアの低温事業を東日本エリアと西日本エリアの販社2社に集約する方針が決まった。この方針に基づき、東日本エリアのカテゴリー販社として■■が設立され、■■■■を含む東日本エリアの子会社4社と原告の■■■■の低温事業が■■に集約された。西日本エリアにおいても、上記方針に基づき、子会社4社の低温事業が■■■■■■に集約された。
合併1は、上記の事業移管後における■■■■を原告が合併したものであった。
(エ) 平成28年7月、低温事業における■■と■■■■■■の2社体制を見直すこととなり、同年12月1日、■■■■■■の事業が■■に移管された。
合併2は、この事業移管後の■■■■■■を原告が合併したものであった。
イ 本件各合併が不自然な行為ではないこと
本件各否認の対象は、本件各合併のみであると解されるところ、本件各合併は、グループ企業内の組織再編行為としてごく自然なものであり、その手順や方法が不自然であるとはいえない。合併1をもって事業譲渡後の■■■■の法人格を消滅させることとし、合併2をもって事業譲渡後の■■■■■■の法人格を消滅させることとしたのは、これらの会社が■■への事業譲渡でその存在意義を失ったからであり、グループ会社の合併(会社法471条4号)が、不要となった100パーセント子会社を消滅させる手法として広く利用されていたからである。なお、本件各分割は、本件各否認の対象となっておらず、これを否認の対象に含める被告の主張は不当であるが、この点を措いても、吸収分割による事業譲渡は、■■の経営基盤の安定を目的としたものであり、他の関連会社の組織再編成においても行われていたものであって、不自然ではない。
ウ 税負担の減少以外の事業目的等がないとはいえないこと
上記アの経緯によれば、本件各合併が、原告の企業グループにおける低温事業の組織再編成を目的として行われたことは明らかである。被告が税負担減少目的の証拠として引用する従業員の電子メールは、上記目的に沿う組織再編成の手法の検討過程で税務上の影響に言及したものにすぎず、税負担減少の手法を主題とするものではない。また、東日本エリアの事業集約に関し、■■■■■■への事業集約ではなく、新会社である■■への事業集約を選択したのは、大胆な投資判断、円滑なグループ外企業の事業買収の実現、取引上の信用及び酒類販売免許取得の観点から、財務状況の芳しくない■■■■■■ではなく新会社を受け皿とした方が好ましいと判断したからであり、原告の税務対策上都合が良いと判断したからではない。
エ 本件各否認が違法であること
以上によれば、本件各合併は、組織再編税制に係る各規定を租税回避の方法として濫用するものではなく、法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」には当たらない。
オ 被告の主張について
(ア) 法57条2項の解釈の誤り
法57条2項は、同項の適用の対象となる合併を適格合併と定め、適格合併を定義する法2条12号の8は、適格合併の要件を定めているが、同号が定める適格合併のうち、支配関係がある法人間の合併(同号ロ)については、「当該合併に係る被合併法人の当該合併前に営む主要な事業が当該合併後に当該合併に係る合併法人において引き続き営まれることが見込まれていること」が適格合併の要件として定められ(同号ロ(2))、共同で事業を営むための合併(同号ハ)についても、「合併に係る被合併法人の当該合併前に行う主要な事業が当該合併後に当該合併に係る合併法人(中略)において引き続き営まれることが見込まれていること」が適格合併の要件として定められているが(施行令4条の3第4項4号)、完全支配関係がある法人間の合併(法2条12号の8イ)については、従前事業継続を要件とする定めがない。
なお、欠損金は、法人の法人格そのものと結びついた租税属性であり、法57条1項においても、内国法人の事業の継続は同項適用の要件とされていない。また、被告が指摘する同条3項は、租税回避行為防止の趣旨から、同条2項が適格合併等について未処理欠損金額の引継ぎを認めていることを前提に当該引継ぎを制限しているにすぎず、同条3項に定める場合が同条2項の趣旨に反することを理由に未処理欠損金額の引継ぎを制限するものではなく、法57条の2は、同条の定める欠損等法人を支配下に置き、資金等を注入して黒字法人とし、欠損金の繰越控除をさせることによる租税回避行為に対処するための規定であり、いずれもその趣旨及び内容は、法57条2項の趣旨及び目的の解釈とは無関係である。
以上の関係規定の内容によれば、完全支配関係がある法人間の合併に係る法57条2項の適用について、従前事業継続が当然の前提となるものではなく、従前事業継続を法132条の2に基づく否認の理由として考慮することは許されない。従前事業継続がないことを同条の適用において考慮することは、法に定めのない事実を課税上有利な規定の適用要件として事実上付加するものであり、租税法律主義(課税要件明確主義)にも反する。
なお、政府の平成13年度における企業の組織再編成を容易にするための関連法制の整備に関する検討においては、完全に一体と考えられる持分割合の極めて高い法人間で行う組織再編成については、組織再編成により移転した資産の譲渡損益の繰り延べ計上の要件を緩和する一方で、持株割合が100パーセントに満たない持分関係の法人間における組織再編成においては、それが企業グループ内の本来の組織再編成の在り方ではないとの前提に立ち、一定の条件のもとに事業移転に係る譲渡損益の繰り延べ計上を認めるとの方向性を示しており、適格合併に関する法の規定は、政府の上記検討結果を「実態に合った課税」としてそのまま反映したものである。平成22年度の税制改正では、法57条2項の改正により、100パーセントグループ内の子会社の残余財産が確定した場合における親会社の未処理欠損金額の引継ぎが認められることとなったが、上記場合についても、従前事業継続や被合併法人の資産の引継ぎは、同項に基づく欠損金額処理の要件とはされなかった。被告の主張は、以上の立法の経緯にもそぐわない。
(イ) 平成28年最判の解釈の誤り
被告が主張する行為又は計算の不自然性や事業目的等の不存在は、私的経済取引における経済的合理性の見地に立ち、当該行為又は計算が異常又は変則的な態様で行われたか否かから判断すべきものである。このような解釈は、同族会社の行為又は計算の否認について定める法132条1項についての通説的見解と整合的であり、経済的合理性のある私的経済取引を課税上不利に扱うべきでない点からも支持される。これに対し、被告の主張は、税法固有の観点から行為又は計算の不自然性を断ずるものであり、当を得ない。
また、行為又は計算の不自然性や事業目的等の不存在は、組織再編成の全体像を考慮して判断すべきであるところ、被告は、組織再編成の一局面にすぎない本件各分割及び本件各合併の内容を局所的、断片的に指摘するにとどまり、低温事業の再編自体に合理的な目的があったこと、本件各合併に至るまでの組織再編成が真摯な検討や交渉を経て行われてきたことを看過しており、適切でない。
組織再編成において、租税法律主義のもと、税負担の最小化のため望ましい取引手法を検討し、選択することは、現実の経済社会における経営判断として当然であり、このような検討を怠った場合は、取締役が会社法に基づく善管注意義務違反を問われることさえある。原告における本件各合併の選択も、このような通常かつ一般的な経営判断を逸脱するものではないところ、被告の主張は、この点を考慮しないばかりか、濫用的意図の根拠としている点でも、誤っている。
(2) 争点2(引き直し不検討等の適法性)について
(被告の主張)
組織再編成に係る租税回避を防止するという法132条の2の趣旨及び目的を達成するためには、税負担の不当な減少という効果を排除すれば足るから、同条に基づく否認に当たっては、否認の対象となる行為又は計算により不当に減少する税負担の部分を排除するために必要な限度で課税標準等の計算を行えば足りる。組織再編成の形態や方法は複雑かつ多様であり、多数の代替手段が存し得るものであるから、組織再編成における正常な行為又は計算なるものを想定して課税標準等を計算し直すことは、同条の要求するところではない。
本件各更正処分等においては、本件各未処理欠損金額を本件各事業年度において生じた欠損金額とみなさないものとして所得金額等を再計算した結果を示しており、その理由に違法となる瑕疵はない。更正の理由の付記(法130条2項)についても、更正に至る事実的、法律的理由の説明に欠けるところはなく、不服申立ての支障となるような不備はないから、違法との主張は当たらない。
(原告の主張)
法132条の2に基づき法人税の負担を不当に減少させる結果となる行為又は計算を否認する場合は、その行為又は計算を正常な行為に引き直した場合の課税標準を再計算し、当該行為又は計算により税負担が不当に減少したことを認定した上で、これに応じた税額等の更正をしなければならない。同条の「税務署長の認めるところにより」との文言は、上記の引き直しの権限を与える趣旨を示すものである。
しかし、日本橋税務署長は、本件各更正処分の理由において、上記の正常な行為に引き直した結果(当該正常な行為によれば、法57条2項が定める未処理欠損金額の引継ぎの要件が満たされないこと)を一切示しておらず、本件各合併において不当に減少した税負担の内容も示していないから、その判断は違法であり、更正通知書における更正の理由の付記(法130条2項)を怠った違法もある。
(3) 争点3(税負担減少の不発生を考慮しないことの適法性)について
(被告の主張)
法人税の負担を不当に減少させる結果となる行為又は計算は、本件各未処理欠損金額を原告に生じた欠損金額とみなすことに尽きるのであり、これらを原告の欠損金額として扱わないことが、上記の行為又は計算を正常な行為に引き直すことに他ならない。平成28年最判においても、原告の主張する引き直し計算をしない処分が適法なものとして維持されている。
(原告の主張)
法57条2項の税法上の効果を否定するためには、その行為又は計算が不自然であることや、税負担減少以外の事業目的等が存在しないことのみならず、当該行為又は計算を正常な行為に引き直した場合に、税負担減少の効果が生じないことが認められなければならない。
法57条2項は、適格合併の場合のみならず、100パーセント子会社の残余財産が確定した場合おいて、親会社がその未処理欠損金額を引き継ぐことも認めている。事業譲渡後の被合併各社が、その法人格消滅の「正常な行為」として会社解散を選択した場合であっても、本件各未処理欠損金額は原告に生じた欠損金額として扱われることとなるから、本件各合併により不当な税負担の減少が生じることはない。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
前提事実のほか、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1) 原告及びそのグループ各社の意思決定について
原告を中心として企業グループを形成する各社は、各社の権限を超える事項又は重要事項の意思決定の適正化等を目的とする意思決定規程として「意思決定に係る■■■■■■運用規程」を定めており、同規程では、「経営会議」(以下「経営会議」という。)を取締役会に次ぐ意思決定機関とすること(2条)、「出資、資本・業務提携、組織再編に関する基本方針並びに重要事項」を経営会議の審議対象事項とすること(3条1項及び別表)、経営会議の審議対象の事案が発生した場合は、受付窓口部署(原告においては経営企画部又は人事総務部)に議案書を提出して審議を依頼すること(6条1項)、議案書の提出を受けた受付窓口部署は、速やかに必要となる情報の収集分析又は主管部署との意見調整をした後、経営会議に付議すること(6条2項)を定める(乙14)。また、原告の取締役会規程は、経営会議の決定事項を報告事項として定める(乙13)。
(2) 低温事業再編の状況
ア 原告は、平成17年11月、「第8次長期経営計画」を定め、3兆円超の売上高を長期目標として掲げるとともに、目標達成のための強化ポイントの一つに「卸機能強化」を掲げ、その対象事業の一つに低温事業を掲げた。低温事業については、全国ネットワークの構築と事業規模の拡大が強化ポイントとして示され、具体策として、商号変更前の■■■■を強化して全国ネットワークを構築すること、未着手の地域でM&Aの相手となる卸業者を選定し、経営資源を集中投下すること、■■■■■■をエリア販社に統合し、「フルライン卸」とすること、原告社内に低温事業部を設置すること等が示された(甲8)。
イ その後原告に設置された■■■■■■は、平成22年5月に、「■■■■■■■■■■」を策定した。「■■■■■■■■■■」は、平成27年度の売上高4500億円、経常利益率0.5パーセントを目標に掲げ、M&Aによる商圏拡大とともに、首都圏における低温事業の集約化を主要施策の一つとして掲げるものであった(甲9)。平成22年11月に定められた原告の「第9次長期経営計画」においても、低温事業強化の方針が掲げられ、首都圏におけるカテゴリー販社(特定のカテゴリーに特化した販売組織をもつ企業形態をいう。以下同じ。)を軸とする全国ネットワーク構築の方針が示された(甲10)。
原告は、平成23年6月の経営会議において、原告の■■■■事業部と首都圏を商圏とする子会社4社(商号変更前の■■■■■■を含む。)の低温事業を統合することを承認し(甲11)、平成24年1月、■■■■以外の子会社3社の低温事業と同業他社の市販フローズン事業が■■■■■■に集約され、原告の■■■■事業部が扱う事業も、同年10月に■■■■■■に譲渡された(甲12)。
ウ 原告は、平成24年11月12日の経営会議において、首都圏における低温事業の再編に続く「次のステップ」として、平成25年1月を目処に西日本エリアの低温事業のカテゴリー販社となる新会社を設立し、支社等の低温事業及び西中国エリアを除く中四国エリアの低温事業を吸収分割すること等を審議し、これを承認した(甲13)。
平成25年1月、原告の100パーセント子会社として■■■■■■■■が設立され、同年4月に原告の■■■■の低温事業が、同年11月に同業他社の市販フローズン事業が、それぞれ■■■■■■に譲渡された(甲13~15)。
エ その後、原告において「■■■■■■」の設立が検討されたが、全国展開する同業他社の市販フローズン事業の買収が具体化したことを契機に、全国販社化(全国販社を設立して、低温事業を当該販社に統合することをいう。以下同じ。)が検討された(甲16)。
(3) 分割1及び合併1の検討の経過
ア 原告においては、外部環境の変化に伴う国内の加工食品及び酒類の卸売事業の業績悪化が経営課題として認識されるに至り、平成26年1月1日に、■■■■■■■■■■(以下「再構築プロジェクト」という。)が発足していたところ、同月14日の経営会議において、再構築プロジェクトの内容及び方向性が審議された。同日の審議においては、一つのエリアに原告の支社、関係会社及びカテゴリー販社が混在し、取引先から戦略が見えない等の指摘があったこと、本社、支社及び関係会社の役割・機能分担が不明確であり、機能の重複による調整業務の増大がみられること等が課題として示され(乙15・3、8枚目)、これを克服するため、支社及び関係会社を統合し、エリアカンパニー(一定範囲の地域の事業を統括する会社)とカテゴリーカンパニー(全国展開、拡大を急ぐ強化事業の販売会社)に統合すること(乙15・5・8枚目)を承認した(乙15)。また、同日の経営会議では、平成27年度のグループ組織のイメージとして、■■■■■■を低温事業のカテゴリーカンパニーとし、その商号を「■■■■■■■■■■■■」とする方向性が承認された(乙15・11枚目、乙16・1枚目)。
原告の■■■■■■■■■■■■■■■■■■(■■■■■■(上記(2)イ)の名称変更後の組織であり、平成27年1月に「■■■■■■■■■■」に名称が変更された。以下、これらの名称変更の前後を通じて「■■■■■■」という。)は、低温事業の全国化構想が承認されたことを受け、関東エリア(栃木、茨城及び埼玉の各県を中心とする地域を指す。以下同じ。)の子会社の低温事業を平成26年5月に■■■■■■に集約し、その余の地域の低温事業の統合も、他の事業のエリアカンパニー化の状況をみて時期及び方法を検討することを確認した(甲17)。原告の関東エリアの子会社が有する低温事業は、同年2月、■■■■■■に吸収分割された(甲18)。
イ 原告は、平成26年7月14日の経営会議において、東北、関信越、首都圏及び中部エリアの低温事業を「■■■■■■■■■■」(仮称)に集約すること、近畿及び中国エリアの低温事業を■■■■■■に集約すること等を内容とする再構築プロジェクトの実行計画書を承認した(乙17・1、7枚目)。
ウ 原告の経理財務部に所属していた■■■■は、平成26年8月21日、原告の経営企画部に所属していた■■■■(以下「■■」という。)に対し、「繰越欠損金の使い方について」と題する電子メールを送信し、要旨、低温事業会社を原告に合併させ、事業を再整理してから事業譲渡をする方法が「一番わかりやすい」と思うこと、■■■■■■の繰越欠損金額であれば、原告との1回の合併で解消できること、再構築プロジェクトの考え方に従い、低温事業会社を作って事業譲渡をした場合、新規の繰越欠損金額の解消が難しくなることを伝えた。■■は、同日、同電子メールに返信し、単純な事業譲渡は手間がかかりそうだと聞いていること、私案として、カテゴリーカンパニーとして新設する■■■■■■(仮称)に■■■■■■の主要事業を分割し、■■■■■■を持ち株会社にして清算するか、■■■■■■を原告に合併し、その後に原告から新設会社に事業分割をするとのイメージがあることを伝えた(乙18)。
原告の経営企画部及び■■■■■■の従業員は、同年12月8日、低温事業の再編対応に関する打合せを行い、平成27年度初頭に■■■■■■(仮称)が設立され、同年9月1日に■■■■■■ほか東北、中部及び東海地区の関係会社の低温事業が新会社に統合されること、低温事業を集約した後、■■■■■■を同年内に清算することにより、20億円強となる見込みの繰越欠損金額を原告において「使用可能」となることを確認した(乙19)。
エ ■■は、平成26年12月25日、低温事業統合の事業譲渡に関する■■■■の従業員の問合せに対し、■■■■■■を事業会社と持ち株会社に分割し、事業会社を新会社に吸収分割の方法で統合すること、持ち株会社の持ち株を原告に売却し、持ち株会社を清算することを想定していたことを伝えた(乙20)。上記従業員は、平成27年1月8日、東北地域の関係会社に対し、「1月26日の経営会議の件」と題する電子メールを送信し、「経営企画部と打合せを重ねてきた結果、税制対策の観点もあり、事前に新会社■■■■を設立し、9月1日のタイミングで■■■■■■、■■■■および中部エリアの低温事業を■■■■■■に統合後、年内に■■■■■■を清算するスキームに切り替えることとなり、9月1日の統合と新会社設立の件を同じ議案書で発議する方針に変更となりました」などと伝えた(乙21)。
また、原告の経営企画部の従業員である■■■■(以下「■■」という。)は、同年1月8日、低温事業の会社分割の手続を問い合わせた司法書士から「会社を設立してから吸収分割という手続ではなく、いきなり新設分割することも可能と思われますが、何か支障があるのでしょうか」と尋ねられたのに対し、「弊社と子会社の5社から一度に低温事業を分割し、また、分割会社の■■■■■■の繰越欠損金を親会社の■■に承継させる為、あまり手続を複雑化させたくないという理由がございます」と答え(乙22)、経営企画部の別の従業員は、同年2月5日、■■ほか原告の他の従業員にグループ各社の繰越欠損金額の集計表を送付した際、同集計表に、新会社の設立により■■■■■■の繰越欠損金額を解消できる見込みとの趣旨の付記をした(乙23)。
オ 原告に組織再編に係る助言等を行っていた■■■■■■■■■■■■(以下「■■■■」という。)の担当者は、平成27年4月9日、原告の経営企画部の従業員である■■■■(以下「■■」という。)に対し、■■■■が新会社の■■■■に全事業の会社分割をした後に清算すると、■■■■から■■■■への会社分割は非適格分割となること、原告が■■■■■■を適格合併するのであれば適格分割となることを伝えた(乙24)。■■は、同年8月10日、合併1の契約書案を送付した■■に対し、「■■■■■■は今年中に合併しないと節税メリットが一部取れなくなってしまうので、12/1合併で作成して下さい」、「実態としては合併時点で■■■■■■の従業員はいませんが(中略)表現としては、■■ではなく■■■■に移るという表現にしておけばよいと考えます」などと伝えた(乙25)。
カ 原告は、平成27年8月31日の経営会議において、再構築プロジェクトに係る議案を審議し、同年12月1日に■■■■■■と原告が合併することを承認した(乙26・1枚目)。同経営会議の報告資料のうち、個別課題の対応方針及び留意事項のうちの「グループ再編に伴う節税対応」の項目には、当初は■■■■■■を清算する予定であったが、■■■■■■から■■への会社分割を適格分割とするため、■■■■■■と原告を合併すること、原告に引き継ぐ繰越欠損金額が38億4000万円(概算額)となること、当該繰越欠損金額に実効税率36.5パーセントを乗じた額の節税効果があることが示され(乙26・9枚目)、適格合併及び適格分割のメリットを示す補足資料には、会社分割後の■■■■■■を清算した場合、■■に分割した事業に対する適格要件が否認される可能性があるとの指摘が■■■■からあったこと、上記否認を回避するため、■■■■■■の清算を原告への合併に変更したことが示されていた(乙26・97枚目)。
キ 原告は、平成27年9月14日の取締役会において、■■■■■■と原告の合併を承認した(乙27・2枚目)。
(4) 分割2及び合併2の検討の経過
ア ■■は、平成28年7月28日、■■■■の担当者に対し、■■■■■■と■■の統合の具体的な検討を始めたこと、■■■■■■の繰越欠損金額が7億4300万円、■■の繰越欠損金額が1億8100万円であることを伝え、両社の統合の選択肢を、■■■■■■と■■を合併する方法、■■■■■■の事業を■■に分割承継し、■■■■■■を清算する方法、■■■■■■の事業を■■に分割承継し、■■■■■■を原告に合併する方法に整理しているところ、■■■■が億単位の赤字になる見込みであり、原告に株式の売却益があるため、■■■■■■を原告に合併する方法で原告の節税効果を得るのがよいとの考えを示し、助言を求めた(乙28)。
また、■■は、同月29日、■■ら経営企画部の従業員に対し、「税務メリットを早期に享受するため」として、■■■■■■の事業を■■に分割、統合し、その後の■■■■■■を原告に合併するとの選択肢がよいと考えること、上記方法により、■■■■■■の7億4300万円余りの繰越欠損金額を原告で活用できることを伝えた(乙29)。なお、上記を伝える■■の電子メールには、「低温CC統合に関する整理」と題する文書が資料として添付されており、同文書には、■■■■■■の統合方法を「税務メリットを獲得できる手法」とすること、原告は同年度に株式の売却益を計上する予定であり、■■■■■■の繰越欠損金額を原告に引き継いで節税を実現したいこと、同年中に上記方法を実行することにより、同年度決算における原告の節税を実現できることが示されていた(乙29・20枚目)。
イ ■■■■の担当者は、平成28年7月31日、■■に「低温CC再編について」と題する文書を送信した。同文書には、「統合のポイント」として「税務上の繰越欠損金の利用」が示され、■■■■■■と■■が合併した場合、原告による完全支配関係がある法人間の合併であるため適格合併となり、いずれの法人が存続法人となっても繰越欠損金額の引継ぎができるが、両社の繰越欠損金額の利用が別途必要となること、■■■■■■の事業を分割承継して■■■■■■を清算する場合、■■■■■■が解散予定会社となるため完全支配関係が見込まれず、非適格再編となり、清算時に課税される可能性が残ること、事業分割後の■■■■■■を原告が合併する場合、■■■■は適格合併による解散を予定するため適格再編になり、■■■■■■の繰越欠損金額を引き継ぐことになること等が示されていた(乙30)。
ウ 原告は、平成28年8月29日の経営会議において、■■■■■■の低温事業を吸収分割により■■に承継統合させ、■■■■■■を原告に吸収合併させること、原告において■■■■■■の繰越欠損金額を同年度中に利用するため、統合時期を同年12月1日とすることを承認した(乙31・1枚目)。上記承認に係る議案書には、再構築プロジェクトの実行計画に基づいて■■が発足し、低温事業の中核企業としての機能充実が図られつつある一方で、■■■■■■には、■■と同水準の機能を維持するのに必要な専任スタッフを抱えることができていないこと、■■が有する機能とマネジメント体制を■■■■■■に波及させるため両社の事業統合を行い、低温事業の中核企業として事業推進を加速させるため起案に至ったこと、原告における「節税効果」が概算で4億6000万円となることが示されていた(乙31・1、3枚目)。
エ ■■は、平成28年9月20日、原告の経営企画部及び人事総務部の従業員に宛てた取締役会決議に関する電子メールで、「■■■■■■■■■■は卸事業を会社分割で■■■■■■■■■■に統合した上で、空っぽの会社になったところで■■■■■■に吸収合併します(税務上のメリットが結構あって・・・)」などと伝えた(乙32)。
オ 原告は、平成28年10月13日の取締役会において、■■■■■■と原告の合併を承認した(乙33)。
(5) 本件各合併等
ア 平成27年2月、原告の100パーセント子会社として■■が設立され、■■■■■■■■、分割1が行われた。同日には、東日本エリアの他の子会社3社及び原告■■■■の各低温事業も、吸収分割の方法で■■に承継された(甲19~24)。
分割1の後における■■■■の未処理欠損金額(本件未処理欠損金額1)の総額は38億3078万6457円であった(乙3)。
イ ■■■■と原告は、平成27年9月14日、■■■■を解散会社、原告を存続会社とする合併契約を締結し、■■■■■■■■、同契約に基づく合併(合併1)が行われた(甲25)。
ウ 平成27年6月、原告の西日本エリアの子会社4社の低温事業が吸収分割の方法で■■■■■■に承継され、■■■■の低温事業に係る得意先が■■■■■■に移管された(甲26~30)。
エ ■■■■■■と原告は、平成28年10月13日、■■■■■■を解散会社、原告を存続会社とする合併契約を締結し、■■■■■■■■、分割2及び上記契約に基づく合併(合併2)が行われた(甲32、33)。
分割2の後における■■■■■■の未処理欠損金額(本件未処理欠損金額2)の総額は11億7151万6723円であった(乙4)。
オ 分割1で■■に移管された■■■■の事業は、平成27年9月1日の時点で約24億円の債務超過であり、分割2で■■に移管された■■■■■■の事業は、平成28年12月1日の時点で約10億円の債務超過であった。■■■■の債務超過額については、分割1に先立ち、原告から■■■■への同額の預け金を「グループ勘定」として計上する処理が行われ、■■■■■■の債務超過額についても、同様の「グループ勘定」による処理が行われた(甲67~71、122、123、乙55)。
上記の「グループ勘定」の計上は、原告の子会社である■■■■■■■■が平成24年3月1日にその事業の一部を原告に移管し、平成26年1月1日にその事業の一部を原告の別の子会社に移管した際及び原告の子会社である■■■■■■■■が平成27年9月1日にその事業(低温事業)を■■に移管した際にも行われていた(甲124~130)。
カ 原告は、平成27年以降に、三温度帯(常温、冷蔵及び冷凍)で分かれていた物流拠点を集中的に管理するため、同年から令和元年8月までの間に、東京都内に2か所、茨城県内、宮城県内及び大阪府内に各1か所、三温度帯の商品を扱う物流拠点を開設し、■■■■は、その事業のため、これらの物流拠点を賃借した(甲106~114)。
2 争点1(本件各否認の適法性)について
(1) 法人税法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、法人の行為又は計算が組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるものであることをいうと解すべきであり、その濫用の有無の判断に当たっては、①当該法人の行為又は計算が、通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づいたり、実態とはかい離した形式を作出したりするなど、不自然なものであるかどうか、②税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか等の事情を考慮した上で、当該行為又は計算が、組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したものであって、組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるもの又は免れるものと認められるか否かという観点から判断するのが相当である(平成28年最判参照)。
(2) 検討
ア 原告は、平成17年11月の第8次長期経営計画以来、低温事業における組織体制の強化と事業規模の拡大を経営課題として掲げ、専門の検討部署を発足させるなどしていたところ(認定事実(2)ア、イ)、被合併各社には、東西のカテゴリー販社を軸に事業網を構築、拡大するとの当初の方針に沿って、グループ内各社や同業他社の低温事業が順次集約されていった(認定事実(2)イ、ウ)。その後、被合併各社の事業は、本件各分割により新設会社の■■に移されたが、その動機、目的は、全国展開する同業他社の事業の買収に対応することや、原告グループ内の支社及び関係会社をエリアカンパニーとカテゴリーカンパニーに再編するという新たな組織方針を実現することにあったと考えられ(認定事実(2)エ、(3)ア)、これらの一連の過程は、低温事業における組織体制の強化と事業規模の拡大という経営課題に沿うものであったといえる。
本件各分割は、上記過程による■■への事業集約の一環として行われたものであり、その内容は、低温事業の全国販社化の構想に即して、被合併各社に分散されていた事業をその受け皿となる■■に集約するというものであり、かつ、その実行に当たっては、他のグループ会社の事業移転におけるのと同様に、「グループ勘定」による分割承継会社である■■の財務内容の健全化も図られており(認定事実(5)オ)、■■が低温事業を円滑に実施するための措置が講じられていることをも併せ勘案すると、その手順や方法が、組織再編成として通常想定されない不自然なものであったり、又は実態とはかい離した形式を作出したりしたものとは認め難い。また、本件各合併については、上記の経営課題に沿った組織再編成の結果として事業体としての実質を失った■■■■及び■■■■■■を整理する趣旨でされたものと認められるところ、親会社が不要となった子会社を合併し、その法人格を消滅させることは、企業グループ内における組織再編成の手法として合理性を欠くものではなく(甲47)、実例も存することを勘案すると(甲48~51)、そのような合併が、通常想定されない組織再編成の手順や方法であったり、又は実態とはかい離した形式を作出したりしたものとは認め難い。
なお、分割2に関する関係者間の電子メール等のやり取りにおいて、組織再編成の方法及び税務上の得失以外の情報のやり取りがされた証拠は見当たらないが(認定事実(4))、原告の低温事業の再編においては西日本エリアの事業も対象とされており(認定事実(2))、かつ、分割2に係る経営会議の議案書に、■■■■■■の組織体制が十分でなく、■■の有する機能等を波及させる必要があること等が指摘されていたこと(認定事実(4)ウ)も考慮すると、分割2も低温事業の全国販社化の構想に係る組織再編成の一環として行われたと認めるのが相当である。
イ 他方で、原告は、分割1を検討する段階から、事業移転後の■■■■の未処理欠損金額を利用した税負担の減少を企図しており、このことは、分割2及び合併2の検討過程においても同様であったことは確かである(認定事実(3)ウ、(4)ア)。また、原告は、分割1の適格分割化に係る■■■■の説明を受けて合併1を選択したと認められ(認定事実(3)オ、カ)、その選択においては、被合併各社の解散を避けることにより、本件各分割を適格分割(法2条12号の11)とし、本件各分割に係る被合併各社の税負担を軽減することを意図していたといえるが、その最終的な決定においては、合併1によっても■■■■■■の未処理欠損金額を利用した税負担減少の効果を得られることを認識していたということができ(認定事実(3)オ、カ)、本件各合併が、被合併各社の未処理欠損金額を利用した税負担の減少をも目的としていたことは否定し難い。さらに、原告は、本件各未処理欠損金額の最大限の利用を意図して本件各合併の時期を定められたと認められ(認定事実(3)オ、(4)ウ)、本件各合併の主たる目的の一つが、原告の税負担の減少にあったということはできる。
しかし、アで述べたとおり、原告は、低温事業に係る事業再編として、数年間にわたり、原告及び原告の複数の子会社等が行っていた低温事業を被合併各社に統合し、更に、被合併各社に加え、低温事業を行っていた原告の他の子会社等の事業をも■■に統合するという一連の会社組織の再編を実施しており、本件各合併はそのような再編の結果として法人格を存続させる意義が失われた子会社(被合併各社)を整理する目的でされたものであるから、全体として実態のある事業再編の一環としてされたものということができる。しかも、原告がこのような会社組織の再編に対応して、複数の物流施設を新たに設置し、■■に賃貸するなどしており(認定事実(5)カ)、会社組織の再編に応じた設備投資も行っていると認められることを併せ考慮すると、本件各合併には、税負担の減少以外の合理的な事業目的があったということができ、かつ、そのような事業目的の存在が、本件各合併の主たる目的の一つが原告の税負担の減少にあったことにより否定されるとはいい難い。
ウ さらに、組織再編税制の基本的な考え方は、実態に合った課税を行うという観点から、原則として、組織再編成により移転する資産及び負債(以下「移転資産等」という。)についてその譲渡損益の計上を求めつつ、移転資産等に対する支配が継続している場合には、その譲渡損益の計上を繰り延べて従前の課税関係を継続させるというものであり、法57条2項に基づく未処理欠損金額の処理についてもこの取扱いに合わせたものと解される(平成28年最判参照)。そして、既に説示したところによれば、被合併各社は、原告及び原告の子会社等が従前から各地域で展開していた低温事業を統合するために原告の100パーセント子会社として維持され、又は設立された法人であり(認定事実(2))、従前から両社の資産等に対し原告の支配が及んでいたものであるから、本件各合併により、本件各未処理欠損金額を原告が引き継ぐことが同項の本来の趣旨及び目的を逸脱するものとは解し難いというべきである。
エ 以上のとおり、①本件各合併は、本件各分割とともに、原告の従来の経営課題に沿う組織再編成の一環として行われたものであるところ、その手順や方法が通常は想定されないものであったり、実態とはかい離したものであったりするということはできないこと(上記ア)、②本件各合併は、支社及び子会社等を通じて営んでいた事業に係る組織再編成の過程で不要となった子会社を整理するという税負担の減少以外の合理的な事業目的を有するものであること(上記イ)、③本件各未処理欠損金額を原告が引き継ぐことが、上記に述べた組織再編税制の本来の趣旨及び目的を逸脱するものとは解し難いこと(上記ウ)からすれば、その手順、方法及び形式や事業目的等の観点からみて、組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図し、組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受け又は免れるものであったとは認められず、法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは認められない。
原告が主張するその他の事業目的(大胆な投資、円滑なグループ企業の事業買収の実現、取引上の信用維持及び酒類販売免許の取得)の有無は、上記判断を左右しない。
(3) 従前事業継続に関する被告の主張について
ア 被告は、完全支配関係がある法人間の適格合併においても従前事業継続が前提として想定されていたから、従前事業継続を欠く本件各合併は、組織再編税制に係る本来の趣旨及び目的から逸脱する態様で法57条2項の適用を受けるものである旨主張する。
イ しかし、法2条12号の8イは、完全支配関係がある法人間の合併について、従前事業継続を適格合併の要件として定めておらず、法57条2項も、従前事業継続を未処理欠損金額の引継ぎの要件として定めていないのであるから、法律上の明文の根拠なく、従前事業継続の有無を法132条の2に基づく否認の実質的な要件として考慮することは、租税法律主義の趣旨に照らして、相当と認めることができない。
ウ また、既に述べたとおり、組織再編税制の基本的な考え方は、実態に合った課税を行うという観点から、原則として、移転資産等についてその譲渡損益の計上を求めつつ、移転資産等に対する支配が継続している場合には、その譲渡損益の計上を繰り延べて従前の課税関係を継続させるというものであるところ、立案段階における税制調査会小委員会での審議等(甲55、57、58、73)においても、合併法人と被合併法人が完全に一体と考えられる場合には適格要件を緩和することも考えられる旨の指摘がされていることにも鑑みると、法2条12号の8イが従前事業継続を適格合併の要件として定めていないのは、合併法人と被合併法人との間に完全支配関係がある場合、その実質的な一体性により合併法人が合併前から被合併法人の移転資産等の処分を支配し得る関係にあり、それが合併により現実化したとしても移転資産等に係る経済実態は合併前後を通じて変更されていないと評価することができるから、課税上、合併時点における移転資産等の処分に係る損益を計上させる必要がないとの立法政策がとられたためと解される。したがって、合併前からの移転資産等に対する支配の継続(以下「移転資産等に対する従前支配」という。)のみならず、合併後における従前事業継続をも当然に想定していたとみるべき解釈上、証拠上の根拠があるとはいえない(後述する同号ロ、ハの定めの内容に鑑みても、従前事業継続を同号イの適格合併の要件として定めることに立法技術上の困難があったとは認め難い。)。
他方で、法2条12号の8ロ及びハ並びに施行令4条の3第4項は、支配関係がある法人間の合併及び共同事業を目的とする合併に係る適格合併の要件として、従前事業継続が見込まれていること等を定めているが、その趣旨は、移転資産等に係る従前の課税関係の継続を認めるに当たり、支配関係がある法人間の合併及び共同事業を目的とする合併については、その前後で移転資産等に係る経済実態に変更がないとまではいえないことを踏まえ、個別の資産等の売買取引と区別する観点から、従前事業継続の見込み等を求めることにあったと解され、法2条12号の8号ロ及びハの各定めをもって、従前事業継続が適格合併の共通の前提であったと解することはできない。
被告は、従前事業継続が組織再編成税制の基本的な考え方とされている根拠として法57条3項及び法57条の2を指摘する。しかし、法57条3項は、合併時点において、合併法人の被合併法人等に対する支配関係が一定の期間を超えない場合に、支配関係が生じる前に生じた被合併法人等の未処理欠損金額等を法57条2項の適用対象から除外することを定めるものであり、その趣旨は、租税回避行為への対処の観点から、移転資産等に対する従前支配の期間が短期間にとどまる場合には、支配関係が生ずる前に発生した未処理欠損金額の引継ぎを制限したものとみるのが相当であり、その趣旨及び解釈から、従前事業継続が適格合併の共通の前提であったと解することはできない。また、法57条の2は、同条の定める欠損等法人が同条所定の期間内に事業を開始した場合に、当該欠損等法人自身が有する未処理欠損金額の損金算入を一定の要件の下で制限するものであるところ、その趣旨は、休眠状態にある法人を買収し、当該休眠状態にある法人が有する未処理欠損金額を利用すること等により租税回避をすることを防止するためであると解され、合併法人と被合併法人との間の従前事業継続の有無を問題とする法57条2項とは適用場面が異なるから、同条の趣旨及び解釈によっても、従前事業継続が適格合併の共通の前提であったと解することはできない。
なお、平成22年度の税制改正により、内国法人と完全支配関係のある他の内国法人の残余財産が確定した場合にも法57条2項が適用されることとなったが、当該改正においても、当該内国法人が当該他の内国法人の従前事業を継続することは要件とされておらず、このことは、完全支配関係にある内国法人間の組織再編成については移転資産等に対する従前支配をもって、同項適用の基礎として足ることを前提としたものと解される。
以上により、法57条2項の適用の前提に関する解釈の被告の主張も、採用することができない。
エ よって、被告の上記アの主張を採用することはできない。なお、以上のとおり解しても、組織再編成の過程で不要となった子会社の合併に関し、法132条の2の適用が一律に否定されるものではなく、その適否は個別の事実関係に応じて決せられるべきであるから、同条の趣旨に反することにはならない。
(4) 被告のその他の主張について
ア 被告は、被合併各社が本件各分割をもって唯一の事業を失い、未処理欠損金額を有するのみの会社となったことにより、組織再編税制に係る規定の適用の前提となる被合併各社の経済実態の同一性が失われたことを主張する。しかし、完全支配関係がある法人間の合併における被合併会社の未処理欠損金額の引継ぎについては、上記(3)ウにおいて説示したところに照らし、移転資産等に対する従前支配についての経済実態を考慮すべきであると解されるところ、被合併各社が本件各未処理欠損金額を有していたことは本件各分割の前後を通じて同様であり、この未処理欠損金額についても完全支配関係による原告の支配が及んでいたと認められるから、本件各分割により被合併各社の事業及び資産が失われたことのみをもって、本件各未処理欠損金額の繰越しの前提となる経済実態が失われたということはできない。
イ その余の法132条の2の解釈及び組織再編税制に係る各規定の濫用に関する被告の主張は、上記(2)の判断を左右するものとはいえない。
(5) 小括
以上により、本件各否認は、違法と認められる。
3 争点2(引き直し不検討等の適法性)及び争点3(税負担減少の不発生を考慮しないことの適法性)について
争点2及び争点3における原告の主張は、いずれも本件各否認が適法であることを前提として、本件各更正処分等の違法をいうものであるところ、上記2のとおり、本件各否認は違法であるから、その余の点について判断を要しない。
4 納付すべき税額等の計算
上記判断に従って本件各事業年度の法人税等の納付すべき税額及びその確定申告に係る過少申告加算税の額を計算すると、その結果は、別紙3のとおりとなり、①平成27年12月事業年度の所得金額は18億7261万4810円、法人税の納付すべき税額は8億3263万8100円、②平成27年12月事業年度の地方法人税の課税標準法人税額は9億4474万6000円、納付すべき税額は4156万8800円、③平成28年12月事業年度の所得金額は97億4472万2956円、法人税の納付すべき税額は27億8935万3400円、④平成28年12月事業年度の地方法人税の課税標準法人税額は29億4781万円、納付すべき税額は1億2970万3500円となり、⑤過少申告加算税の額は、平成27年12月期法人税更正処分及び平成27年12月期地方法人税更正処分に係るものがいずれも0円、平成28年12月期法人税更正処分に係るものが238万2000円、平成28年12月期地方法人税更正処分に係るものが10万4000円となる。
第4 結論
以上により、原告の請求のうち、平成27年12月期の確定申告分に係る各更正処分及び各過少申告加算税の賦課決定処分の取消しを求める部分の全部(第3の4①及び②のとおり、法人税に係る所得金額及び地方法人税に係る課税標準法人税額並びにこれらを前提とする納付すべき税額は、いずれも確定申告額を下回ることから、確定申告額の限度で認容される。)並びに平成28年12月期の確定申告分に係る各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分の取消しを求める部分の各一部は理由があるから、これらを認容し、その余は、いずれも理由がないから、棄却すべきである。
よって、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官 衣斐 瑞穂
裁判官小松秀大は転補のため、裁判官若園怜は転官のため、いずれも署名押印することができない。
裁判長裁判官 衣斐 瑞穂
(別紙1~3)省略