税務調査を受けて課税処分がなされ、それに不服がある場合、国税不服審判所に審査請求をすることができます。今回は、審査請求するかを検討している人向けに、知っておきたい情報をまとめてみました。
申立てができる期間
審査請求はいつでも申立てができるわけではありません。再調査決定を経ずに、直接審査請求する場合は処分の通知を受けた日から3か月以内に、また、再調査決定を経た場合は、再調査決定書謄本の送達があった日から1か月以内に国税不服審判所長に対して行う必要があります。
出典:「審判所ってどんなところ? 国税不服審判所の扱う審査請求のあらまし」
なお、「正当な理由があるとき」には、例外的に申立てが可能ですが、具体的には次の場合が該当します。
・不服申立人の責めに帰すべからざる事由により、不服申立期間内に不服申立てをすることが不可能と認められるような客観的な事情がある場合(具体的には、地震、台風、洪水、噴火などの天災に起因する場合や、火災、交通の途絶等の人為的障害に起因する場合等)
申立て先
審査請求は国税不服審判所長に対して行うものですが、審査請求書自体は原処分庁の管轄区域を管轄する国税不服審判所支部を提出することになっています。提出方法は、直接持参する方法のほか、郵送、原処分庁を経由しての提出、e-taxでの提出があります。
代理人をつけるか
代理人をつけるかは任意となっています。また、代理人になるための資格も特に制限はなく、弁護士や税理士のほか適当と認める者を選任することができます。
費用
審査請求をすること自体に費用はかかりません。ただし、原処分庁が提出した証拠書類の写しを請求する際には1枚につき10円の手数料がかかります。また、代理人を付けた場合については、代理人に対する報酬も発生することになります。
期間
大型事案でなければ、基本的に審査請求してから1年以内に裁決書が発送されます。なお、令和2年度はコロナ禍の影響があり83.5%と低調でしたが、例年処理件数の95%以上が1年以内に処理されています。
労力
審査請求をする際には、2~3回程度主張書面を提出する必要があります。最初は「審査請求書」、次に原処分庁から提出される「答弁書」に対する「反論書」、あとは必要に応じて「意見書」というものを提出し、それに合わせて自身の主張を裏付ける証拠書類も提出することになります。なので、代理人を付ける場合はあまり関係がありませんが、まずはこれら書類の作成にかけられる時間が必要となります。
また、原処分庁から「答弁書」が提出された後あたりで、審判所において、事案に関わる審判官等と主張内容の確認を行う面談(請求人面談)がセットされることになっており、これにかかる時間も必要となります。
出典:「審判所ってどんなところ? 国税不服審判所の扱う審査請求のあらまし」
認容率
審査請求をして請求が認められる割合は、おおむね10%程度となっています。ただし、重加算税の事案については、私が計算した限りでは37.1%という認容率でした。
出典:国税不服審判所HP
審査請求に適している事案
審判所に勤務した経験と訴訟の発生状況からみた私見になりますが、事実認定について争われている事案や重加算税の事案については審査請求に適しているのではないかと思います。これに対して、法令解釈が問題になっている事案や租税回避等のスキーム事案、先例がない事案、行為計算否認事案などは審査請求でひっくり返すのが難しいのではないかと思います。