東京国税局の個人課税課・消費税課が作成した「所得税消費税誤りやすい事例集(令和5年12月)」を開示請求により入手しました。確定申告の際の参考にしていただければと思います。
昨年のものはこちら↓
令和5年12月版で新たに追加された事例
配当所得(4頁)
(誤りやすいポイント)
令和5年分の確定申告における上場株式等の配当等について、所得税の確定申告で総合課税にて申告する場合、住民税の申告では申告不要(特別徴収の5%のまま)とすることができると考えている。
令和4年度の地方税法の改正により、令和6年度(令和5年分)から、所得税と個人住民税の課税関係を一致させることとなり、異なる課税方式を選択することができなくなった。
(注)所得税において総合課税又は申告分離課税の適用を受けようとする旨の記載がある確定申告書が提出された場合に限り、総所得金額からこれらの金額を除外して算定することの規定を適用しないこととされた(地法32⑬、313⑬)
また、申告分離課税又は総合課税の選択についても、所得税において申告分離課税の規定が適用された場合に限り、個人住民税においても申告分離課税を適用し、それ以外の場合は総合課税を適用することとされた(地法附33の2②⑥)。
小規模企業共済等掛金控除(40頁)
(誤りやすいポイント)
控除対象配偶者である妻名義のiDeCoの掛金を夫が支払った場合に、夫の小規模企業共済等掛金控除として計算した。
社会保険料控除とは異なり、小規模企業共済等掛金控除は自己が契約した掛金を支払った場合に、その支払った金額について控除をうけることができる(所法75①)。したがって、控除対象配偶者が負担すべき掛金を夫が支払ったとしても、夫が当該掛金を控除することはできない。
※ 国税庁HPタックスアンサー「№1135 小規模企業共済等掛金控除」
扶養控除(48頁)
(誤りやすいポイント)
令和5年分の所得税の確定申告において、非居住者である扶養親族に係る扶養控除の適用を受ける場合、全ての非居住者において38万円送金書類が必要と考えている。
38万円送金書類の提出が必要なのは、非居住者である扶養親族のうち、年齢30歳以上70歳未満で居住者からその年において生活費または教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者について扶養控除の適用を受ける場合である(所法2①三十四の二ロ⑶)。
※ 国税庁HPタックスアンサー「№1180 扶養控除」
(誤りやすいポイント)
令和5年1月1日以降に提出する全ての年分の確定申告書において、非居住者である扶養親族に係る扶養控除の適用を受ける場合、必ず留学証明書又は親族関係書類及び送金関係書類又は38万円送金書類が必要と考えている。
令和2年度税制改正により、日本国外に居住する親族に係る扶養控除の適用に関する改正が行われ、控除対象扶養親族の定義が改正された(所法2①三十四の二)
この改正は、令和5年分以後の確定申告書を提出する場合について適用される。
令和4年分以前については、従前のとおりである(改正法附則3、7①)。
確定申告等(58頁)
(誤りやすいポイント)
退職金について、退職所得の受給に関する申告書を提出した上、退職所得の全部について適正に源泉徴収が行われている場合、確定申告書に記載を省略しても良いと考えている。
配偶者控除や基礎控除等の適用の可否を判定するための合計所得金額には、退職所得の金額を含めて計算する必要があるため、適正に源泉徴収が行われている退職所得も確定申告書に記載が必要である。
よって、確定申告書に記載しなかった退職所得を修正申告に入れること及び退職所得を確定申告書に記載しなかったことを理由とする更正の請求は認められる(所法121②)
適格請求書等保存方式(74~75頁)
(誤りやすいポイント)
令和5年10月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者が、同日以降に適格請求書発行事業者の登録に係る取下書を提出した。
令和5年10月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者が、同日以降に適格請求書発行事業者の登録を取り下げることはできない。この場合、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに提出することにより、翌課税期間から適格請求書発行事業者の登録を失効させることができる(消法57の2⑩一、消令70の5③)
(注)
1 令和6年の課税期間から適格請求書発行事業者の登録を失効させるためには、令和5年12月17 日までに「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出する必要がある。
2 適格請求書発行事業者の登録日が、令和5年10月1日の属する課税期間の翌課税期間以降である場合、登録日から2年を経過する日の属する課税期間の末日までは、適格請求書発行事業者の登録を失効したとしても、基準期間の課税売上高にかかわらず、免税事業者とならない(平成28年改正法附則44⑤)
(誤りやすいポイント)
令和5年10月1日以降に免税事業者である事業者が、提出日を登録希望日とする適格請求書発行事業者の登録申請書を提出した。
免税事業者が令和5年10月1日以降に適格請求書発行事業者の登録申請書を提出する場合は、当該登録申請書に「登録希望日」を記載して提出することにより、その登録希望日から適格請求書発行事業者となることができる(平成28年改正法附則44④、平成30年改正令附則15②)
ここでいう「登録希望日」とは「当該申請書の提出日から15日以降の登録を受ける日として事業者が希望する日」をいうため、「提出日」を「登録希望日」とすることはできない。また、免税事業者が、課税期間の初日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとするときは、その課税期間の初日から起算して15日前の日までに登録申請書を提出する必要がある(消法57の2②、消令70の2①)
(※)免税事業者が、令和6年1月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、令和5年12月18日までに登録申請書を提出する必要がある(令和6年1月1日から起算して15日前の日である令和5年12月17日が日曜日であるため、同月18日が登録申請書の提出期限となる)。なお、課税事業者が令和5年10月1日以降に適格請求書発行事業者の登録申請書を提出する場合、当該登録申請書に「登録希望日」を記載することはできず、登録日から適格請求書発行事業者となる。
(誤りやすいポイント)
令和4年中に「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、令和5年の課税期間の初日から課税事業者となった上で、令和5年10月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者が、令和5年分の消費税の確定申告において、2割特例を適用して申告書を提出した。
免税事業者が、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者となる場合、令和5年分の消費税の確定申告について、2割特例を適用することができる。
一方、令和4年中に「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、令和5年の課税期間の初日から課税事業者となる者は、令和5年分の消費税の確定申告において2割特例を適用することはできないが(平成28年改正法附則51の2①一)、令和5年中に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出し、令和5年の課税期間の初日から「消費税課税事業者選択届出書」の効力を失効させることにより(平成28年改正法附則51の2⑤)、令和5年分の消費税の確定申告において2割特例を適用することができる。 (※)令和5年分の消費税の確定申告時に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出したとしても、令和5年の課税期間の初日から「消費税課税事業者選択届出書」の効力を失効させることはできないことに留意。
(誤りやすいポイント)
令和5年分の消費税の確定申告において2割特例を適用した事業者が、令和6年分の消費税の確定申告時に、令和6年の課税期間を適用開始期間とする「簡易課税制度選択届出書」を提出した。
2割特例の適用を受けた事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間中に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することで、その翌課税期間において簡易課税制度の適用を受けることができる(平成28年改正法附則51の2⑥)
令和5年分の消費税の確定申告において2割特例の適用を受けた事業者が令和6年分の課税期間において簡易課税制度の適用を受けるためには、令和6年中に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があり、令和6年分の消費税の確定申告時に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出したとしても、当該年分において簡易課税制度の適用を受けることはできない。