国税局に情報公開請求をし、表題の判決書を入手してみました。
事案の概要
本件は、原告が、修正申告等は原告の意思に基づかずに行われたものであって無効であるから修正申告等に基づく納税義務を負わず、原告代表者に対して支払った各金員は「賞与」(所得税法28条1項)に該当しないから、原告はこれらについての源泉所得税等の納税義務を負わないなどと主張して、被告に対し、これらの納税義務の不存在の確認を求める事案。
基本情報
・税目:法人税
・処分行政庁等:麹町税務署長事務承継者横浜中税務署長
・課税年度:平成29年5月期~令和2年5月期
・提訴裁判所:東京地方裁判所
・提訴年月日:令和5年5月16日
・判決日:令和8年5月12日
・結果:一部敗訴
争点
・本件各申告が原告の意思に基づかずに行われたものであって無効であるか否か
・本件表2各金員及び本件表3各金員が原告代表者に対する「賞与」(所得税法28条1項)に該当するか否か。
判決書データ
判決書テキスト
※以下は生成AIでテキスト化したものです。
主 文
1 原告と被告との間で、平成28年7月分から令和2年6月分までの源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税並びにこれらに係る延滞税の納税義務が、別紙1源泉所得税等目録記載の額を超えて存在しないことを確認する。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、これを5分し、その4を原告の、その余を被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
原告の被告に対する別紙2租税目録記載の納税義務及びこれらに係る延滞税の納税義務が存在しないことを確認する。
第2 事案の概要
本件は、原告が、次の(1)及び(2)の各納税義務については、これらに係る修正申告等は原告の意思に基づかずに行われたものであって無効であるから上記各修正申告等に基づく納税義務を負わず、次の(3)の納税義務については、別表2及び3記載の各金員は原告代表者に対する「賞与」(所得税法28条1項)に該当しないから原告はこれらについての源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税(以下「源泉所得税等」という。)の納税義務を負わないなどと主張して、被告に対し、これらの納税義務の不存在の確認を求める事案である。
(1) 平成28年7月13日から平成29年5月31日までの事業年度及び課税事業年度(以下「平成29年5月期」という。)並びに平成29年6月1日から平成30年5月31日までの事業年度及び課税事業年度(以下「平成30年5月期」といい、それ以降の他の事業年度及び課税事業年度も同様に表記する。)から令和2年5月期までの法人税及び地方法人税(以下「法人税等」という。)の各修正申告並びにこれらに伴う麹町税務署長の原告に対する令和3年3月30日付け無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分に基づく納税義務
(2) 平成29年6月1日から平成30年5月31日までの課税期間(以下「平成30年5月課税期間」といい、他の課税期間も同様に表記する。)から令和2年5月課税期間まで(以下、これらの課税期間と前記(1)の各事業年度及び課税事業年度を併せて「本件各事業年度等」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の各申告又は修正申告に伴う麹町税務署長の原告に対する令和3年3月30日付け無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分に基づく納税義務
(3) 平成28年7月分から令和2年6月分までの源泉所得税等についての麹町税務署長の原告に対する令和3年3月30日付け納税告知処分(ただし、後記2(10)の告知処分後のもの)に係る納税義務並びに上記各納税告知処分に伴う不納付加算税及び重加算税の各賦課決定処分(ただし、後記2(10)の変更処分後のもの)に基づく納税義務
(4) 前記(1)ないし(3)の納税義務についての延滞税の納税義務
1 関係法令の定め
本件に関係する法令の定めは、別紙3記載のとおりである。
2 前提事実(証拠等を掲記した事実を除いて、当事者間に争いがない。)
(1) 原告は、■■■■■■■■に設立された、自然エネルギー等による発電に係る設備の設置、運用及び保守管理業務等を目的とする株式会社であり、令和4年5月2日、■■■■■■■■■■■■■■から現在の肩書住所地に本店所在地が移転した(乙2、弁論の全趣旨)。
原告は、■■■税理士(以下「■■税理士」という。また、■■■税理士事務所を「■■税理士事務所」という。)との間で、令和2年5月期以前の法人税等、令和2年5月課税年度以前の消費税等及び令和2年9月分以前の源泉所得税等についての税務顧問契約(以下「本件顧問契約」という。)を締結し、亡■■■■(以下「■■」という。)が本件顧問契約に基づく■■■■税理士の業務の担当をしていた(ただし、原告は、後記のとおり、後記(5)の調査の時点までに、本件顧問契約は終了していたと主張している。)。
■■■■■■(以下「■■■」という。)は、■■■■■■■■に設立された、生命保険の募集に関する業務、経営コンサルティング業務等を目的とする株式会社であり、その本店所在地は、原告の上記の移転前の本店所在地(■■■■■■■■■■■■■■■■)である。原告代表者は、■■■■■■■■■、■■■の代表取締役に就任した。(乙80)
(2) 原告は、平成29年5月期の法人税等につき、法定申告期限(平成29年7月31日)後の同年9月26日に確定申告をした。
(3) 原告は、平成30年5月期の法人税等につき、法定申告期限(平成30年7月31日)後の同年8月1日に確定申告をした。また、原告名義の平成30年5月課税期間の消費税等に係る確定申告書は、後記(6)のとおり、法定申告期限(同年7月31日)後の令和3年3月15日に提出された。
(4) 原告は、令和元年5月期及び令和2年5月期の法人税等並びに令和元年5月課税期間及び令和2年5月課税期間の消費税等につき、いずれも法定申告期限までに確定申告をした。
(5) 麹町税務署長は、令和2年11月10日、本件各事業年度等の法人税等及び消費税等並びに平成28年8月10日から令和2年10月12日までの間に法定納期限が到来する源泉所得税等を対象とする税務調査(以下「本件調査」という。)を開始し、■■がこれに対応した。
(6) 本件調査を担当していた麹町税務署の職員(以下「本件調査担当職員」という。)は、令和3年3月12日、■■に対し、本件調査の結果を説明し、■■から、原告名義の次の各申告書(以下、これらを併せて「本件各申告書」といい、本件各申告書による申告を「本件各申告」という。)、■■税理士を原告の代理人と定めた旨等が記載された税務代理権限証書(以下「本件権限証書」という。甲3、乙9)及び「調査の終了の際の手続に関する同意書」(乙26)を受け取り、同日中に、原告に対し、修正申告を行うことによる法的効果等の説明が記載された文書(乙27)を普通郵便で送付した。なお、麹町税務署長が本件各申告書や本件権限証書の提出を受けた年月日は、同日の次の平日である同月15日である。
ア 平成30年5月課税期間の消費税等に係る確定申告書(乙18)
イ 平成29年5月期から令和2年5月期までの法人税等並びに令和元年5月課税期間及び令和2年5月課税期間の消費税等の各修正申告書(以下、これらを併せて「本件各修正申告書」という。乙3~8)
(7)ア 麹町税務署長は、本件各申告を前提に、令和3年3月30日付けで、原告に対し、平成29年5月期の法人税等及び平成30年5月課税期間の消費税等の無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分、平成30年5月期から令和2年5月期までの法人税等並びに令和元年5月課税期間及び令和2年5月課税期間の消費税等の各重加算税賦課決定処分をした。
イ また、麹町税務署長は、令和3年3月30日付けで、原告に対し、平成28年7月分から令和2年6月分までの源泉所得税等の各納税告知処分及びこれらに伴う不納付加算税及び重加算税の各賦課決定処分をした。
ウ なお、原告は、前記アの各処分(以下「本件各法人税等各賦課決定処分」という。)及び前記イの各処分のいずれについても、不服申立期間内に不服申立てをしていない(弁論の全趣旨)。
(8) 原告は、令和5年5月16日、本件訴えを提起した。
(9) 本件各申告書に係る申告又は修正申告により納付すべき税額のうち、平成30年5月課税期間から令和2年5月課税期間までの消費税等に係る本税額についての原告の納税義務は、東京国税局長がした滞納処分による被差押財産の換価代金等から令和5年6月7日付け及び同月28日付けで配当がされたことなどにより、同年8月1日までに消滅した(乙1、40~43)。
(10) 横浜中税務署長は、令和6年2月20日付けで、前記(7)イの各納税告知処分のうち平成28年8月分及び平成29年1月分から6月分までに係るものについて、一部を取り消し、徴収税額を減額する内容の告知処分をするとともに、これに伴い、不納付加算税の額を減額する内容の変更処分をした(以下、上記告知処分後の前記(7)イの各納税告知処分を「本件各納税告知処分」といい、上記変更処分後の前記(7)イの各賦課決定処分を「本件源泉税等各賦課決定処分」という。甲12)。
本件各納税告知処分は、別表1記載の金員(以下「本件表1各金員」という。)が原告代表者に対する「給与」(所得税法28条1項)に、別表2記載の金員(以下「本件表2各金員」という。)及び別表3記載の金員(以下「本件表3各金員」という。)が原告代表者に対する「賞与」(同項)に該当することを理由とするものであった(甲12、乙36の2)。
(11) 原告は、前記(9)、(10)等を踏まえ、令和6年3月12日付け訴え変更申立書及び同年9月2日付け訴え変更(減縮)申立書により、別紙2租税目録記載の納税義務及びこれらについての延滞税の納税義務が存在しないことを確認する請求に訴えの変更(訴えの一部取下げを含む。)をした(顕著な事実)。
同目録の「法人税」欄及び「地方法人税」欄の「本税」欄記載の額は、本件各修正申告書のうち平成29年5月期から令和2年5月期までの法人税等の各修正申告書において、当該申告により納付すべき法人税等の額として記載されている額と同額である(乙3~6)。
同目録の「法人税」欄、「地方法人税」欄及び「消費税及び地方消費税」欄の「加算税」欄及び「重加算税」欄記載の額は、本件各法人税等各賦課決定処分における加算税及び重加算税の額と同額である(乙31~35)。
同目録の「源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税」欄のうち、「本税」欄記載の額は、本件各納税告知処分に係る額と同額であり、「加算税」欄及び「重加算税」欄記載の額は、本件源泉税等各賦課決定処分における加算税及び重加算税の額と同額である(甲12、乙36の1・2)。
3 争点及び争点に関する当事者の主張
(1) 本件各申告が原告の意思に基づかずに行われたものであって無効であるか否か(争点1。本件各申告及び本件各法人税等各賦課決定処分に基づく納税義務並びにそれらに係る延滞税の納税義務の存否に関する争点)
(原告の主張)
本件調査当時、原告は、■■税理士とは別の税理士に顧問税理士業務を依頼していたものの、本件調査が■■税理士との間で本件顧問契約を締結していた期間を対象にしていたため、■■税理士(■■税理士事務所で原告の担当をしていた■■)に対応を依頼したものであり、原告は、■■税理士及び■■のいずれに対しても本件各申告の権限は与えていない。原告は、本件各法人税等各賦課決定処分の通知書を受領したが、■■から、税務署とは引き続き交渉中で、通知は間違いである旨の虚偽の説明を受け、無断で本件各申告をした事実を隠蔽されていたものである。
したがって、本件各申告は、原告の意思に基づかずに行われたものであって無効であるから、原告は本件各申告及び本件各法人税等各賦課決定処分に基づく納税義務(ただし、別紙2租税目録記載のものに限る。)を負わず、それらに係る延滞税の納税義務も負わない。
(被告の主張)
原告代表者は、令和2年11月10日、本件調査担当職員に対し、本件各事業年度等については■■税理士が原告の関与税理士であったが、高齢のため、実際には■■が申告書を作成していた旨を述べた上、同日11日を最後に本件調査に直接対応することはなく、原告は、本件調査への対応を■■税理士及びその補助者である■■に任せていた。そして、確定申告について代理権が認められる場合には、特段の留保がない限り、その委任の効果は修正申告にも及び、また、税務調査に関する処理を委任された場合、修正申告等の権限も包括的に授与されているものと解される。
仮に■■が本件各申告時に■■税理士事務所の職員ではなかったとしても、■■は、■■税理士から依頼を受けて、その事務を代行していたというべきである。また、仮に■■が■■税理士に無断で原告の税務代理の委任を受けたとしても、■■が本件各申告を行う代理権限を有していたことに変わりない(なお、この場合、本件各申告は、税理士資格を有しない者によって代理されたことになるが、これにより■■の行為が税理士法違反となり得ることはさて措き、本件各申告が無効となるものではない。)。
したがって、本件各申告は有効であり、それらを前提にされた本件法人税等各賦課決定処分も無効なものとはいえないから、原告は本件各申告及び本件各法人税等各賦課決定処分に基づく納税義務並びにそれらに係る延滞税の納税義務を負う。
(2) 本件表2各金員及び本件表3各金員が原告代表者に対する「賞与」(所得税法28条1項)に該当するか否か(争点2。本件各納税告知処分に係る納税義務及び本件源泉税等各賦課決定処分に基づく納税義務並びにそれらに係る延滞税の納税義務の存否に関する争点)
(被告の主張)
本件各納税告知処分は、課税処分ではなく徴収処分であり、納税告知処分に対応する確定した納税義務が存在したか否かは、源泉徴収すべき所得の支払という納税義務の成立要件に該当する事実があったか否かによって客観的に決定される。また、源泉所得税等に係る加算税の賦課決定処分は、その処分に重大明白な瑕疵があって当然に無効とされる場合を除き、有効なものとして取り扱われる。
しかるところ、本件表2各金員及び本件表3各金員は、別紙4-1及び4-2の「被告の主張」欄記載のとおり、原告の原告代表者に対する「賞与」(所得税法28条1項)の支払であり、原告はそれを前提とする源泉所得税等の納税義務を負う。
このことに加え、本件表1各金員が原告の原告代表者に対する「給与」(所得税法28条1項)の支払であることを前提に、原告の源泉所得税等の額を計算すると、別表4記載のとおり(その計算の根拠は、別表5-1ないし別表7記載のとおり)であり、本件各納税告知処分に係る納税義務の額と同額であるか、又はこれを上回っている。
したがって、原告は、被告に対し、本件各納税告知処分に係る納税義務を負い、また、本件源泉税等各賦課決定処分も無効なものとはいえないから、本件源泉税等各賦課決定処分に基づく納税義務を負う。さらに、原告は、これらに係る延滞税の納税義務も負う。
(原告の主張)
本件表2各金員及び本件表3各金員は、別紙4-1及び4-2の「原告の主張」欄記載のとおり、原告の原告代表者に対する「賞与」(所得税法28条1項)の支払ではない。
したがって、原告は、被告に対し、本件各納税告知処分に係る納税義務を負わず、また、原告が本件各納税告知処分に係る納税義務を負うことを前提にされた本件源泉税等各賦課決定処分に基づく納税義務やこれらに係る延滞税の納税義務も負わない。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(本件各申告が原告の意思に基づかずに行われたものであって無効であるか否か。本件各申告及び本件各法人税等各賦課決定処分に基づく納税義務並びにそれらに係る延滞税の納税義務の存否に関する争点)
(1) 認定事実
前記前提事実に加え、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア 原告は、■■■■■■■■■■に設立された株式会社であるところ、設立当初から、■■税理士との間で、令和2年5月期以前の法人税等、令和2年5月課税年度以前の消費税等及び令和2年9月分以前の源泉所得税等についての税務顧問契約(本件顧問契約)を締結していた。なお、■■税理士事務所の職員として又は■■税理士から委託を受けるなどして本件顧問契約に基づく■■税理士の業務を担当していたのは■■であり、原告代表者は専ら■■と連絡を取っており、■■税理士と直接会ったことはなかった(原告代表者本人、弁論の全趣旨)。
また、原告代表者が代表取締役を務める■■■は、原告の設立以前から、■■税理士との間で、税務顧問契約を締結していたところ、同契約に基づく■■■の業務を担当していたのも■■であった(原告代表者本人)。
イ 原告は、平成29年8月31日、麹町税務署長に対し、事業年度及び課税事業年度を平成28年7月13日から平成29年6月30日までとする法人税等に係る確定申告書及び同期間の法人税等について■■税理士を代理人と定めて税務代理を委任する旨の税務代理権限証書を提出したが、同年9月26日、上記確定申告書による確定申告を取り下げた(乙14~16、弁論の全趣旨)。
同日以後、原告は、平成29年5月期、平成30年5月期の法人税等につき、法定申告期限後に確定申告をし、令和元年5月期及び令和2年5月期の法人税等並びに令和元年5月課税期間及び令和2年5月課税期間の消費税等につき、法定申告期限までに確定申告をした。
ウ 麹町税務署長は、令和2年11月10日、本件調査を開始し、本件調査担当職員は、同日、原告代表者と面談をした。
その後、原告は、同年10月頃には本件顧問契約が終了していたものの、本件調査に係る事業年度等は本件顧問契約の期間中であり、その確定申告等については■■が■■税理士の補助者として担当していたことから、■■に本件調査の対応を依頼した(甲34、乙23、原告代表者本人)。
エ 本件調査担当職員は、上記ウの後、原告代表者に対し、繰り返し、麹町税務署における面談に応じるよう求めたものの、原告代表者が交通事故を起こしたことや体調不良を理由として面談の延期を求めるなどしたため、本件調査の終了時まで、原告代表者と面談をしたことはなかった(乙23)。
本件調査担当職員は、令和3年2月頃、■■を通じて、原告代表者に対し、「【確認事項】」と題する、原告代表者名義の口座に入金された太陽光発電設備の売買代金が原告の売上か否か等の13項目の確認事項を記載するとともにそれらの関連資料の提出等を求める内容の書面を交付した(甲34、乙23、24、原告代表者本人)。
本件調査担当職員は、同月18日、原告代表者に対し、本件調査を終わらせる方向で考えているが、原告代表者からも直接話を聞かなくてはならないため、日程を調整したい旨のメールを送信したが(乙23、25)、原告代表者は、上記メールの内容を確認したものの、これに返信しなかった(原告代表者本人)。また、本件調査担当職員は、同年3月8日、架電をして留守番電話の機能により上記メールと同内容のメッセージを残したが、原告代表者は、本件調査担当職員に対して何らの連絡もしなかった(乙23)。
本件調査担当職員は、同月9日、本件調査担当職員とともにいた■■が原告代表者に架電し、原告代表者がこれに応答したことから、■■に代わって原告代表者と通話をしようとしたところ、原告代表者は電話を切った(甲34、乙23)。
オ 本件調査担当職員は、令和3年3月12日、■■に対し、本件調査の結果を説明し、■■から、本件各申告書、■■税理士を原告の代理人と定めた旨等が記載された本件権限証書等を受け取り、同日中に、原告に対し、修正申告を行うことによる法的効果等の説明が記載された文書を普通郵便で送付した。
カ 麹町税務署長は、本件各申告を前提に、令和3年3月30日付けで、原告に対し、本件各法人税等各賦課決定処分をし、その頃、本件各法人税等各賦課決定処分に係る通知書を送付した(乙31~35)。
原告代表者は、送付されてきた上記各通知書を見たが(原告代表者本人)、原告は、本件各法人税等各賦課決定処分について、不服申立期間内に不服申立てをしていない。
キ ■■■と■■税理士との間の税務顧問契約は、前記ウのとおり原告と■■税理士との間の本件顧問契約が終了した後も、終了していなかったところ、■■■は、令和3年6月8日、令和元年5月1日から令和2年4月30日までの事業年度及び課税事業年度の法人税等につき、確定申告をしたが(甲20)、その申告書は、■■が作成したものであった(甲4、原告代表者本人)。
ク 原告代表者は、令和4年6月9日、麹町税務署の職員に対し、令和3年に提出した修正申告書は偽造されたものである旨を申し出た(争いがない)。
原告代表者の弟は、令和4年7月1日、横浜中税務署において、原告代表者の代理人として、平成29年5月期から令和3年5月期までの法人税等及び平成29年5月課税期間から令和3年5月課税期間までの消費税等に係る各修正申告書、税務代理権限証書等の閲覧を行った(争いがない)。
原告訴訟代理人弁護士は、令和4年7月19日付けで、麹町税務署長に対し、令和元年6月1日から令和2年5月31日までの期間の原告名義の「法人税修正申告書」は無効である旨を記載した「通知書」と題する書面(甲4、乙10)を送付した。
(2) 検討
前記(1)ウ及びエの認定事実によれば、原告は、本件各申告の時点では、■■■税理士との間の本件顧問契約が終了していたものの、本件調査の開始日を除き、本件調査の対応を専ら■■にさせ、原告代表者が直接本件調査の対応をすることはなかったものである。このことに加え、国税通則法上、税務調査の結果、更正決定等をすべきと認められた場合には、納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)の説明をするほか、修正申告又は期限後申告を勧奨することができるものとされ(74条の11第2項、3項)、税務調査を受けた納税義務者において修正申告又は期限後申告をすることがあり得るものとされていること、■■は、前記(1)アのとおり、本件各申告の前から、■■が■■税理士の補助者として本件顧問契約に基づく業務を担当しており、原告代表者が■■税理士と直接やり取りをしたことはなかったことも併せ考慮すれば、■■に本件調査の対応を委任した原告の合理的意思としては、■■に本件調査後に修正申告又は期限後申告をする権限も包括的に授与したものと解される。
また、前記(1)エ及びオの認定事実によれば、原告代表者は、令和3年3月8日頃までには、近日中に、本件調査の結果、更正決定等を受ける可能性があることを認識していたものと認められ、また、原告代表者は、同月12日頃、本件各申告に際して修正申告を行うことによる法的効果等の説明が記載された文書により、本件各申告がされたこと又は近日中にされることを認識したものと認められる。さらに、前記(1)カの認定事実によれば、原告は、同月頃、本件各法人税等各賦課決定処分の通知書の送付を受け、原告代表者は、その内容を確認したのであるから、本件各申告を前提に、本件各法人税等各賦課決定処分を受けたことも認識していたものと認められる。
そうであるにもかかわらず、原告代表者が、上記通知書の送付を受けてから約1年2か月が経過した後の令和4年6月9日まで、■■が本件各申告をすること又は現にしたことについて、本件調査担当職員又は処分行政庁に対し、不服を述べなかったこと(前記(1)ウないしカ)からすれば、原告代表者は、■■が本件各申告をすることを容認していたものと認められる。
以上によれば、原告は、■■に対し、本件調査の対応に加え、その結果に応じて修正申告及び期限後申告(本件各申告)を行う代理権限を与えていたと認めるのが相当である。
(3) 原告の主張について
ア これに対し、原告は、本件調査前に、■■税理士事務所又は■■との間でトラブルがあったため、本件顧問契約を解除していたのであって、■■に対し、本件各申告を行う代理権限を与えていない旨を主張し、原告代表者は、これに沿う供述等(甲34、原告代表者本人)をする。
しかし、原告代表者は、本件調査の結果によっては原告に対し税額を増額する内容の処分(更正処分)がされ得ることを認識しながら(原告代表者本人)、本件調査の開始日を除いては直接本件調査に応じることなく、本件調査の対応を■■に任せていた上(前記(1)ウ、エ)、原告代表者が代表取締役を務める■■■は、令和3年6月8日、■■が作成した申告書により令和元年5月1日から令和2年4月30日までの事業年度及び課税事業年度の法人税等の確定申告をしていたのであるから(前記(1)キ)、原告と■■税理士事務所又は■■との間で一定の紛争があったとしても、原告において、■■に対し本件各申告を行う代理権限を与えたと認め難いほどに、原告と■■との間の信頼関係が破壊されていたものとは認めることはできない。
また、原告代表者の上記供述等は、前記(2)のとおり、原告代表者が、本件各法人税等各賦課決定処分に係る通知書の送付を受けてから約1年2か月が経過するまで、■■が本件各申告をすること又は現にしたことについて不服を述べなかったことからすれば、不自然、不合理であるといわざるを得ない。
この点に関し、原告は、上記通知書の送付を受けた後、■■に確認したところ、■■が、本件調査が継続しているように装ったことから、これを信じた旨の主張をし、原告代表者は、これに沿う供述等(甲34、原告代表者本人)をするとともに、これに沿う証拠として、甲第4号証(■■の原告に対するメッセージが添付された前記(1)キの通知書)を提出するので更に検討する。
しかし、甲第4号証に添付された■■の原告に対するメッセージは、誤って発送された督促状について、取消しの通知が届くこと等を内容とするものであって、本件調査が継続していることをうかがわせる旨の記載はない上、令和3年4月6日に送信されたものが最後である。加えて、原告代表者は、同年2月18日には、本件調査担当職員から、本件調査を終わらせる方向で考えている旨のメールを受信した上、本件全証拠によっても、本件調査中に繰り返し原告代表者に面談を求めていた本件調査担当職員(前記(1)エ)が、本件各申告後に、原告代表者に面談を求めるなどの連絡を取ったことはうかがわれない。
そうすると、本件各申告後も本件調査が継続していると信じた旨の原告代表者の供述等は、信用し難いものといわざるを得ず、他に、原告代表者は、■■が本件各申告をすること又は現にしたことについて長期間にわたり不服を述べなかったことについて、合理性があるというべき事情は見当たらない。
したがって、原告が■■に対して本件各申告を行う代理権限を与えていない旨の原告代表者の供述は、信用することができず、この点に関する原告の主張は採用することができない。
イ また、原告は、本件各申告書(乙3~8、18)に偽造印が押捺されていると主張し、これに沿う供述等(甲34、原告代表者本人)をする。
しかるところ、前記(1)イのうち、平成29年5月期法人税等の確定申告に係る申告書(乙13)、事業年度及び課税事業年度を平成28年7月13日から平成29年6月30日までとする法人税等の確定申告の取下書(乙16)、令和元年5月期法人税等の確定申告及び令和元年5月課税期間消費税等の確定申告に係る各申告書(乙19、21)には、本件各申告書と同じ印章が押捺されていることが認められ、原告も、偽造印が押捺されている旨を主張しているが、他方で、原告は、これらの確定申告等を前提に、税金の納付をし、又は還付を受けるなどしたことが認められる(原告代表者本人)。
そうすると、本件各申告書(乙3~8、18)に押捺されている印章が、実印でないとしても、同印章は、■■が■■税理士事務所における原告の確定申告等の担当者として原告の意思に基づいて原告の確定申告等をする際に使用していたものであることが認められるから、本件各申告書(乙3~8、18)に押捺されている印章が実印でないことは、前記(2)の認定判断を左右しない。
(4) 争点1の結論
以上のとおり、原告は、■■に対し、本件各申告を行う代理権限を与えていたと認められ、本件各申告が原告の意思に基づかずに行われたものであって無効であるということはできない。
したがって、原告の請求のうち、本件各申告及び本件各法人税等各賦課決定処分に基づく納税義務(ただし、別紙2租税目録記載のものに限る。)並びにそれらに係る延滞税の納税義務の不存在確認請求は、理由がない。
2 争点2(本件表2各金員及び本件表3各金員が原告代表者に対する「賞与」(所得税法28条1項)に該当するか否か。本件各納税告知処分に係る納税義務及び本件源泉税等各賦課決定処分に基づく納税義務並びにそれらに係る延滞税の納税義務の存否に関する争点)
(1) 判断枠組み
源泉所得税等は、納税義務(所得税及び復興特別所得税を徴収して国に納付する義務)が成立すると同時に、特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定するのであって(国税通則法15条3項2号)、納税告知処分は、課税処分ではないから(最高裁昭和45年12月24日第一小法廷判決・民集24巻13号2243頁参照)、所得の支払者は、納税告知処分を受けた納税義務の不存在確認の訴えにおいて、納税告知処分の効力にかかわらず、源泉所得税等の納税義務の存否・範囲を争うことができるものと解される。
本件において、本件表1各金員は、原告代表者に対する「給与」(所得税法28条1項)に該当するから(乙13、17、19、20、60~66。なお、原告は、この点については争っていない。)、原告は、少なくともこれを前提とする源泉所得税等の納税義務を負うことになるところ、本件各納税告知処分に係る納税義務の範囲は、本件表2各金員及び本件表3各金員が原告代表者に対する「賞与」(所得税法28条1項)に該当するか否かによることとなる。
(2) 本件表2各金員について
ア 本件表2各金員の概要
本件表2各金員は、本件各修正申告書のうち平成29年5月期、平成30年5月期及び令和2年5月期の法人税の各修正申告書の別表四の加算項目欄に「売上計上漏れ」として記載された金員であり、上記各修正申告書においては、これらの計上漏れをした売上げに伴う原告の資産が社外に流出したとして所得金額が算出されている(乙3、4、6の各3枚目)。
イ 平成28年7月14日、同年8月30日、同年9月26日、同年11月25日及び平成29年2月10日を支払年月日とする計4017万0296円について
(ア) 平成28年7月14日を支払年月日とする1430万9896円について
A 前記前提事実に加え、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(A) 原告は、■■■■■■■■■に設立された株式会社であるところ、同月14日付けで、■■■■■■及び■■■■との間で、■■■■■が原告及び■■■■■に対し、土地及び太陽光発電設備に関する権利取得の報酬として、3000万円を、同日限り、本件弁護士預かり金口座(「弁護士■■■■預かり口」名義の預金口座)に振り込んで支払う旨の合意をした。
原告は、同日付けで、■■■■■■との間で、原告は上記報酬のうち1431万0760円を取得する旨の合意をした。
■■■■は、同日、本件弁護士預かり金口座に3000万円を振り込み、■■弁護士は、同日、本件弁護士預かり金口座から原告代表者個人口座(原告代表者名義の預金口座)に1430万9896円(上記1431万0760円から振込手数料を控除した額)を振り込んだ。(以上につき、乙69、70、弁論の全趣旨)
(B) 原告代表者個人口座の残高は、前記(A)の振込み前は648万1503円だったところ、前記(A)の振込みにより2079万1399円となった。
原告代表者は、前記(A)と同日、原告代表者個人口座から、計1000万0000円を証券会社に振込み、35万2728円の靴を購入した(以上につき、乙92、93、弁論の全趣旨)。
(C) なお、原告口座が開設されたのは、平成28年9月9日である(甲13)。
B 前記Aの認定事実によれば、平成28年7月14日、原告に対する報酬1430万9896円が原告代表者個人口座に振り込まれたところ、原告代表者は、同日、上記1430万9896円の少なくとも一部を個人的な用途に係る支払に充てたものである。同日時点では、原告口座が開設されていなかったものの、原告口座開設直後に原告代表者が上記額を原告口座に振り込んだことはうかがわれないことや、原告口座開設前に原告代表者個人口座に振り込まれた原告が取得すべき金員について後に精算するための帳簿等が作成されたことはうかがわれないことも考慮すれば、原告代表者は上記の振込みによって上記1430万9896円を取得したと認めるのが相当である。
(イ) 平成28年8月30日、同年9月26日、同年11月25日及び平成29年2月10日を支払年月日とする計2586万0400円について
A 掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(A) 原告は、平成28年8月30日付けで、■■との間で、目的物を原告が所有する土地及び太陽光発電設備とし、代金を2545万円とする売買契約を締結した(乙71)。
■■■は、同日、同年9月26日及び同年11月25日、上記売買契約に基づく代金として、原告代表者個人口座に計2545万円を振り込んだ(乙70)。
(B) 原告は、平成29年1月13日までに、■■に対し、遠隔監視システムを売却するとともに、その取付け工事を行い、■■は、同年2月10日、それらの代金として、41万0400円を原告代表者個人口座に振り込んだ(乙70、72)。
B 前記Aの認定事実によれば、平成28年8月30日、同年9月26日、同年11月25日及び平成29年2月10日、原告に対する代金として、計2586万0400円が原告代表者個人口座に振り込まれたところ、同年8月30日時点では、原告口座が開設されていなかったものの(前記(ア)A(C))、前記(ア)Bで述べたところと同様に、原告代表者は上記振込みによって上記2586万0400円を取得したと認められる。
(ウ) 原告の主張について
A 原告は、原告代表者において、決算期までに原告との間の貸し借りを必ず精算するようにしていたとして、①甲第26号証の2の各表(2枚目及び後ろから7枚目)のとおり、原告の経費計3328万7509円を立替払いしたほか、②平成29年3月2日、同月3日、同月13日、同月21日に原告に計1407万円を振り込んで、原告代表者個人口座に振り込まれた前記(ア)A(A)の報酬及び前記(イ)A(A)及び(B)の各代金(以下、単に「前記(ア)及び(イ)の報酬等」という。)に相当する額を原告に返済した旨を主張し、原告代表者は、原告と原告代表者との間では、■■が作成していた月次試算表を基に決算期までに精算をしていたなどとして、上記主張に沿う供述等(甲34、原告代表者本人)をする。
B しかし、前記A①及び②の合計額(4735万7509円)と、前記(ア)及び(イ)の報酬等の合計額(4017万0296円)との間には、718万7213円もの差がある上、前記A①及び②の立替払い等は、前記(ア)及び(イ)の報酬等が原告代表者の口座に振り込まれた直後に振込み等がされたものではなく、原告の決算期の直前に振込み等がされたものでもない。そして、前記A①及び②の立替払い等が、原告代表者において、原告代表者個人口座に振り込まれた前記(ア)及び(イ)の報酬及び代金の精算をするためにされたものであることをうかがわせる帳簿等(月次試算表を含む。)の客観的な証拠はない。そうすると、原告代表者の上記Aの供述等は信用することができない。
そして、前記(ア)及び(イ)のとおり、前記(ア)及び(イ)の報酬等の原告代表者個人口座への振込みにより、原告代表者において、いったん上記報酬及び上記各代金を取得したものと認めるのが相当であり、前記A①及び②の立替払い等がされたとしても、そのことは、前記(ア)及び(イ)の認定判断を左右するものではない。
原告の上記主張は、採用することができない。
(エ) 小括
以上によれば、本件表2各金員のうち、平成28年7月14日、同年8月30日、同年9月26日、同年11月25日及び平成29年2月10日を支払年月日とする計4017万0296円は、原告が原告代表者に対して支払った「賞与」に当たるというべきである。
ウ 平成29年3月21日を支払年月日とする100万円について
(ア) 掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
A 原告は、平成29年3月21日付けで、■■との間で、目的物を原告が所有する太陽光発電設備とし、代金を2148万円とする売買契約を締結した(乙73)。
B ■■■は、上記Aと同日、原告代表者に対し、上記代金の一部として、100万円を現金で支払い、原告名義の同額の領収証を受領した(乙74)。■■が上記100万円を現金で支払ったのは、原告代表者から支払方法の指定があったためであり、上記100万円を控除した残代金は、原告口座に振り込む方法により支払われた(乙75)。
C 原告代表者は、上記Aと同日、原告代表者個人口座から原告口座に245万円を振り込んだ(甲32)。
(イ) 前記(ア)のとおり、前記(ア)の100万円は、原告代表者が、平成29年3月21日、原告に対する代金を現金で受領したものであるが、同日、原告代表者個人口座から原告口座に245万円が振り込まれた一方で、原告代表者は上記100万円を個人的な用途に費消したことや、原告代表者の財産と上記100万円が混在するに至ったことをうかがわせる証拠はない。
本件表2各金員は、平成29年5月期、平成30年5月期及び令和2年5月期の法人税の各修正申告書において、「売上計上漏れ」の項目に記載され、社外に流出したとして所得金額が算出されているものの(前記ア)、本件調査において作成された■■の質問応答記録書(乙11)によっても、■■において上記100万円の行方を把握することができなかったにすぎないとも考えられ、■■がどのような根拠により、どのような意味で、本件表2各金員について社外に流出したものとして所得金額を算出したのかは明らかでない。
以上のとおり、本件表2各金員のうち、平成29年3月21日を支払年月日とする上記100万円については、原告が取得したと認めるに足りる証拠はないから、原告が原告代表者に対して支払った「賞与」に当たるということはできない。
エ 平成28年8月16日、平成29年3月9日、同月14日、同年6月23日及び令和元年10月7日を支払年月日とする計2338万9760円について
(ア) 前記前提事実に加え、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
A ■■■■は、■■■■■■■■■■に設立された、生命保険の募集に関する業務等を目的とする株式会社であり、■■■■■■■■以降の代表取締役は原告代表者である。
■■■は、保険代理店業を営んでいたが、平成26年頃までに2億円近くの負債を抱えていたことから、同年頃、保険代理店業を事実上停止して、■■弁護士に債務整理(私的整理)を委任し、債権者に対する返済に充てるため、平成29年7月24日に600万円、平成30年1月26日に1000万円を本件弁護士預かり金口座に振り込んだ(乙81、96)。
B ■■■■と■■■は、平成27年6月30日、■■■が■■■に対して太陽光発電事業の売買の紹介、助言等を行う内容のアドバイザリー契約を締結した(甲29)。
■■■■は、同日、■■■■■■■■■■■■との間で、同組合を売主、■■■を買主として、土地及び太陽光発電設備の売買契約を締結した(甲28、乙77)。
C 原告代表者は、平成28年8月12日、■■■■が■■■■■■に対して支払義務を負っていた前記Bの太陽光発電設備の設置工事代金440万円を、■■■■に代わって■■■■■■に支払い、同月15日、■■■■に対し、上記440万円を同月16日に「弊社」宛てに振り込むよう依頼した(甲25、31の1)。
■■■■は、前記Bの太陽光発電設備の設置工事代金440万0960円についての■■■名義の平成28年8月15日付け請求書の交付を受け、同月16日、上記額を■■■口座に振り込んだ(甲26の1・資料2、甲31の2、乙76、77)。
原告代表者は、同日、■■■口座から原告代表者個人口座に上記額を振り込んだ(乙76)。
D ■■■■は、平成29年3月9日、607万4960円を■■■口座に振り込んだ(乙76)。
E ■■■■は、平成29年3月14日、245万6964円を■■■口座に振り込んだ(乙76)。
F ■■■■は、造成・整地費用等計584万2800円についての■■■■名義の平成29年6月21日付け請求書の交付を受け、同月23日、上記額を■■■口座に振り込んだ(甲26の1・資料26、乙76)。
原告代表者は、同日、■■■との間で、原告代表者が■■■に対して再生可能エネルギー発電設備の認定等に係る権利等を代金570万円で譲渡する内容の契約を締結し、■■■口座から原告代表者個人口座に上記額を振り込んだ(乙76)。
G ■■■■は、発電所修復工事費等461万4076円についての■■■■名義の令和元年9月11日付け請求書の交付を受け、同年10月7日、上記額を■■■口座に振り込んだ(甲26の1・資料30、乙76)。
原告代表者は、同日、■■■口座から、本件弁護士預かり金口座に200万円を、原告代表者個人口座に250万円を振り込んだ(乙76)。
(イ) 被告は、■■■には事業実態がなく、■■■口座は原告代表者が実質的に支配する口座であったから、■■■口座に入金された時点で原告代表者が実質的に取得したものといえる旨を主張する。
しかしながら、前記(ア)の認定事実によれば、■■■は、平成26年頃、保険代理店業を事実上停止したが、その後、太陽光発電事業に係る事業を行っていたものと認めることができ、前記(ア)BないしGの時点において、■■■の事業実態がなかったものと認めるに足りる証拠はない。なお、前記(ア)Bの太陽光発電整備が、原告のウェブサイトにおいて、原告の太陽光発電所販売実績の一つとして挙げられているとしても(乙78、79)、そのことから直ちに■■■の事業実態がなかったものとは認められず、他に、■■■の事業実態がなかったことを認めるに足りる的確な証拠はない。
そうすると、■■■口座に入金されたことをもって、原告代表者が実質的に取得した旨をいう被告の主張は、採用することができない。
(ウ) また、前記(ア)C、F、Gのとおり、原告代表者は、■■■■が■■■口座に振込みをした当日に、その全部又は一部を原告代表者個人口座に振り込んでいるものの、同C、Fの原告代表者個人口座への振込みについては、原告代表者による立替払いの精算であるか、契約に基づくものであると認めることができるから、この点からしても、原告代表者が取得したものということはできない。
(エ) したがって、本件表2各金員のうち、平成28年8月16日、平成29年3月9日、同月14日、同年6月23日及び令和元年10月7日を支払年月日とする計2338万9760円については、原告が取得したと認めるに足りる証拠はないから、原告が原告代表者に対して支払った「賞与」に当たるということはできない。
(3) 本件表3各金員について
ア 本件表3各金員の概要
本件表3各金員は、本件各修正申告書のうち平成29年5月期ないし令和元年5月期の法人税の各修正申告書の別表四の加算項目欄に「外注費過大」として記載された金員であり、上記各修正申告書においては、これらの原告の資産が社外に流出したとして所得金額が算出されている(乙3、4、5の各3枚目)。
イ 平成28年10月24日から平成29年5月22日までを支払年月日とする計2008万円について
(ア) 証拠(乙70、84)及び弁論の全趣旨によれば、原告代表者は、別表3の「支払年月日」欄の平成28年10月24日から平成29年5月22日までの年月日に、「支払金額」欄記載の額(計2008万円)を原告口座から原告代表者個人口座に振り込んだことが認められる。
したがって、本件表3各金員のうち、上記計2008万円は、原告が原告代表者に対して支払った「賞与」に当たるというべきである。
(イ) 原告は、前記(ア)の金員のうち、平成28年10月24日、同月25日、平成29年1月13日、同月25日(200万円中150万円)、同年2月14日、同年3月30日、同年4月27日(100万円中50万円)を支払年月日とする計500万円につき、本件表1各金員(「給与」(所得税法28条1項)であることにつき争いのない金員)の一部である旨を主張する。
そこで検討すると、本件表1各金員は、本件各事業年度等の法人税の確定申告に係る損益計算書において「販売費及び一般管理費」のうち「役員報酬」として記載された金員であり、「販売費及び一般管理費」においては「役員報酬」と「外注費」は区別された科目とされている一方(乙13・9頁、乙17・12頁、乙19・11頁、乙20・11頁)上記計500万円は、平成29年5月期の法人税の各修正申告書の別表四の加算項目欄に「外注費過大」として記載された金員であって、本件表1各金員の一部であるとは認め難い。また、上記計500万円の支払時期は不定期であって給与の支払時期としては不自然である上、平成28年分及び平成29年分の原告の原告代表者に係る源泉徴収簿(乙62、63)に記載された支給月日とも整合しないから、給与として支払われたものとは認め難く、この点からも、本件表1各金員の一部であると認めることは困難である。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(ウ) 原告は、前記(ア)の金員のうち、その余の金員は、役員借入金の弁済であるか、原告の原告代表者に対する貸付けである旨を主張する。
しかし、原告が役員借入金であると主張する原告と原告代表者との間の金銭の授受が、役員借入金としてされたものであることや、前記(ア)の金員(前記(イ)の金員を除く。)が原告からの役員借入金の返済や貸付けとして支払われたことについて、客観的な証拠はない上、原告の平成29年5月期の決算報告書(乙13・6枚目以下)には、役員借入金勘定の計上等の原告の主張と整合する記載がない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
ウ 平成29年5月29日を支払年月日とする230万円について
(ア) 証拠(乙70、84)及び弁論の全趣旨によれば、原告代表者は、平成29年5月29日、原告口座から、50万円を原告代表者個人口座に振り込み、180万円を原告代表者の妻(■■■■。なお、原告の役員、従業員等ではない。)名義の預金口座に振り込んだことが認められる。
上記180万円は、原告代表者が、その妻に振り込んだ金員であって、実質的には、原告代表者が取得したものということができるから、本件表3各金員のうち、平成29年5月29日を支払年月日とする230万円は、その全額が、原告が原告代表者に対して支払った「賞与」に当たるというべきである。
(イ) 原告は、①230万円中、180万円は、原告が原告代表者の妻の車を購入したため、原告代表者の妻に対して売買代金の支払をしたものであり、②残50万円は、本件表1各金員(「給与」(所得税法28条1項)であることにつき争いのない金員)の一部(平成29年5月分)である旨を主張する。
上記①については、平成29年6月19日、自動車の所有者を原告代表者の妻から原告に変更する旨の移転登録がされたものの(甲14)、原告代表者の妻と原告との間で代金を180万円とする上記自動車の売買契約が成立したことや、平成29年5月29日の180万円の振込みが上記代金の支払としてされたことについて、客観的な証拠はない(契約書等がない上、平成30年5月期の決算報告書(乙17・9枚目以下)における上記自動車の取得価額が180万円であることを前提にした減価償却費の計上等もされていない(なお、上記自動車に関し、固定資産勘定や減価償却費の計上はされていない。))。したがって、原告の上記主張は採用することができない。
また、上記②については、前記イ(イ)で述べたところと同様に、採用することができない。
エ 平成29年7月24日及び平成30年1月26日を支払年月日とする計1700万円について
(ア) 証拠(乙84)及び弁論の全趣旨によれば、原告代表者は、平成29年7月24日及び平成30年1月26日、計1700万円を、原告口座から■■■口座に振り込んだことが認められる。
(イ) 被告は、■■■は、事業実態がなく、■■■口座は、原告代表者が実質的に支配する口座であったから、■■■口座に入金された時点で原告代表者が実質的に取得したものといえる旨を主張する。
しかし、前記(2)エのとおり、■■■は、前記(ア)の当時、事業実態がなかったと認めることはできないから、被告の上記主張は採用することができない。
(ウ) したがって、本件表3各金員のうち、平成29年7月24日及び平成30年1月26日を支払年月日とする計1700万円については、原告が取得したと認めるに足りる証拠はないから、原告が原告代表者に対して支払った「賞与」に当たるということはできない。
オ 平成31年1月31日を支払年月日とする2000万円について
(ア) 証拠(乙84~86)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
原告代表者と■■■■■■は、平成30年9月6日、原告代表者を認定事業者とする発電事業等の資産を■■■■■に代金1600万円で譲渡し、原告代表者が同年10月30日までに2000万円を■■■■に支払うことにより上記資産を買い戻すことができる旨の契約を締結した。
原告代表者と■■■■■■は、平成31年1月31日、上記契約を解約する旨の合意をし、原告代表者は、同日、原告口座から■■■■■名義の預金口座に2000万円を振り込んだ。
(イ) 前記(ア)の認定事実によれば、本件表3各金員のうち、平成31年1月31日を支払年月日とする2000万円は、原告代表者が前記(ア)の資産を買い戻すための金員を、原告口座から出金したものであるから、原告が原告代表者に対して支払った「賞与」に当たるというべきである。
(ウ) 原告は、前記(ア)の金員は、役員借入金の一部弁済である旨を主張する。
しかし、原告が役員借入金であると主張する原告と原告代表者との間の金銭の授受が、役員借入金としてされたものであることや、前記(ア)の原告口座から■■■■■名義の預金口座への振込みが原告からの役員借入金の返済として行われたものであることについて、客観的な証拠はない上、原告の令和元年5月期の決算報告書(乙19・8枚目以下)には、役員借入金勘定の計上等の原告の主張と整合する記載がない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(4) 争点2の結論
以上のとおり、本件表2各金員及び本件表3各金員のうち、前記(2)イ、(3)イ、ウ及びオの計8255万0296円については、原告が原告代表者に対して支払った「賞与」に当たるということができるが、前記(2)ウ、エ及び(3)エの計4138万9760円については、原告が原告代表者に対して支払った「賞与」に当たるということはできない。
(5) 本件各納税告知処分に係る納税義務(源泉所得税等の納税義務)の不存在確認請求について
以上を前提に、原告が納付義務を負う源泉所得税等の額を計算すると、別紙1源泉所得税等目録記載の計3573万8440円となり(その計算の根拠は、別表5-1ないし5及び別表8記載のとおりである。)、本件各納税告知処分に係る納税義務の合計額を下回る。
したがって、原告の請求のうち、本件各納税告知処分に係る納税義務及びこれに係る延滞税の納税義務の不存在確認請求は、別紙1源泉所得税等目録記載の額を超えて存在しないことの確認を求める限度で理由がある。
(6) 本件源泉税等各賦課決定処分に基づく納税義務の不存在確認請求について
本件源泉税等各賦課決定処分は、前記(1)の納税告知処分と異なり、課税処分であるから、本件源泉税等各賦課決定処分に基づく納税義務は、本件源泉税等各賦課決定処分が重大かつ明白な瑕疵があって無効と認められる場合でない限り、不存在であるということはできない。
本件源泉税等各賦課決定処分は、原告が本件各納付告知処分に係る源泉所得税等のうち、本件表3各金員に係るものについて、仮想又は隠蔽の事実が認められること等を理由としてされたものであり、本件源泉税等各賦課決定処分において仮想又は隠蔽に当たるとされた事実には、■■■が休業状態であったことを前提に、仮想又は隠蔽に当たると判断された事実も含まれる(甲12、乙36の1・2)。
しかしながら、前記1(1)エ及び前記(2)オ(ア)の認定事実によれば、■■■は、平成26年頃には事業実態がなかったところ、原告代表者は、本件調査において、本件調査担当職員から、繰り返し面談を求められたにもかかわらず、これに応じなかったのであって、■■■が事業を再開した旨の主張をしていなかったものであるし、本件全証拠によっても、■■■が本件各事業年度等において事業を再開していたことが明白とまではいえない。
したがって、本件源泉税等各賦課決定処分が無効であるということはできないから、原告の請求のうち、本件源泉税等各賦課決定処分に基づく納税義務の不存在確認請求は、理由がない。
3 結論
以上によれば、原告の請求は、主文の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官 鎌野 真敬
裁判官 志村 由貴
裁判官 中川 大夢
(別紙1~4-2)省略
(別表1~8)省略
