【所得税】東京高裁令和7年10月8日判決

判決イメージ 判決書(所得税)

国税局に情報公開請求をし、表題の判決書を入手してみました。

事案の概要

原告は、平成27年から平成30年にかけて、海外のカジノ施設においてカジノ行為の一種であるバカラを複数回行ったが、バカラにより得た所得はないものとして平成27年分ないし平成30年分の所得税等の各確定申告を行ったところ、税務署長から、予想が的中したゲームごとに、配当として得たチップの額面相当額(収入)から同ゲームに賭けたチップの額面相当額(支出)を控除して一時所得の金額を算定すべきであるとして、同各年分の所得税等の各更正処分及び各過少申告加算税賦課決定処分を受けた。

本件は、原告が、上記各処分のうち、原告の主張する税額を超える部分は違法であると主張して、同各部分の取消しを求める事案。

基本情報

・税目:所得税
・処分行政庁:米子税務署長事務承継者麻布税務署長
・課税年度:平成27~30年分
・提訴裁判所:東京地方裁判所
・提訴年月日:令和7年3月11日
・判決日:令和7年10月8日
・結果:棄却

争点

・本件バカラ所得に係る「収入すべき金額」(所得税法36条1項)
・〇〇換金制限による影響の有無(平成27年分に限る。)
・本件バカラ所得に係る必要経費の範囲
・コミッション等に係る一時所得との内部通算の可否

判決書PDFデータ

東京高裁令和7年10月8日判決

原審はこちら⇩

【所得税】東京地裁令和7年2月27日判決
国税局に情報公開請求をし、表題の判決書を入手してみました。事案の概要原告は、平成27年から平成30年にかけて、海外のカジノ施設においてカジノ行為の一種であるバカラを複数回行ったが、バカラにより得た所得はないものとして平成27年分ないし平成3...

判決書テキスト

※以下は生成AIでテキスト化したものです。

主   文

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。

2 米子税務署長が令和3年2月15日付けで控訴人に対してした平成27年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分のうち納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)470万4400円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

3 米子税務署長が令和3年2月15日付けで控訴人に対してした平成28年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分のうち納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)267万4200円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定処分のうち加算税の額11万8000円を超える部分を取り消す。

4 米子税務署長が令和3年2月15日付けで控訴人に対してした平成29年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分のうち納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)919万3900円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定処分のうち加算税の額79万9000円を超える部分を取り消す。

5 米子税務署長が令和3年2月15日付けで控訴人に対してした平成30年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分のうち納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)122万1800円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

第2 事案の概要(用語の略称は特に断らない限り原判決の例による。)

1 本件は、控訴人が、海外のカジノ施設において行ったカジノ行為の一種であるバカラにより得た所得はないものとして、平成27年分から平成30年分までの所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の各確定申告をしたところ、米子税務署長から所得税等の各更正処分及び各過少申告加算税賦課決定処分を受けたことから、これらの各処分のうち控訴人の主張する税額を超える部分は違法であると主張して、当該部分の取消しを求めた事案である。

2 原審が控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人がこれを不服として控訴した。

3 所得税法の定め、前提事実、争点及び当事者の主張は、後記第3の2において当審における控訴人の主張を摘示するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1から5までに記載のとおりであるから、これを引用する。

第3 当裁判所の判断

1 当裁判所も、控訴人の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、次のとおり補正し、後記2のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1から5までに記載のとおりであるから、これを引用する。

(1) 原判決15頁21行目末尾に改行して、次のとおり加える。

「控訴人は、争点1に関し、当審においても、ライブチップの客観的交換価値は0円であり、少なくとも額面相当額ではないと主張する。しかし、配当としてライブチップを受領した者であれば、ライブチップの額面相当額について換金又は充当することができるほか、NNチップに交換するなどして新たなゲームに利用することもできることを考慮するならば、ライブチップに額面相当額の経済的価値があると認めた原判決の説示は相当である。控訴人は、顧客が賭けるチップはカジノ会社の取り分だけ価値が減少するとも主張するが、ライブチップが額面相当額でNNチップに交換すること等ができるものであることは上記のとおりであるから、控訴人の主張する事情はライブチップの経済的価値に影響しない。したがって、控訴人の主張を採用することはできない。」

(2) 原判決20頁6行目末尾に改行して、次のとおり加える。

「控訴人は、争点1に関し、当審においても、本件各プログラムと本件各クレジット契約は不可分一体であり、本件バカラ所得の収入を総収入金額に計上すべき時期は本件各プログラム等が終了した時であると主張する。しかし、配当としてライブチップを受領することにより、ライブチップに係る経済的利益を得ることができるのであるから、本件バカラにおいて予想が的中し、配当としてライブチップを受領することができるようになった時点で収入の原因となる権利が確定したものと認めた原判決の説示は相当である。その上、本件各プログラム等の具体的な内容を見ても、上記認定を左右すべきものが見当たらないことは上記のとおりであるから、控訴人の主張を採用することはできない。」

(3) 原判決20頁17行目末尾に改行して、次のとおり加える。

「控訴人は、争点2に関し、当審においても、換金額に上限があり、予想が的中した時点ではそれ以上の収入の可能性がないのであるから、■換金制限は本件バカラ所得の収入に影響すると主張する。しかし、配当としてライブチップを受領すれば、1ゲーム日当たりの換金額の上限があったとしても、これを上回った部分についても翌日以降に換金又は充当することができるほか、NNチップに交換するなどして新たなゲームに利用することもできるところ、■換金制限を踏まえて検討しても、換金自体が否定されるわけではなく、ゲーム利用及び充当が制限されることもないのであるから、■換金制限をもってライブチップの経済的価値を否定すべき事情とはいえないとした原判決の説示は相当であり、控訴人の主張を採用することはできない。」

(4) 原判決20頁26行目の「個別対応的に計算し」を「個別的な対応関係にあるものを差し引きして計算し」と改め、21頁15行目末尾に改行して、次のとおり加える。

「控訴人は、争点3に関し、当審においても、本件各プログラムと本件各クレジット契約は不可分一体であり、総収入金額から控除する金額について、予想が的中したゲームに賭けたチップの額面相当額に限られるとした原判決の判断は誤りであると主張する。しかし、配当としてライブチップを受領することにより、ライブチップに係る経済的利益を得ることができるのであり、本件バカラにおいて予想が的中し、配当としてライブチップを受領することができるようになった時点で収入の原因となる権利が確定したものと認められることからすれば、当該配当に対応する支出として、予想が的中したゲームに賭けたチップの額面相当額を総収入金額から控除することとした原判決の説示は相当であるから、控訴人の主張を採用することはできない。」

(5) 原判決22頁23行目末尾に改行して、次のとおり加える。

「控訴人は、争点4に関し、当審においても、本件各プログラムと本件各クレジット契約は不可分一体であり、控訴人が賭けた全てのチップの額面相当額について、インセンティブを得るために支出したものとして控除すべきであると主張する。しかし、本件各プログラムを利用してインセンティブを得る経済的合理性が配当を得るために賭けたチップの損失を減じる点にあると考えられることは上記のとおりであり、控訴人の主張を踏まえて本件各証拠を検討しても、上記判断を覆すべき事情は認められない。そうすると、控訴人が賭けたチップについて、本件バカラにおいて配当を得るために支出したものと認められ、インセンティブを得るために支出したものとは認められないとした原判決の説示は相当であるから、控訴人の主張を採用することはできない。」

2 (1) 控訴人は、争点1に関し、当審において、原判決の別紙4の別表1から5までに記載されている本件バカラに係る損益について、推測に基づく金額にとどまり、立証として不十分であると主張する。

原判決の別紙4の別表1から5までは、本件バカラに係る損益について米国及びシンガポールの各税務当局から提供された資料に基づいて作成されたものであるところ(乙11)、そのうちシンガポールにおける損益について見ても、具体的な金額等が記載されており、直ちに不自然又は不合理というべき記載内容は認められない。控訴人が当審において提出する証拠(甲25)には、■の回答として、「テーブルゲームについてのギャンブル活動に関連する情報は、■のテーブルゲームの係員による目視を通じて収集されます」、「推測勝ち/負けのデータは概算であり、顧客のギャンブル活動の完全な記録を構成するものではありません」、「■は、本情報の正確性又は完全性について、明示的又は黙示的にも、表明、保証又は確約を行うものではありません」等の記載があるものの、これらの回答を考慮しても、■において情報の正確性や完全性について責任を負わない旨を記載するものにとどまり、収集された情報の正確性や完全性について疑義を生じさせる具体的な事情は記載されていない。本件バカラに係る損益が上記各別表記載のとおり認められることを前提とする原判決の説示は相当であり、控訴人の主張を踏まえて本件各証拠を検討しても、他に本件バカラに係る損益についての認定を覆すべきものは見当たらない。

したがって、控訴人の上記主張を採用することはできない。

(2) そのほか、控訴人は、原判決の認定及び判断に対する種々の不服を述べるものの、控訴人の主張を踏まえて本件各証拠を検討しても、上記認定及び判断を覆すべき事情は認められない。

3 よって、控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第17民事部
裁判長裁判官 吉田 徹
裁判官 森脇 江津子
裁判官 高田 公輝