証券口座乗っ取り被害補償における顧客の課税関係について

所得税

証券口座乗っ取り被害補償における顧客の課税関係について、国税庁個人課税課などが国税庁長官・次長・課税部長に説明した際の資料を、開示請求により入手しました。

証券口座乗っ取り被害補償における顧客の課税関係について

以下は、生成AIでテキスト化したものです。

証券口座乗っ取り被害補償における顧客の課税関係について

1 概要

〇 本年に入り、フィッシングサイト等で窃取した顧客情報(ログインIDやパスワード等)による、証券口座への不正アクセス・不正取引の被害が発生していることが判明。
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〇 各証券会社は、個社の実情に応じた補償方針をそれぞれ定め、顧客に対し、当該方針に沿った補償を実施している(年内には終了予定)。
〇 今般、金融庁及び日証協より、各証券会社による補償対応を受けた顧客の課税関係について照会があった。

2 事実関係

(1)証券会社による補償までの経緯

〇 本年4月以降、証券口座への不正アクセス・不正取引の被害が急増。
〇 4月22日、加藤財務大臣兼内閣府特命担当大臣は、
・ 金融サービスに対する信頼の維持は、金融取引の前提となるものであり、金融庁としては、投資家の皆様が 安心して株式等の取引を行うことができるよう、被害防止に取り組んでいくとした上で、
・ 顧客への補償について、証券会社に対し、被害の回復に向けて誠実な対応を取るよう指示した旨を御発言【参考1】。
〇 5月2日、日証協は、約款等の定めにかかわらず【参考2】、一定の被害補償を行う方針とする大手証券会社等10社との申し合わせを公表【参考3】。
(※) 野村證券、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、大和証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、SMBC日興証券、松井証券、三菱UFJeスマート証券。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
〇 その後、当該申し合わせを受け、各証券会社は補償方針を公表。

(2)被害の態様(手口)

〇 犯罪者は、フィッシング詐欺で窃取したIDやパスワードを利用して複数の被害口座に不正アクセスし、
・ 被害口座内にある株式等を不正に売却することで購入資金を確保した上で、
・ あらかじめ自身が保有しておいた中国株等を被害口座内で大量に購入することで株価を一時的に引き上げ、自身が売り抜けるというもの(ポンプ&ダンプ)。
⇒ 売り抜けた際、株価が大幅に下落することから、被害者が多額の損失を被ることとなる。

(3)補償の方法

〇 各証券会社は補償方針を公表しているところ、次のとおり、補償方針は大きく、原状回復と金銭補償の2通り存在する
・ 野村證券などの対面証券会社は、「原状回復」方針を採用
・ SBI証券などのネット証券会社は、「金銭補償」方針を採用

【原状回復】
〇 ■■■■■■■■■■■■■■■■■不正取引が行われる前の口座の状態に戻す対応を行う。また、不正取引に要した手数料等は口座に返還する。
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〇 不正取引による損益は被害者に帰属させず、特定口座の年間取引報告書や支払調書にも反映させない。

【金銭補償】
〇 ■■■■■■■■■■■■■■■■■次のとおり、損害額に対して一定の率(50%など)を乗じた金額等について補償金を支払う。

〔補償金の金額 = 損害額の50%の金額 + 不正取引に係る取引手数料〕
損害額 = 小型株等の取得価額 - 小型株等の売却金額(※)
※ 小型株について売却せずに口座内に残っている場合には、取得価額と基準価額(基準日における終値)との差額を損害額とみなす。

〇 その他、上記の補償金の他に、一律1万円の見舞金を支給する例もある。

(4)照会事項

〇 証券会社による補償対応について、特段の課税関係は生じないと考えてよいか、具体的には、次のとおり取り扱ってよいか。
① 原状回復対応については、不正取引による損益は税務上、被害者に帰属しない。
② 金銭補償対応について、被害者が受け取る補償金は非課税とされる。
③ 損害に対する雑損控除の適用はない。

3 法令等

(1)法令等の定め【参考4】

イ 損害賠償金
〇 不法行為その他の突発的な事故により、資産の損害につき支払を受ける、「損害賠償金その他これに類するもの」は、非課税とされる(所法9①十八、所令30)。
(※) その趣旨は、これらの金員が受領者の財産に受けた損害を補填する性格のものであって、原則的には受領者である者に利益をもたらさないからとされる。
ロ 雑損控除
〇 災害又は盗難若しくは横領によって、生活用資産について損害を受けた場合等に適用される(所法72)。

(2)先例等

イ 政府税制調査会答申(昭和36年12月)
〇 「当調査会は、…補償金等を受ける原因、損害の種類等に応じ、各種の態様を区分して、総合的な検討を 行なった。この種の問題に対する取扱いは、その性質上、あまり理論にのみはしることは適当ではなく、常識的に支持されるものでなければならない。」と論じている。
ロ 暗号資産流出事件に伴う補償金の課税関係について(平成30年4月)
〇 一般的に、顧客から預かった暗号資産を返還できない場合に支払われる補償金は、返還できなくなった暗号資産に代えて支払われる金銭であり、その補償金と同額で暗号資産を売却したことにより金銭を得たのと同一の結果となることから、雑所得として課税対象とした【参考5】。

4 検討

(前提)

〇 不正取引の私法上のステータスについては■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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〇 課税関係については、明文の規定などがない限り、私法上の法律関係を根拠として判断されることから、本件においても上記の個社における■■■■■■■■取り扱いを判断の基礎にして、検討する。

(1)照会事項①について(原状回復)

〇■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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■■■■■■■■本件の不正取引がなかったものとして取扱って差し欠えないものと考える。

(2)照会事項②について(金銭補償)

〇 法律上、不正取引をした犯罪者が被害を受けた顧客に対し損害賠償金の支払義務が生じるところではあるが、本件の補償金は、第三者である証券会社から支払われており、そのような補償金が、非課税とされる、「損害賠償金その他これに類するもの」(所令30)に該当するか問題となる。
〇 裁判例によれば、「損害賠償金その他これに類するもの」の意義については、私法上の厳密な支払義務の成立を問題とするものではなく、「納税者に損害が現実に生じ、または生じることが確実に見込まれ、かつ、その補填のために支払われるもの」(いわゆる実損補填)と解するのが相当とされている【参考6】。
〇■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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〇 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■実損害の範囲内であることから、非課税となる「損害賠償金その他これに類するもの」に該当するものとして差し支えないと考える。
〇 なお、暗号資産流出事件は「返還できなくなった暗号資産に代えて支払われる金銭での補償」(=暗号資産の対価としての性質を有するもの)に対する課税関係について判断したものであるところ、本件の補償金は株式の対価として支払われるものではないことから、先例とはならない。

(3)照会事項③について(雑損控除)

〇 金銭補償については、損害額の全額が補償されないので、補償されない部分の金額について雑損控除の適用が受けられるか、問題となる。
〇 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■雑損控除の適用事由(災害・盗難・横領)に該当しないため、同控除の適用はない【参考7】。

5 回答案

〇 証券会社による補償対応について、特段の課税関係は生じない旨回答することとしたい。
〇 なお、各証券会社において、被害者に対し、例外的に個別の対応をすることも考えられるところ、そのような個別の対応を実施した場合において、課税関係に疑義があるときは、日証協を通じて、国税庁まで照会させることとしたい。

6 今後の対応(周知)

〇 被害者への課税関係の周知については、
・ 本件事案は、事案の態様が一般的ではなく、多要素認証の導入に伴って発生件数は減少していること
・ 納税者の申告に特段の影響を与えるものではないことから、
(国税庁HPによらずに、)日証協経由で回答を伝えた上で、年内に各証券会社のHPなどを通じて行うこととしたい。

[掲載文案のイメージ]
〇 今般のフィッシング詐欺等による不正アクセス等の補償対応等に伴い、原則として特段の課税関係は生じません。

〇 また、併せて、各局にその旨の事務連絡を発遣することとしたい。

参考資料

【参考1】加藤財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見(令和7年4月22日)

問 2点目、金融庁の関連で、金融庁が証券口座における不正取引の被害が急増していることについて、4月18日に注意喚起を行いましたが、本件に関する大臣の受け止めと、顧客への補償についてどのようにお考えか、お願いいたします。

答 また、2点目でありますけれども、証券口座のインターネット取引サービスに関し、不正アクセス・不正取引による被害が急増していることを受け、金融庁のウェブサイトにおいて、4月18日に改めて注意喚起を行ったところであります。
金融サービスに対する信頼の維持は、金融取引の前提となるものであり、金融庁としては、投資家の皆様が安心して株式等の取引を行うことができるよう、引き続き、業界団体や各証券会社とも緊密に連携し、不正アクセス・不正取引の被害防止に取り組んでまいります。
また顧客への補償についてでありますが、各社に対して顧客の不安を解消するべく問合せや相談に真摯に対応し、被害の回復に向けて誠実な対応をとるよう指示したところであります。
各証券会社における検討に加えて、日本証券業協会においても、各証券会社とともに、補償の在り方について検討していると承知をしております。金融庁としては、各証券会社及び業界において顧客の立場に立った適切な対応が行われるか、その検討状況を引き続きフォローしていきたいと考えております。

【参考2】SBI証券の約款・規程集

(免責事項)第 21 条 当社及び証券投資情報等の発信元は、次に掲げる事項により生じるお客様の損害については、その責任を負わないものとします。
(1)~(3) 略
(4)お客様のユーザーネーム、パスワード等、取引情報等が漏洩し、盗用、不正使用(インターネット通信回線、コンピュータ等のシステム機器を介したもの等を含む)されたことにより生じた損害で、当社の故意又は重大な過失に起因するものでない場合
(5)~(8) 略

【参考3】日本証券業協会「10社申し合わせ」

https://www.jsda.or.jp/about/hatten/inv_alerts/alearts04/higai/higai10_20250502.pdf

【参考4】法令

〇所得税法(抄)
(非課税所得)
第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
一~十七 略
十八 保険業法(平成十七年法律第百五号)第二条第四項(定義)に規定する損害保険会社又は同条第九項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの
十九 略
2 略

(雑損控除)
第七十二条 居住者又はその者と生計を一にする配偶者その他の親族で政令で定めるものの有する資産(第六十二条第一項(生活に通常必要でない資産の災害による損失)及び第七十条第三項(被災事業用資産の損失の金額)に規定する資産を除く。)について災害又は盗難若しくは横領による損失が生じた場合(その災害又は盗難若しくは横領に関連してその居住者が政令で定めるやむを得ない支出をした場合を含む。)において、その年における当該損失の金額(当該支出をした金額を含むものとし、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。以下この項において「損失の金額」という。)の合計額が次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に掲げる金額を超えるときは、その超える部分の金額を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。
一~三 略
2 略
3 第一項の規定による控除は、雑損控除という。

〇所得税法施行令(抄)
(非課税とされる保険金、損害賠償金等)
第三十条 法第九条第一項第十八号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)は、次に掲げるものその他これらに類するもの(これらのものの額のうちに同号の損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分)とする。
一 略
二 損害保険契約に基づく保険金及び損害保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金(前号に該当するもの及び第百八十四条第四項(損害保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等)に規定する満期返戻金等その他これに類するものを除く。)で資産の損害に基因して支払を受けるもの並びに不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金(これらのうち第九十四条(事業所得の収入金額とされる保険金等)の規定に該当するものを除く。)
三 心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金(第九十四条の規定に該当するものその他役務の対価の性質を有するものを除く。)

【参考5】タックスアンサー「No. 1525 暗号資産交換業者から暗号資産に代えて金銭の補償を受けた場合」


暗号資産交換業者が不正送信被害に遭い、預かった暗号資産を返還することができなくなったとして、日本円による補償金の支払を受けました。
この補償金の額は、預けていた暗号資産の保有数量に対して、返還できなくなった時点での価額等を基に算出した1単位当たりの暗号資産の価額を乗じた金額となっています。
この補償金は、損害賠償金として非課税所得に該当しますか。


一般的に、損害賠償金として支払われる金銭であっても、本来所得となるべきものまたは得られたであろう利益を喪失した場合にこれが賠償されるときは、非課税にならないものとされています。
ご質問の課税関係については、顧客と暗号資産交換業者の契約内容やその補償金の性質などを総合勘案して判断することになりますが、一般的に、顧客から預かった暗号資産を返還できない場合に支払われる補償金は、返還できなくなった暗号資産に代えて支払われる金銭であり、その補償金と同額で暗号資産を売却したことにより金銭を得たのと同一の結果となることから、本来所得となるべきものまたは得られたであろう利益を喪失した部分が含まれているものと考えられます。
したがって、ご質問の補償金は、非課税となる損害賠償金には該当せず、雑所得として課税の対象となります。
なお、補償金の計算の基礎となった1単位当たりの暗号資産の価額がもともとの取得単価よりも低額である場合には、雑所得の金額の計算上、損失が生じることになりますので、その場合には、その損失を他の雑所得の金額と通算することができます。

【参考6】昭和54年5月31日大阪地裁判決(抄)

(四) 所得税法九条一項二一号の法意
所得税法九条一項二一号、同法施行令三〇条が損害賠償金、見舞金及びこれに類するものを非課税としたわけは、これらの金員が受領者の心身、財産に受けた損害を補填する性格のものであって、原則的には受領者である納税者に利益をもたらさないからである。
そうすると、ここにいう損害賠償金、見舞金及びこれに類するものとは、損害を生じさせる原因行為が不法行為の成立に必要な故意過失の要件を厳密に充たすものである必要はないが、納税者に損害が現実に生じ、または生じることが確実に見込まれ、かつその補填のために支払われるものに限られると解するのが相当である。
そうすると、当事者間で損害賠償のためと明確に合意されて支払われた場合であっても、損害が客観的になければその支払金は非課税にならないし、また、損害が客観的にあっても非課税になる支払金の範囲は当事者が合意して支払った金額の全額ではなく、客観的に発生し、または発生が見込まれる損害の限度に限られるとしなければならない。

【参考7】昭和37年1月・税制調査会における資産損失及び借地権に関する税制整備の審議経過

「詐欺は、盗難に比べて被害者の側にも責任がある場合があること、個々のケースにおいて詐欺であるかどうかの認定について税務執行上紛議が生ずるおそれがあること等の理由から」雑損控除の対象とされていない。