人生の中で何度も税務調査を受けた経験のある方はかなり少ないかと思います。なので、実際に調査官が自宅等に来た時に、どのように接すればよいのか分からないと悩んでいる方もいらっしゃるかと思います。自分がもし調査を受けるんだったら、調査官とどのように接するのか、元国税調査官である税理士が考えてみました。
基本的には普段通りに接すればよい
税務署の調査官が自宅にやってくるとなると、何をされるのか分からないということもあって、警戒心を抱くのが普通ではないかと思います。税務署の職員というと、メンタルが強く、何を言われようとも粛々と仕事を進めるというイメージがあるかと思いますが、実際にはそのようなイメージの職員は少数であり、大半は普通の人間です。
なので、税務調査時の調査官とも、基本的には普段通りに接すればいいのですが、調査を有利に進めたいのであれば、下記の4つについては意識しておくべきと考えます。
嘘はつかない
税務調査においては、法令や通達などを参照しても白黒はっきりしないグレーゾーンが争点となることがあります。
税務調査対応の良し悪しは、このグレーゾーンを、交渉によっていかに自分の有利な方向に持ってこれるかにかかってます。ここで、仮に不正がなかったとしても、調査官に嘘をついてしまうと、グレーゾーンを有利な方向に持ってくることが困難となり、交渉が不利になります。また重加算税を賦課するといった話もでてきてしまいます。「嘘をつかないなんて、当たり前のことじゃないか。」と思う方もいるかもしれませんが、意外と重要です。
敵対的な対応はとらない
私の経験上、調査に行って最初から全力で取り組むという調査官は少ないのではないかと思います。ただ、そうであったとしても、仮に敵対的な対応をとられると、調査官としては弱腰だと見られないよう本気で対応せざるを得なくなります。また、1人で手に負えない場合は組織で対応するということになりますので、マニュアル通りの対応となり、普段であれば交渉によって柔軟に対応してもらえたこともできなくなります。なので、敵対的な対応をとるべきではないです。
余計なことは言わない
普段の生活の中で、自分のことを聞いてくれる機会というのはほぼないかと思いますが、税務調査においては、自分の歴史について聴かれます。しかも、調査官は相槌を打ちながら熱心に話を聴いてくれるので、ついつい余計なことも話したくなるかもしれません。しかし、調査官はこの余計な話を、何か不正に結びつくこともあるのではないかと考えながら聴いてますので、余計な話から調査があらぬ方向に進むこともあります。雑談は構わないですが、基本的には聞かれたことにだけ答えるというスタンスで調査には臨むべきです。
分からないことは確認してから回答する
税務調査は通常であれば3年分が一度に調査され、過去のことを聴かれますが、人間の記録は時間が経つにつれて、あいまいになってきますので、過去のことを聴かれても即答できないこともあります。ここで、明確でないことについて、調査官の質問にあいまいな回答してしまうと、それを前提として調査が進み、あらぬ疑いをかけられることがあります。分からないことがあったら、その場で即答せずに後日調べてから回答するようにすべきです。
横柄・高圧的な態度には毅然とした対応を
調査官によっては、横柄な態度の方や高圧的な態度をとる方もいます。そのような場合は、毅然とした対応をとり、場合によっては上司にあたる統括官や総務課長にクレームを入れることも検討するべきです。