東京国税局作成「所得税消費税誤りやすい事例集(令和6年12月)」

確定申告

東京国税局の個人課税課・消費税課が作成した「所得税消費税誤りやすい事例集(令和6年12月)」を開示請求により入手しました。確定申告の際の参考にしていただければと思います。

所得税消費税誤りやすい事例集(令和6年12月)

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東京国税局作成「所得税消費税誤りやすい事例集(令和5年12月)」
東京国税局の個人課税課・消費税課が作成した「所得税消費税誤りやすい事例集(令和5年12月)」を開示請求により入手しました。確定申告の際の参考にしていただければと思います。・所得税消費税誤りやすい事例集(令和5年12月)昨年のものはこちら↓令...
東京国税局作成「所得税消費税誤りやすい事例集(令和4年12月)」
東京国税局の個人課税課・消費税課が作成した「所得税消費税誤りやすい事例集(令和4年12月)」を開示請求により入手しました。確定申告の際の参考にしていただければと思います。・所得税消費税誤りやすい事例集(令和4年12月)令和4年12月版で新た...

令和6年12月版で新たに追加された事例

住宅借入金等特別控除等(52頁)

(誤りやすいポイント)
令和6年中に、総床面積50㎡以上の一般住宅の新築等を行って居住の用に供した場合、住宅借入金等特別控除が適用できると考えている。

(補足説明)
居住開始が令和6年以後である場合には、次のいずれかの要件を満たす必要がある(措法41㉗、措令26㊲)。
① 令和5年12月31日以前に建築確認を受けていること。
② 令和6年6月30日以前に建築されていること。

定額減税(56~57頁)

(誤りやすいポイント)
青色事業専従者である配偶者を定額減税の対象としている。

(補足説明)
青色事業専従者として給与の支払を受ける者及び白色事業専従者(以下「青色事業専従者等」という。)は、定額減税の対象となる同一生計配偶者又は扶養親族(以下「同一生計配偶者等」という。)には含まれないこととされており、これらの者を同一生計配偶者等として定額減税の適用を受けることはできない(措法41の3の3②)。青色事業専従者等が所得控除の合計額以上の合計所得金額であるなどにより、定額減税前の所得税額がある場合には、青色事業専従者等が自身の申告等で定額減税の適用を受けることとなる。

 

(誤りやすいポイント)
合計所得金額が48万円を超える配偶者を定額減税の対象としている。

(補足説明)
合計所得金額が48万円を超える配偶者又は親族は、定額減税の対象となる同一生計配偶者又は扶養親族(以下「同一生計配偶者等」という。)には含まれないこととされており、これらの者を同一生計配偶者等として定額減税の適用を受けることはできない(措法41の3の3②)
【参考】控除しきれない定額減税の額がある場合や、定額減税前の所得税額がない場合については、調整給付の対象とされており、当該調整給付の支給は、市区町村の管轄である(詳しくは、内閣官房HP「新たな経済に向けた給付金・定額減税一体措置(外部サイト)」を参照。)。


(誤りやすいポイント)
給与等と公的年金等に係る源泉徴収税額の両方から定額減税の適用を受けている場合、確定申告の義務があると考えている。

(補足説明)
給与等に係る源泉徴収税額と、公的年金等に係る源泉徴収税額の両方から定額減税の適用を受けていることだけをもって、確定申告の義務は発生しない(所法121①③)。

 

(誤りやすいポイント)
非居住者である配偶者を定額減税の対象としている。

(補足説明)
定額減税の対象となる同一生計配偶者又は扶養親族については、居住者に限ることとされており、非居住者である配偶者を同一生計配偶者として定額減税の適用を受けることはできない(措法41の3の3②)。

確定申告等(58頁)

(誤りやすいポイント)
退職金について、退職所得の受給に関する申告書を提出した上、退職所得の全部について適正に源泉徴収が行われている場合、確定申告書に記載を省略しても良いと考えている。

(補足説明)
配偶者控除や基礎控除等の適用の可否を判定するための合計所得金額には、退職所得の金額を含めて計算する必要があるため、適正に源泉徴収が行われている退職所得も確定申告書に記載が必要である。
よって、確定申告書に記載しなかった退職所得を修正申告に入れること及び退職所得を確定申告書に記載しなかったことを理由とする更正の請求は認められる(所法121②)

消費税 課税の範囲(66頁)

(誤りやすいポイント)
課税事業者が事業を廃止したが、事業用固定資産に該当しなくなった資産の時価相当額を課税売上げとしていない。

(補足説明)
課税事業者が事業を廃止した場合、事業の廃止に伴い事業用固定資産に該当しなくなった車両等の資産は、事業を廃止した時点で家事のために消費又は使用したものとして、事業として対価を得て当該資産を譲渡したものとみなされ、非課税取引に該当しない限り、事業を廃止した時の当該資産の通常売買される価額(時価)に相当する金額を、当該事業を廃止した日の属する課税期間の課税標準額に含める必要がある(消法2①八、4⑤一)。

消費税 簡易課税制度(71頁)

(誤りやすいポイント)
相続人は、被相続人が簡易課税制度を選択していれば、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出していなくても簡易課税制度が選択できると考えている。

(補足説明)
相続があった場合において、被相続人が提出した「消費税簡易課税制度選択届出書」の効力は、相続人に及ばないことから、簡易課税制度を選択するには新たに当該届出書を提出しなければならない(消基通13-1-3の2)。

 

(誤りやすいポイント)
当課税期間の課税標準額が5,000万円を超えたため、簡易課税制度により、仕入控除税額の計算ができないと考えている。

(補足説明)
「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した事業者は、当課税期間の課税売上高が5,000万円を超えていても、基準期間(前々年)における課税売上高が5,000万円以下である場合には、簡易課税制度により、仕入控除税額の計算を行うことができる(消法37①)。

消費税 適格請求書等保存方式(75頁)

(誤りやすいポイント)
令和5年から「消費税課税事業者選択届出書」によって課税事業者となり、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者が、令和7年から免税事業者となるために、令和6年中に「消費税課税事業者選択不適用届出書」のみを提出した。

(補足説明)
「消費税課税事業者選択不適用届出書」のみを提出したとしても、適格請求書発行事業者の登録は取り消されないことから、免税事業者となることはできず、令和7年分についても消費税の申告義務が生ずる(消法9①)。
令和7年から免税事業者となるためには、令和6年12月31日までに「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出し、かつ、令和6年12月17日までに「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出する必要がある(消法9⑤、⑧、57の2⑩一、消令70の5③)。

(誤りやすいポイント)
割戻し計算により売上税額を計算した場合には、仕入税額について積上げ計算を選択することはできないと考えている。

(補足説明)
積上げ計算により売上税額を計算した場合には、仕入税額についても積上げ計算を適用する必要があるが、割戻し計算により売上税額を計算した場合には、仕入税額については積上げ計算又は割戻し計算のいずれかを選択することができる(消法30①、45⑤、消令46、62①、消基通11ー11ー9)。
(誤りやすいポイント)

令和4年分の消費税の確定申告から「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者となっているため、令和6年分の消費税の確定申告において、2割特例を適用することができない。

(補足説明)
「消費税課税事業者選択届出書」の提出により令和5年9月30日以前から引き続き課税事業者となる事業者は、令和5年10月1日の属する課税期間(令和5年分)にあっては2割特例の適用を受けることはできないが(平成28年改正法附51の2①一)、当該課税期間以外における2割特例の適用に係る制限はないため、令和6年分にあっては2割特例の適用を受けることができる。

 

(誤りやすいポイント)
令和5年中に適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者が、令和5年分の消費税の確定申告について基準期間の課税売上高が1,000万円以上であったことから2割特例の適用を受けられなかった場合、令和6年についても2割特例の適用を受けることはできない。

(補足説明)
令和5年分の消費税の確定申告において2割特例の適用を受けられなかった場合であっても、令和6年分について適格請求書発行事業者の登録を受けていなければ免税事業者である等2割特例の適用要件を満たすときには、2割特例を受けることができる。