令和7年12月19日裁決・仙裁(諸)令7-9

裁決書

国税不服審判所に情報公開請求をし、表題の裁決書を入手してみました。

事案の概要

請求人が技能実習生に支払った賃金について、原処分庁が、当該技能実習生は所得税法上の非居住者に該当するとして源泉徴収に係る所得税等の納税告知処分等をしたのに対し、請求人が、当該技能実習生は同法上の居住者に該当するとして、原処分の全部の取消しを求めた事案。

基本情報

・裁決番号:仙裁(諸)令7第9号
・税目:源泉所得税
・管轄:仙台国税不服審判所
・裁決日:令和7年12月19日
・結果:一部認容

争点

本件各技能実習生は、本件各支給日において国内に住所を有し、居住者に該当するか否か。

裁決書データ

令和7年12月19日裁決・仙裁(諸)令7-9

裁決書テキスト

※以下は生成AIでテキスト化したものです。

主   文

1 令和4年12月、令和5年4月、令和5年5月、令和5年7月、令和5年8月及び令和5年12月の各月分の源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の各納税告知処分並びに不納付加算税の各賦課決定処分は、いずれもその一部を別紙「取消額等計算書」のとおり取り消す。

2 その他の原処分に対する審査請求をいずれも棄却する。

理   由

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が技能実習生に支払った賃金について、原処分庁が、当該技能実習生は所得税法上の非居住者に該当するとして源泉徴収に係る所得税等の納税告知処分等をしたのに対し、請求人が、当該技能実習生は同法上の居住者に該当するとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

イ 所得税法第2条《定義》第1項第3号は、居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいい、また、同項第5号は、非居住者とは、居住者以外の個人をいう旨規定している。

ロ 所得税法施行令第14条《国内に住所を有する者と推定する場合》第1項柱書は、国内に居住することとなった個人が同項各号のいずれかに該当する場合には、その者は、国内に住所を有する者と推定する旨規定し、同項第1号は、その者が国内において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有することを掲げている(以下、所得税法施行令第14条第1項柱書及び同項第1号の規定を「本件推定規定」という。)。

ハ 所得税基本通達3-3《国内に居住することとなった者等の住所の推定》(以下「本件通達」という。)は、国内において職業に従事するため国内に居住することとなった者は、在留期間が契約等によりあらかじめ1年未満であることが明らかであると認められる場合を除き、本件推定規定に該当するものとする旨定めている。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

イ 請求人について

(イ) 請求人は、■■■■■■■■■■■に設立された■■■■■■■■■■■を目的とする法人である。

(ロ) 請求人は、ミャンマー連邦共和国(以下「ミャンマー」という。)に国籍を有する別表1の各団体監理型技能実習生(以下「本件各技能実習生」という。)を、雇用期間を1年未満とすること、賃金締切日は毎月15日で賃金支払日を毎月25日とすることなどを内容とする契約(以下「本件各契約」という。)に基づき雇用していた。

ロ 技能実習制度などについて

(イ) 技能実習制度は、我が国で開発され培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、その開発途上地域等の経済発展を担う人づくりに寄与することを目的とする制度である。

なお、特定技能制度は、深刻化する人手不足への対応として、生産性の向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野に限り、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人の受け入れのために設けられた制度であり、特定技能1号の在留資格の場合は通算で最大5年間の在留が許可される。

(ロ) 技能実習は、入国後1年目の技能等を修得するための活動(以下「第1号技能実習」という。)、第1号技能実習を修了した後の2、3年目の技能等に習熟するための活動(以下「第2号技能実習」という。)及び第2号技能実習を修了した後の4、5年目の技能等に熟達するための活動に区分される。第1号技能実習を修了した後に第2号技能実習へ移行するためには、技能実習の対象とする職種・作業が一定のものに該当する必要がある。

(ハ) 技能実習を行わせようとする者は、技能実習生ごとに技能実習の目標を記載した技能実習の実施に関する計画(以下「技能実習計画」という。)の認定を受ける必要がある。そして、当該目標は、第1号技能実習から第2号技能実習に移行するための技能検定等の合格とするか、修得する技能等を要する具体的な業務ができるようになることなどを内容とするものであって、かつ、技能実習の期間に照らして適切なものとすることとされている。

ハ 本件各契約について

本件各契約は、本件各技能実習生が技能実習1号の在留資格により入国して、請求人の業務に従事することでその効力が生じ、本件各契約の更新はしないものと定められていた。

ニ 本件各技能実習生について

(イ) 本件各技能実習生は、第1号技能実習に係る技能実習生として、在留期間が1年以内とされる技能実習1号の在留資格により入国した。

(ロ) 本件各技能実習生は、入国後、技能実習を行わせようとする者に対する指導・監督及び技能実習生の相談対応などを行う■■■■■■■■■■■(以下「本件監理団体」という。)が実施する日本語等の講習を受講していた期間は本件監理団体の宿泊施設が所在する■■■を住居地として、請求人に勤務していた期間は請求人が提供した社員寮(以下「本件社員寮」といい、本件監理団体の宿泊施設と併せて「本件社員寮等」という。)が所在する■■■を住居地として、出入国在留管理庁長官へ届出をした。

本件各技能実習生は、それぞれ上記の各期間において本件社員寮等で起居しており、これらの期間は通算しても1年未満であった。

(ハ) 本件各技能実習生は、別表1のとおり10名ごとに入国日が令和4年5月8日から令和5年8月3日までの4回に分かれており(以下、入国日が同じ日の各10名を、順次「本件1期生」、「本件2期生」、「本件3期生」及び「本件4期生」という。)、請求人から本件各技能実習生へ原処分に係る賃金が支給された期間は、本件1期生が令和4年6月24日ないし令和5年5月25日、本件2期生が令和4年9月22日ないし令和5年8月25日、本件3期生が令和5年7月25日ないし令和6年2月22日、本件4期生が令和5年9月25日ないし令和6年2月22日である(以下、これらの各期間における本件各技能実習生に対して毎月の賃金が支給されたそれぞれの口を、併せて「本件各支給日」という。)。

ホ 日本に在留するミャンマー人への緊急避難措置について

出入国在留管理庁は、令和3年5月28日以降、ミャンマー国内の情勢不安を理由に帰国できず、在留を希望するミャンマー国籍を有する者等に、緊急避難措置として原則として就労を可能とする特定活動(以下「特定活動」という。)の在留資格を付与することを認めている。

(4) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、令和4年6月ないし令和6年2月の各月において、本件各技能実習生は所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当するとして、本件各技能実習生に賃金を支払う際に源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税(以下「源泉所得税等」という。)を徴収し、各法定納期限までに納付等をした。

ロ 原処分庁は、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、本件各技能実習生は本件各支給日において所得税法第2条第1項第5号に規定する非居住者に該当するとして、令和7年1月10日付で、別表2の「納税告知処分」欄及び「賦課決定処分」欄のとおり、同表の「年月」欄の各月分に係る請求人の源泉所得税等の各納税告知処分(以下「本件各納税告知処分」という。)及び不納付加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。

ハ 請求人は、本件各納税告知処分に不服があるとして、令和7年1月27日に審査請求をした。

ニ 請求人は、本件各賦課決定処分に不服があるとして、令和7年3月31日に審査請求をした。

ホ 上記ハ及びニの各審査請求について、国税通則法第104条《併合審理等》第1項の規定により、併合審理する。

2 争点

本件各技能実習生は、本件各支給日において国内に住所を有し、所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当するか否か。

3 争点についての主張

原処分庁 請求人
(1) 法令等における住所について

所得税法上の住所は、民法に規定する住所と同様に、各人の生活の本拠を指すものと解すべきであり、実際に当該個人の生活の本拠を認定するに当たっては、客観的な事実、すなわち住居、職業、国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有するか否か、資産の所在等により総合考慮するのが相当であるところ、実際に総合考慮するに当たりこれらの要素のうちどの要素に重きを置くかなどについては判断すべき個々人ごとに異なると考えられる。

そして、本件推定規定によれば、国内でどのような職業に従事しているかということは、その者の生活の本拠を判定する際の重要な判断要素になることから、本件各技能実習生の住所の判断においては、職業、つまり技能実習生であるという要素に重きを置いて検討すべきである。

なお、本件通達によれば、その地における在留期間が契約等であらかじめ1年未満であることが明らかであるならば、本件推定規定は適用されないこととなる。 民法第22条《住所》は「各人の生活の本拠をその者の住所とする」と規定しており、一定の場所が、ある者の住所であるか否かは、客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものである。

(2) 本件各技能実習生の住所について
イ 生活の本拠について
(イ) 住居、生計を一にする配偶者その他の親族の居所等について

本件各技能実習生が入国後に出国していないこと、本件社員寮で寝起きしていること、請求人において就職していること及び生計を一にする配偶者その他の親族がミャンマーに居住していることについては、技能実習制度上は当然のことであって、本件各技能実習生が本件各契約の雇用期間において技能実習生であったという要素に伴う事実にすぎない。

(ロ) 職業について

請求人が提出した本件各技能実習生の在留カードの写しによれば、本件各技能実習生の在留資格は、技能実習の期間を1年以内とする技能実習1号であり、在留期間は1年である。また、本件各技能実習生は雇用期間が1年未満で契約の更新はしないとする本件各契約を締結しており、在留期間が契約等によりあらかじめ1年未満であることが明らかである。

したがって、本件各技能実習生は、国内において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有していないことが認められる。

(ハ) その他の事情について

本件各技能実習生が、特定活動などの在留資格を取得して請求人を退職した後に国内において就労し居住していることは飽くまで結果であり、本件各支給日における住所の判断に影響を与えるものではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3) 結論

以上より、本件各技能実習生は、客観的な事実に基づく総合考慮の結果、本件各支給日において国内に住所を有する者とは認められず、また、国内に住所を有する者とは推定されないことから、所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当しない。

なお、本件各技能実習生が当初1年未満の予定で入国したとしても、その後の事情の変更で1年以上滞在することが明らかになった場合は、その明らかとなった日以降は所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当するが、当該事実は確認できない。

(1) 法令等における住所について

所得税法上の住所は、民法に規定されている法概念の借用概念であるため民法における意義と同義に解され、本件各技能実習生が、本件各支給日に国内に住所を有していたか否かについても、客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか、滞在日数、住居、職業、生計を一にする配偶者その他の親族の居所、資産の所在等により総合的に判断するのが相当である。

そして、その者がその職業に従事するためにどの場所を生活の拠点とする必要があるのかという観点から生活の拠点を判断すべきであり、在留期間の長短だけではなく、賃金の支払時より後の事情も含めて総合的に判断すべきである。

なお、本件推定規定は、雇用契約により雇用期間が1年未満である場合については何ら規定しておらず、国内に住所を有しない者と推定されることもない。

 

 

 

(2) 本件各技能実習生の住所について
イ 生活の本拠について
(イ) 住居等について

本件各技能実習生は、入国後は出国せず、引き続き国内に滞在しており、本件各支給日において日常生活に必要な物品が備え付けられた本件社員寮に入居していた。

(ロ) 職業について

本件各技能実習生は、入国後に日本語等の講習を受けて請求人に就職し、請求人の本社に勤務していた。そして、請求人を退職した後には国内の各企業に就職している。

(ハ) 生計を一にする配偶者その他の親族の居所について

本件各技能実習生は、ミャンマーに居住する扶養親族を有する者もいるが、生計を一にする配偶者を有していない。

(ニ) 資産の所在について

ミャンマーの経済、就学・就労環境の悪化のため、日本に出稼ぎに来ているのであるから、本件各技能実習生がミャンマーに多額の資産を所有している可能性は低い。

(ホ) その他の事情について

本件各技能実習生は、当初の意向どおりに、特定活動などの在留資格を取得して請求人を退職した後に国内の各企業に就職していることから、本件各契約において雇用期間が1年未満と定められていても、本件各技能実習生が1年以内に帰国することの証拠とならない。

(ヘ) 小括

以上より、上記(ハ)及び(ニ)の各事実は生活の本拠が国内以外にあったことを積極的に基礎付けるものとはいえず、上記(イ)、(ロ)及び(ホ)の各事実を併せて総合的に判断すると、本件各技能実習生は本件各支給日において国内に生活の本拠である住所を有していたと認められる。

ロ 本件推定規定の適用について

本件各技能実習生は、1年未満とされる請求人との雇用期間の終了後において全員が特定技能1号又は特定活動の在留資格に変更した上で、国内に在留している。

本件推定規定は、国内に住所を有することが明確な個人について適用する必要がない規定であるが、緊急避難措置が実施されていることから在留期間が契約等によりあらかじめ1年以上となるか1年未満となるか明らかではなく、本件通達の定めにより本件推定規定が適用され、本件各技能実習生は国内に住所を有する者と推定される。

(3) 結論

以上より、本件各技能実習生は、客観的な事実に基づく総合的な判断の結果、本件各支給日において国内に住所を有する者と認められ、また、国内に住所を有する者と推定されることから、所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当する。

4 当審判所の判断

(1) 法令解釈

所得税法第2条第1項第3号は、上記1の(2)のイのとおり、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人を居住者としているところ、法令において人の住所につき法律上の効果を規定している場合、反対の解釈をすべき特段の事由のない限り、住所とは、各人の生活の本拠を指すものと解するのが相当であり、生活の本拠とは、その者の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心を指すものである。そして、一定の場所がその者の住所であるか否かは、租税法が多数人を相手方として課税を行う関係上、客観的な表象に着目して画一的に規律せざるを得ないところからして、一般的には、住居、職業、生計を一にする配偶者その他の親族の居所、資産の所在等の客観的事実に基づき、総合的に判定するのが相当である。

(2) 認定事実

請求人提出資料、原処分庁関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

イ 住居について

本件各技能実習生は、入国後、本件各支給日において国内に継続して滞在していたところ、上記1の(3)のニの(ロ)のとおり、本件監理団体において講習を受講していた期間及び請求人において勤務していた期間において本件社員寮等で起居しており、請求人において勤務する日は本件社員寮から通勤していた。また、本件各技能実習生は、請求人の雇用期間が終了した後において、技能実習1号から特定技能1号又は特定活動に在留資格を変更し、それぞれの就職先に勤務し国内に所在する住居で起居していた。

ロ 職業について

本件各技能実習生は、本件各契約及び各自に係る技能実習計画に基づき■■に所在する請求人において■■■■■■■■■■■■■に従事していた。

なお、当該作業は、第2号技能実習への移行が可能な職種・作業に当たらないものであった。

ハ 本件1期生及び本件2期生の事情の変化について

本件監理団体は、本件各技能実習生が技能実習をしていた期間に本件各技能実習生との面談を毎月実施しており、当該面談に併せて本件各技能実習生の技能実習が終了した後の就職活動の支援として、本件各技能実習生の就職活動の状況や応募先からの採否の通知に基づく内定状況の確認を行っていたところ、別表3の「確認日」欄のとおり、本件1期生は令和5年4月18日に、本件2期生は同年7月13日又は同月14日に、請求人との雇用期間の終了後における国内の各就職先(以下「本件各国内就職先」という。)から内定を得ていたことを確認した(以下、別表3の「確認日」欄の各日を「本件各内定確認日」という。)。

ニ 生計を一にする配偶者その他の親族の居所について

本件各技能実習生は、入国してから本件各支給日のうち最終月の各支給日までの期間において、国内に生計を一にする配偶者その他の親族を有していなかった。

ホ 資産の所在について

本件各技能実習生が所有する資産として、国内において本件各契約に基づく賃金を原資とする現預金等が存在するが、その他の資産の所有状況は不明である。

(3) 検討

請求人は、上記1の(3)のニの(ハ)のとおり、本件各支給日において本件各技能実習生に賃金を支払っているため、本件各支給日において、その支払を受けた本件各技能実習生が国内に住所を有し所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当するか否かについて、以下検討する。ただし、本件1期生及び本件2期生については、上記(2)のハのとおり、本件各国内就職先から内定を得たことにより事情が変化していることから、このことも踏まえ検討すべきである。

イ 住居について

(イ) 本件各技能実習生は、上記(2)のイのとおり、入国してから継続して国内に所在する本件社員寮等で起居していたことから、本件社員寮等は、国内における本件各技能実習生の生活場所であったとは認められるものの、本件社員寮等で起居する目的は、本件各技能実習生が技能実習を行うためであり、上記1の(3)のイの(ロ)及び同ハのとおり、請求人と本件各技能実習生との雇用期間は1年未満であり更新されることもなく、同ニの(イ)のとおり、本件各技能実習生に係る技能実習1号の在留資格は在留期間が1年以内とされていること、また、同(ロ)のとおり、本件各技能実習生が本件社員寮等を生活場所として使用することを予定していた期間を通算しても1年未満という短期間に限られたものであったことからすれば、本件各技能実習生にとって本件社員寮等は、国内における一時的な生活場所であったと判断するのが相当である。

(ロ) しかしながら、本件1期生及び本件2期生に関しては、本件監理団体が、上記(2)のハのとおり、毎月実施していた面談に併せて就職活動の支援として内定状況などを確認していたことからすると、本件各内定確認日に近接する日において本件各国内就職先から内定を得ていたことが推認される。そうすると、本件1期生及び本件2期生については、請求人とは別の本件各国内就職先から内定を得たことにより、本件各内定確認日以降の各支給日において本件各国内就職先に勤務するために本件社員寮を退去した後も引き続き国内に生活場所を有するに至っていたと認められる。

ロ 職業について

(イ) 本件各技能実習生は、上記1の(3)のイの(ロ)のとおり、本件各契約に基づき請求人に雇用されていたものの、上記(2)のロのとおり、本件各技能実習生に係る技能実習計画においては、第2号技能実習への移行が可能な職種・作業に当たらない■■■■■■■■■■■■■を実習の対象としていることからすれば、技能実習制度に係る上記の技能実習計画に基づき入国した本件各技能実習生は、当該技能実習計画に従って請求人における1年に満たない雇用期間が終了した後は、ミャンマーに帰国することが予定されていたものと認められる。

したがって、本件各技能実習生が請求人に雇用されていたことをもって、本件各支給日において本件各技能実習生の職業的基盤が国内にあったとは認められない。

(ロ) しかしながら、本件1期生及び本件2期生に関しては、上記イの(ロ)のとおり、本件各内定確認日に近接する日において本件各国内就職先から内定を得ていたことが推認されるところ、これにより第1号技能実習の期間が終了した後も本件各契約と異なる新たな雇用関係に基づき引き続き国内で本件各国内就職先に勤務することができることとなり、国内で職業に就くことが具体的となったと認められる。そうすると、本件各内定確認日以降の各支給日においては、本件1期生及び本件2期生の職業的基盤が国内にあったものと認められる。

ハ 生計を一にする配偶者その他の親族の居所について

本件各技能実習生は、上記(2)のニのとおり、入国してから本件各支給日のうち最終月の各支給日までの期間において、国内に生計を一にする配偶者その他の親族を有していなかったところ、これらの親族の居所に掛かる事情をもって、本件各支給日における本件各技能実習生の生活の本拠が国内にあったか否かを判断することはできない。

ニ 資産の所在について

本件各技能実習生は、上記1の(3)のニの(ハ)のとおり、請求人から賃金を支給されているところ、その賃金の使途は国内における生活費、国外に居住する親族への仕送り又は国内における貯蓄と推認される一方で、国内外における本件各技能実習生の不動産等の資産の所有状況を示す証拠はなく、当審判所の調査の結果によっても明らかとはならなかったことから、資産の所在についての事情をもって、本件各支給日における本件各技能実習生の生活の本拠が国内にあったか否かを判断することはできない。

ホ 総括

上記イの(イ)、ロの(イ)、ハ及びニの各事情を総合勘案すると、本件1期生及び本件2期生における本件各支給日のうち本件各内定確認日以降の各支給日を除けば、本件各技能実習生にとって本件社員寮等は、国内における一時的な生活場所であり、また、本件各技能実習生の職業的基盤が国内にあったとは認められないことなどからすれば、本件各技能実習生は、生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心である生活の本拠たる住所を国内に有していたとは認められない。

一方、上記イの(ロ)及びロの(ロ)の各事情をも併せ考慮すると、本件1期生及び本件2期生における本件各支給日のうち本件各内定確認日以降の各支給日においては、本件各国内就職先から内定を得たことにより、請求人における第1号技能実習の期間が終了した後、本件各国内就職先に勤務することで国内に職業的基盤を有し、また、これに伴い本件社員寮を退去した後も国内に引き続き居住することとなるから、本件1期生及び本件2期生は国内に職業的基盤を有して居住する者として、生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心である生活の本拠たる住所を国内に有していたと認められる。

そして、本件各支給日のうち本件各技能実習生が国内に住所を有していたとは認められない各支給日において、本件各技能実習生が生活場所としていた本件社員寮等は、本件各技能実習生にとって所得税法第2条第1項第3号に規定する居所に該当すると認められるものの、入国から当該各支給日までの各期間はいずれも1年以上とならないため、本件各技能実習生は引き続いて1年以上居所を有する個人には当たらない。

以上のことから、本件1期生及び本件2期生は、本件各支給日のうち本件各内定確認日前までの各支給日において所得税法第2条第1項第5号に規定する非居住者に該当し、本件各内定確認日以降の各支給日においては同項第3号に規定する居住者に該当する。また、本件3期生及び本件4期生は、本件各支給日において所得税法第2条第1項第5号に規定する非居住者に該当する。

(4) 請求人の主張について

イ 請求人は、上記3の「請求人」欄の(1)のとおり、①本件各技能実習生が本件各支給日に国内に住所を有していたか否かについて、在留期間の長短だけで生活の本拠を判断すべきではなく、賃金の支払時より後の事情も含めて総合的に判断すべきである旨、②本件各技能実習生は本件推定規定により国内に住所を有しない者と推定されることはない旨主張する。

しかしながら、請求人の上記主張①については、上記(3)のホのとおり、本件各技能実習生が国内に住所を有していたか否かについて、在留期間の長短だけではなく、住居、職業などの各事情を総合的に判断しているものである。そして、従業員に賃金を支払う雇用者において、当該賃金の支払を受ける者が所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当するか否かを源泉徴収義務者として判断するのは当該賃金の各支給期であるところ、当該各支給期、すなわち本件各支給日において、本件各技能実習生は、上記(3)のイの(イ)及びロの(イ)のとおり、請求人における1年未満の雇用期間が終了した後はミャンマーに帰国することなどが技能実習制度上は予定されていたこと、また、本件1期生及び本件2期生については、同イの(ロ)及びロの(ロ)のとおり、本件各国内就職先から内定を得たことなどの事情なども含めて総合的に判断したものである。

請求人の上記主張②については、これらの判断は上記(3)のホのとおりであって、本件推定規定により国内に住所を有しない者と推定したものではない。

したがって、これらの点に関する請求人の主張には理由がない。

ロ 請求人は、上記3の「請求人」欄の(2)のイのとおり、生計を一にする配偶者その他の親族の居所及び資産の所在に係る各事実は、生活の本拠が国内以外にあったことを積極的に基礎付けるものとはいえず、住居、職業等に係る各事実を併せて総合的に判断すると、本件各技能実習生は本件各支給日において国内に生活の本拠である住所を有していたと認められる旨主張する。

しかしながら、住居、職業などの各事情を総合勘案すると、本件1期生及び本件2期生の本件各支給日のうち本件各内定確認日以降の各支給日を除き、国内に住所を有していたと認められないことは、上記(3)のホのとおりである。

したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

ハ 請求人は、上記3の「請求人」欄の(2)のロのとおり、本件各技能実習生は、請求人との雇用期間の終了後において特定技能1号又は特定活動に在留資格を変更した上で国内に在留していること及び緊急避難措置が実施されていることから、在留期間が契約等によりあらかじめ1年以上となるか1年未満となるか明らかではなく、本件通達の定めにより本件推定規定が適用され、本件各技能実習生は国内に住所を有する者と推定される旨主張する。

しかしながら、上記(3)のホのとおり、本件においては、本件各技能実習生の住居、職業などの各事情を総合勘案することにより、本件各技能実習生が本件各支給日において国内に住所を有していたか否かを判断しているのであって、この判断は、本件通達及び本件推定規定によって左右されるものではない。

したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(5) 原処分庁の主張について

原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄の(3)のとおり、本件各技能実習生が当初1年未満の予定で入国したとしても、その後の事情の変更で1年以上滞在することが明らかになった場合は、その明らかとなった日以降は所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当するが、当該事実は確認できない旨主張する。

しかしながら、上記(2)のハのとおり、本件1期生及び本件2期生が本件各国内就職先から内定を得たという事実が認められるため、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。

(6) 本件各納税告知処分の適法性について

イ 本件1期生及び本件2期生に対する本件各内定確認日以降の賃金から源泉徴収すべき源泉所得税等の額について

本件1期生及び本件2期生は、上記(3)のホのとおり、本件各支給日のうち本件各内定確認日以降の各支給日において所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当することから、当該各支給日において本件1期生及び本件2期生に賃金を支払う際に請求人が源泉徴収すべき源泉所得税等の額は、所得税法第183条《源泉徴収義務》第1項及び東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(以下「復興財源確保法」という。)第28条《居住者の給与等に係る源泉徴収税額及び源泉徴収特別税額の特例》第1項の各規定により、次のとおり算出することとなる。

(イ) 本件1期生及び本件2期生は請求人に対して令和5年分の給与所得者の扶養控除等申告書を提出しており、また、請求人は給与等の支払額に関する計算を事務機械によって処理していたことから、本件1期生への令和5年4月分及び本件2期生への同年7月分の各賃金を支払う際に源泉徴収すべき源泉所得税等の額は、平成24年3月31日財務省告示第116号「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法第29条第1項第2号の規定に基づき、同号に規定する所得税法第189条第1項に規定する財務大臣が定める方法及び復興特別所得税の額の計算を勘案して財務大臣が定める方法を定める件」(令和5年3月31日財務省告示第95号による改正前のもの)第1項の規定により算出することとなる。

(ロ) 本件1期生への令和5年5月分及び本件2期生への同年8月分の各賃金を支払う際に源泉徴収すべき源泉所得税等の額は、本件各契約に基づく請求人との雇用期間(本件1期生の雇用期間は令和5年5月8日まで、本件2期生の雇用期間は同年8月2日までである。)が終了しており、令和5年分の給与所得者の扶養控除等申告書の効力は失われていることから、平成24年3月31日財務省告示第115号「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法第29条第1項第1号の規定に基づき、同号に規定する所得税法別表第二から別表第四までに定める金額及び復興特別所得税の額の計算を勘案して財務大臣が定める表を定める件」(令和5年3月31日財務省告示第94号による改正前のもの)第2項の規定により算出することとなる。

ロ 令和4年12月分及び令和5年12月分について

上記(3)のホのとおり、令和4年12月及び令和5年12月において本件各技能実習生は所得税法第2条第1項第5号に規定する非居住者に該当することから、当該各月において本件各技能実習生へ賃金を支払う際に源泉徴収すべき源泉所得税等の額は、同法第213条《徴収税額》第1項第1号及び復興財源確保法第28条《源泉徴収義務等》第2項の各規定により算出することとなる。

なお、令和4年12月分及び令和5年12月分の各納税告知処分に係る源泉所得税等の額は、上記の各規定により算出された金額に、上記の各月において請求人が本件各技能実習生は所得税法第2条第1項第3号に規定する居住者に該当するものとして同法第190条《年末調整》及び第191条《過納額の還付》並びに復興財源確保法第30条《年末調整》の各規定に基づき本件各技能実習生に還付した金額を加算した金額と認められるところ、当該加算した金額は、令和4年12月分及び令和5年12月分の所得税法第2条第1項第5号に規定する非居住者に対する賃金を支払う際に源泉徴収すべき源泉所得税等の額とは認められない。

ハ 本件各納税告知処分の上記イ及びロ以外の部分について

請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められないところ、上記イ及びロを前提に、当審判所において請求人の別表4の「年月」欄の各月分の納付すべき源泉所得税等の額を計算すると、同表の「源泉所得税等の額」欄の「審判所認定額」欄のとおりとなり、令和4年12月、令和5年4月、同年5月、同年7月、同年8月及び同年12月の各月分は、いずれも本件各納税告知処分の額を下回り、他方、当該各月分を除く各月分は、いずれも本件各納税告知処分の額と同額となる。

ニ したがって、本件各納税告知処分のうち、令和4年12月、令和5年4月、同年5月、同年7月、同年8月及び同年12月の各月分の納税告知処分については、その一部を別紙「取消額等計算書」のとおり取り消すべきであり、これらの各月分を除く各月分の各納税告知処分はいずれも適法である。

(7) 本件各賦課決定処分の適法性について

上記(6)のとおり、本件各納税告知処分はその一部を取り消すべきであるところ、本件各納税告知処分に係る源泉所得税等のうち適法である部分を法定納期限までに納付しなかったことについて、国税通則法第67条《不納付加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。

そして、当審判所において請求人の別表4の「年月」欄の各月分の源泉所得税等に係る不納付加算税の額を計算すると、同表の「不納付加算税の額」欄の「審判所認定額」欄のとおりとなり、令和4年12月、令和5年4月、同年5月、同年7月、同年8月及び同年12月の各月分は、いずれも本件各賦課決定処分の額を下回り、これらの各月分を除く各月分は、いずれも本件各賦課決定処分 の額と同額となる。

したがって、本件各賦課決定処分のうち、令和4年12月、令和5年4月、同年5月、同年7月、同年8月及び同年12月の各月分の本件各賦課決定処分については、その一部を別紙「取消額等計算書」のとおり取り消すべきであり、これらの各月分を除く各月分の本件各賦課決定処分はいいずれも適法である。

(8) 結論

よって、審査請求には理由があるから、原処分の各一部を取り消すこととし、主文のとおり裁決する。

別表1~4 (省略)
別紙 取消額等計算書(省略)