国税庁が作成した「質問応答記録書作成の手引 令和5年12月」を開示請求により入手しました。
令和2年11月版と比較すると、以下の点に変更や追加がされています。
(平成29年6月版は山中理司弁護士ののブログに、令和2年11月版は株式会社KACHIEL様のブログに掲載されています。)
質問応答記録書の作成を実践することの重要性(10枚目)
令和2年11月版では、標題が「質問応答記録書の作成を実践し、訓練することの重要性」となっていましたが、令和5年12月版では「質問応答記録書の作成を実践することの重要性」に変更され、「訓練すること」が削除されています。
また、本文も、令和2年11月版では、「このような現状を踏まえれば、処理が困難な事案においてのみ、適切な質問応答記録書を作成すれば十分であると考えるのではなく、調査効率とのバランスに配慮しつつも、納税者が過少申告を自認しているような基本的な事案において、これを適切な質問応答記録書の作成を実践し、訓練する好機と捉え、事案に応じた適切な質問応答記録書の作成が可能となるように知識、経験、技能の習得を図ることが重要である。」とされていましたが、
令和5年12月版では、「課税要件事実の立証という観点からは、争訟となる見込みがあるなど処理が困難な事案だけでなく、納税者が過少申告を自認しているような基本的な事案においても、争訟の可能性があることを念頭に置いて証拠収集を行う必要がある。そのため、調査効率とのバランスに配慮しつつも、処理が困難な事案及び納税者が過少申告を自認しているような基本的な事案の双方において、当該事案に応じた適切な質問応答記録書の作成を実践することが重要である。」に変更されています。
回答者が外国人である場合の留意点(32枚目)
令和5年12月版では、新たに「回答者が外国人である場合の留意点」が追加されています。
⑴ 通訳の正確性が求められること
・ 回答者が日本語を理解していない場合は、調査担当者又は通訳人が回答者の母国語等を用いて質問等をして、質問応答記録書を作成することとなる。課税要件事実の存否を明らかにし、適切な課税処分を行うためには、調査担当者と回答者の双方が、質問及び回答の意味・内容を正確に理解する必要があるのであって、通訳が果たす役割はおおきい(なお、質問調査において、通訳人を用いずに通訳をする場合、翻訳機や通訳アプリなどの機器を利用して単語や用語の意味を検索・確認することはあるとしても、機器のみで質問等の内容の全文の通訳を行うことは、通訳の正確性が担保できず、質問等の内容が外部に流出する恐れもあることから避けるべきである。)。
・回答者が、一定程度日本語を話すことができる場合や、通訳人を手配することが困難な場合には、日本語で質問等を行う場合もあり得るであろう。…
⑵ 通訳人を介して質問等をする場合の留意点
・ 回答者や調査対象者側に、氏名を知られることに躊躇する通訳人も多い。氏名のみの情報であっても、在日外国人コミュニティを通じるなどして、居住地など通訳人のプライバシー事項が判明する可能性があり、氏名を知られたくないという心情は十分理解できるところである(特に、少数言語の通訳人は個人を特定されるリスクが高い。)。
したがって、争訟となった場合など、後に通訳人の氏名が明らかになることはやむを得ないとしても、必要性が乏しいにもかかわらず、回答者に通訳人の氏名が明らかとなることがないよう配慮すべきである。具体的には、回答者の前では、「通訳人」と呼び、「〇〇さん」などと氏名を呼ばないようにする、通訳人の氏名が記載された文書を回答者に見せないようにする、といった対応が考えられる。
問41 完成した質問応答記録書の写しを作成する場合、ステープラ等を外してコピー作業をしてよいか(53枚目)
令和2年11月版では、「ホッチキス」という用語が用いられていましたが、令和5年12月版では「ステープラ」に変更されています。