不服申立てを検討する際に収集しておくべき資料

争訟

税務署に処分をされた後、不服があって再調査の請求や審査請求、訴訟で争う場合、法令解釈や処分が取り消される可能性を検討するためにさまざまな資料を収集するかと思いますが、その際に事実関係の証拠以外で収集しておきたい資料をまとめてみました。

改正税法のすべて

税法は毎年改正されますが、その改正の趣旨や背景が解説された唯一の書籍であり、毎年刊行されています。平成17年度改正以降の内容は、財務省HPでも閲覧することが可能です。

租税研究

日本租税研究協会が発行している会員限定の出版物で、毎年2~3月号あたりに財務省主税局長が税制改正の全体像について行った講演録が、7月号あたりで財務省主税局の課長補佐が法人税と国際課税について行った講演録が掲載されます。「改正税法のすべて」以上に立法趣旨が解説されていることは少ないですが、立法担当者による解説は「改正税法のすべて」とこれに掲載される講演録ぐらいなので、法人税や国際課税が争点となっている場合はは目を通しておくべき資料かと思います。

DHCコンメンタール

加除式の逐条解説であり、各規定の立法趣旨、沿革に加えて、関係法令・通達・告示、判例・裁決例等が豊富に引用され、詳細な解説がされています。現在、「国税通則法」、「所得税法」、「法人税法」、「相続税法」、「消費税法」のコンメンタールがあります。

国会議事録

国会議事録検索システム」で、税制改正時の国会での審議過程が検索できます。もっとも、国会の審議過程で、将来起こる争訟を予想して質疑がされていることはあまりないですが、昔制定された法律で、立法趣旨がわかる資料が全くないような場合は何かしらのヒントが見つかることもあります。

基本書と引用論文

租税の世界で基本書といえば、金子宏教授の「租税法」が最もメジャーな存在だと思います。租税の基本原則や各種税法の様々な論点が詳細かつ簡潔に記載されており、出版社のHPでも「実務にも役立つバイブル」評されている本ですが、金子先生の説と注釈に書かれている論文を収集し、どのような学説があるのか調べます。
また、税法によっては、代表的な文献がありますので、それがあれば調べてみます。
例えば

・国税通則法 ⇒ 志場喜徳郎ほか編「国税通則法精解
・国税徴収法 ⇒ 吉国二郎ほか編「国税徴収法精解
・所得税法  ⇒ 注解所得税法研究会編「注解所得税法

通達逐条解説

国税庁が発遣している法令解釈通達の逐条解説で、現在下記のものが出版されています。
通達自体は国税庁HPでも見ることが可能ですが、なぜそのような考え方をするのかについては、逐条解説を読まないと理解できないことが多く、それが分からないとそもそも通達に合理性があるのかも判断できないため、関連する法令の通達の解説については収集が必要かと思います。

判例・裁判例・裁決例

不服申立てする際には、過去の類似事案がどういう結論になっているのか調査するのが必須ですが、調べ方については過去に記事を書いていますので、そちらを参考にしてください。

租税関係の判例を効率的に調べるには何をどのように調べればよいか?
法令解釈や類似事件の参考にするために、判例・裁判例、裁決例を調べる必要がある場合、何をどのように確認すれば効率的に調べられるのか、実際に問題を解決しなければならない実務家向けにまとめてみました。 金子租税法と判例データベース検索で当たりをつ...