東京国税局の個人課税課・消費税課が作成した「所得税消費税誤りやすい事例集(令和4年12月)」を開示請求により入手しました。確定申告の際の参考にしていただければと思います。
令和4年12月版で新たに追加された事例
納税地(1頁)
(誤りやすい事例)
令和5年1月1日以後、事業所を納税地とする場合、事業所を納税地とする届出書の提出が必要と考えている。
令和4年12月31日までは、事業所を納税地とする場合、住所地の所轄税務署長に対して、その旨を記載した届出書を提出しなければならなかったが、令和5年1月1日以後は、届出書の提出は不要である(所法16②、令4年改正法附2、3)。
減価償却の対象とされない資産等(15頁)
(誤りやすい事例)
一括償却資産の必要経費算入又は中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例を確定申告書において適用しなかった者が、更正の請求や修正申告によってこれらの特例を適用することができると考えている。
一括償却資産の必要経費算入又は中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例を適用する場合は、確定申告時に特例に関する明細書を添付(又は青色申告決算書に適用をする旨の記載)した場合に適用することができる。したがって、確定申告時に明細書の添付等がない場合は、更正の請求や修正申告によって新たに必要経費に算入の適用をすることはできない(所令139②③、措法28の2③、措通28の2ー3)。
特定基金に対する負担金(23頁)
(誤りやすい事例)
特定の基金に対する負担金等(中小企業倒産防止共済事業に係る基金に係る掛金等)を必要経費に算入しているにもかかわらず、確定申告書にそれらに関する明細書の添付がない。
特定の基金に対する負担金等を必要経費に算入する特例の規定の適用を受ける場合には、確定申告の際に、適用に関する明細書を添付しなければならないこととされている(措法28)。
青色申告特別控除(24頁)
(誤りやすい事例)
令和4年分の確定申告に当たり、青色申告決算書を書面提出した場合には、どのような場合であっても、65万円の青色申告特別控除を適用することができないと考えている。
令和4年分以後、青色申告決算書を書面で提出していても、優良な電子帳簿の要件を満たして対象帳簿の備付け及び保存を行い、かつ、電子帳簿保存法第8条第4項の規定の適用を受ける旨の届出書を提出期限内に提出している場合は、65万円の青色申告特別控除を適用することができる(措法25の2④、措通25の2-5、電子帳簿保存法8④)。
雑所得(34頁)
(誤りやすい事例)
令和2年分の業務に係る収入金額が1,000万円を超えているにもかかわらず、収支内訳書を提出していない。
令和4年分以後、前々年分の業務に係る収入金額が1,000万円を超えている場合、収支内訳書を提出しなければならない(所法120⑥、所規47の3①)
損益通算(36頁)
(誤りやすい事例)
上場株式等の譲渡所得の損失について特定口座と一般口座の損益通算はできないと考えている。
上場株式等の譲渡所得の損失について、特定口座で生じた損失と一般口座で生じた損失とは損益通算できる。しかしながら、上場株式等の譲渡所得の損失について、一般株式の譲渡所得との損益通算はできない。
純損失の繰越控除(40頁)
(誤りやすい事例)
青色申告者で連年確定申告書を提出しているが、3年前に必要経費の計上漏れがあり損失があることが判明した場合、純損失の額や純損失の繰越の額等については確定申告書に記載することとされているから(所法123)、前2年については純損失の繰越に係る更正の請求はできないと考えている。
確定申告書に純損失の額の記載がない場合であっても、更正の請求により3年前の純損失の額が明らかにされた場合には、その純損失の額を繰り越す2年前と1年前について確定申告書に純損失の額等の記載があった場合と同様に更正の請求をすることができる(所基通70ー13)。
扶養控除(63頁)
(誤りやすい事例)
留学中の子(国外居住扶養親族に該当)が通う海外の大学に対して、学費を直接支払った場合、大学からの領収書その他支払が分かる書類は送金関係書類に該当すると考えている。
送金関係書類は、国外居住扶養親族の生活費又は教育費に充てるために、為替取引により国外居住扶養親族に支払をしたことが明らかな書類をいうため、海外の大学に直接支払った領収書等は送金関係書類に該当しない(所規47の2⑥一)。
住宅借入金等特別控除(72~76頁)
(誤りやすい事例)
建築後25年を経過した中古住宅について、地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する住宅でない場合、住宅借入金等特別控除の対象とできないと考えている。
令和4年以後に居住の用に供した中古住宅については、昭和57年1月1日以後に建築されたものが対象となる。昭和56年12月31日以前に建築された住宅については、地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する一定の中古住宅でない限り対象とならない(措令26③)
(誤りやすい事例)
令和4年中に居住の用に供した住宅の総床面積が40㎡以上50㎡未満である場合、住宅借入金等特別控除の適用はできないと考えている。
居住開始が令和4年になってからであっても、特別特例取得に該当する場合は、住宅借入金等特別控除の適用はできる。この場合、新築又は建築後使用されたことのない住宅を居住の用に供したときは、控除額0.7%(13年間一律)又は特別特例取得の計算方法の選択をすることができる(措法41⑱)。
(誤りやすい事例)
令和4年以後、床面積50㎡以上の住宅の取得等をした場合、居住した者の合計所得金額が2,000万円超3,000万円以下でも住宅借入金等特別控除の受けられる(原文ママ)と考えている。
居住開始が令和4年以後である場合は、合計所得金額が2,000万円以下の者であることが要件となっている。ただし、新型コロナ税特法第6条の2の規定を適用する者に関しては、合計所得金額3,000万円以下となる。
(誤りやすい事例)
自己の居住の用に供していない家屋の増改築について、住宅借入金等特別控除の適用を受けている。
増改築した場合の住宅借入金等特別控除の適用は、自己の居住の用に供する家屋について増改築した場合に限られるので、例えば、父の居住の用に供する家屋について子が増改築しても、住宅借入金等特別控除は適用されない(措法41①、措令26①)
(誤りやすい事例)
初年度において、借入金等の年末残高証明書の「当初金額」が「住宅及び土地等の取得の対価の額」よりも多い場合(オーバーローン部分あり(住宅及び土地等の購入以外に充てるための借入金))に、年末残高証明書の「年末残高」が住宅の取得等の額より多いにもかかわらず、その金額で控除額を算出している。
(解説)
借入金等の額に住宅及び土地等の購入以外に充てるための部分が含まれている場合で、その取得対価の額よりも借入金等の額が多いときは、取得対価の額を限度として計算する。
A×(B-C)÷B
A:本年の年末残高 B:当初借入金等の額 C:当初借入金等の額のうち、オーバーローン部分の額
(誤りやすい事例)
住宅借入金等の借換を行った場合、借入金等の年末残高証明書の「当初金額」が借換直前の「残高」より多いにもかかわらず、借換後の「年末残高」で控除額を算出している。
(解説)
借換後の「年末残高」が借換直前の「残高」より多い場合は、次により計算をする。
・A≧Bの場合 対象額 ⇒ C の金額
・A<Bの場合 対象額 ⇒ C×A÷B の金額
A:借入直前における年末残高 B:借入後の当初借入金等の額 C:借入後の新たな借入金等の年末残高
(誤りやすい事例)
令和4年中に取得した中古住宅について、当年の合計所得金額が1,000万円以下で、床面積が40㎡を超えていれば、住宅借入金等特別控除が適用できると考えている。
床面積が40㎡以上50㎡未満(特例居住用家屋)の住宅について住宅借入金等特別控除の適用ができるのは新築又は建築後使用されたことのない建物が対象となる(措法41⑱)