暗号資産(仮想通貨)は出国税(国外転出時課税)の対象資産になるのか?

仮想通貨(暗号資産)

2020年後半以降、暗号資産の市場が高騰していることから、暗号資産の取引により多額の利益が発生しそうな方が海外移住を検討しているケースが増えていると聞きますが、その場合、国外転出時課税がされるかも合わせて検討する必要があるかと思います。今回は暗号資産が国外転出時課税の対象資産になるかについて解説します。

そもそも国外転出時課税とは?

国外転出時課税とは、日本の居住者が非居住者になることに起因して、個人の所有する資産に含まれる未実現利益に対して資産の譲渡が行われたとみなして課税するものです。国外転出時課税の対象者となる者は、以下のいずれにも該当する居住者となります。

・所有等している対象資産の価額の合計が1億円以上であること。
・原則として国外転出をする日前10年以内において国内に5年を超えて住所又は居所を有していること。

ここで、上記の1つめの要件にある「対象資産」は、以下の資産になります。

① 有価証券
② 匿名組合契約の出資の持分
③ 未決済の信用取引・発行日取引・デリバティブ取引

暗号資産は国外転出時課税の対象資産ではない

対象資産は上記のとおりになりますが、暗号資産という文言は含まれておりません。

また、対象資産のうち、「有価証券」の中に「暗号資産」が含まれるのではないかという疑問が浮かびますが、所得税法上の「有価証券」とは、金融商品取引法2条1項にある「有価証券」とされるところ、金融商品取引法の「有価証券」は以下のとおりであり、「暗号資産」という文言は含まれていません。

(定義)

第二条 この法律において「有価証券」とは、次に掲げるものをいう。

一 国債証券
二 地方債証券
三 特別の法律により法人の発行する債券(次号及び第十一号に掲げるものを除く。)
四 資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)に規定する特定社債券
五 社債券(相互会社の社債券を含む。以下同じ。)
六 特別の法律により設立された法人の発行する出資証券(次号、第八号及び第十一号に掲げるものを除く。)
七 協同組織金融機関の優先出資に関する法律(平成五年法律第四十四号。以下「優先出資法」という。)に規定する優先出資証券
八 資産の流動化に関する法律に規定する優先出資証券又は新優先出資引受権を表示する証券
九 株券又は新株予約権証券
十 投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)に規定する投資信託又は外国投資信託の受益証券
十一 投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資証券、新投資口予約権証券若しくは投資法人債券又は外国投資証券
十二 貸付信託の受益証券
十三 資産の流動化に関する法律に規定する特定目的信託の受益証券
十四 信託法(平成十八年法律第百八号)に規定する受益証券発行信託の受益証券
十五 法人が事業に必要な資金を調達するために発行する約束手形のうち、内閣府令で定めるもの
十六 抵当証券法(昭和六年法律第十五号)に規定する抵当証券
十七 外国又は外国の者の発行する証券又は証書で第一号から第九号まで又は第十二号から前号までに掲げる証券又は証書の性質を有するもの(次号に掲げるものを除く。)
十八 外国の者の発行する証券又は証書で銀行業を営む者その他の金銭の貸付けを業として行う者の貸付債権を信託する信託の受益権又はこれに類する権利を表示するもののうち、内閣府令で定めるもの
十九 金融商品市場において金融商品市場を開設する者の定める基準及び方法に従い行う第二十一項第三号に掲げる取引に係る権利、外国金融商品市場(第八項第三号ロに規定する外国金融商品市場をいう。以下この号において同じ。)において行う取引であつて第二十一項第三号に掲げる取引と類似の取引(金融商品(第二十四項第三号の三に掲げるものに限る。)又は金融指標(当該金融商品の価格及びこれに基づいて算出した数値に限る。)に係るものを除く。)に係る権利又は金融商品市場及び外国金融商品市場によらないで行う第二十二項第三号若しくは第四号に掲げる取引に係る権利(以下「オプション」という。)を表示する証券又は証書
二十 前各号に掲げる証券又は証書の預託を受けた者が当該証券又は証書の発行された国以外の国において発行する証券又は証書で、当該預託を受けた証券又は証書に係る権利を表示するもの
二十一 前各号に掲げるもののほか、流通性その他の事情を勘案し、公益又は投資者の保護を確保することが必要と認められるものとして政令で定める証券又は証書

また、金融商品取引法2条24項において、「金融商品」が以下のように定義されており、「有価証券」と「暗号資産」は並列して定義されていることから、「有価証券」の中に「暗号資産」が含まれるという解釈はできないと考えられます。

24 この法律において「金融商品」とは、次に掲げるものをいう。
一   有価証券
二~三 略
三の二 暗号資産(資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第五項に規定する暗号資産をいう。以下同じ。)

そうすると、暗号資産は国外転出時課税の対象資産にはならないと考えられます

なお、国税庁HPには、「国外転出時課税制度(FAQ)」という資料が掲載されていますが、このFAQには暗号資産が国外転出時課税の対象となるかの記載はない状況です。